円香ミモザ

ドラマ脚本、小説執筆 * 「スキ」をして下さった方々には感謝です。ありがとうございます。 過去に本名でシナリオ3作品がNHKにて放送。 『係恋』はメフィスト賞もうちょい座談会、『僕C』は小説すばるの3次審査、『ラヴ・スト』はポプラ文学賞の3次審査通過。眠っていた作品を公開。

円香ミモザ

ドラマ脚本、小説執筆 * 「スキ」をして下さった方々には感謝です。ありがとうございます。 過去に本名でシナリオ3作品がNHKにて放送。 『係恋』はメフィスト賞もうちょい座談会、『僕C』は小説すばるの3次審査、『ラヴ・スト』はポプラ文学賞の3次審査通過。眠っていた作品を公開。

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『僕はCに分類されている』第一章

 第一部 氷の船 第一章 初恋   第二章 分身   第三章 失踪   第四章 逆転   第五章 再会   第六章 甘受 第七章 聖域  第一章 初恋    1980年12月8日。ジョン・レノンが銃弾に倒れ、世界は騒然となった。同日、僕、松田征慈は、北海道のコンルチプ村で、ひっそりと誕生した。  中等部担任の吉野先生は、クラス名簿で僕の誕生日を目にし、当時を思い出したのか、突拍子もない事を言い出した。 「征慈は、ジョン・レノンの生まれ変わりだったりするかもなぁ」  先生はと

    • 『BODY DOUDLE』後編

      ○(数日後)『ハードシップ・エージェント』・研究室   室内をスズメ型のロボットが飛んでいる。冬馬と大地、代わる代わるコントローラーで操縦している。 大地「スズノスケ、止まれ」 冬馬「(笑って)スズノスケ? 勝手に名前をつけてるし」   スズノスケ、拓海のデスクにちょこんと留まる。搭載カメラが拓海を映している。 大地「拓海さん、すっかりよくなったね」 拓海「うん、爆睡したら、もう元気。本当に迷惑をかけてごめん」 大地「いやいや。いつでも頼ってよ。でも、その間にルーシーが急な仕

      • 『BODY DOUBLE』前編

         拓海は天才ロボット技術者。極秘に大統領のボディダブル(影武者)製作を依頼されるほどの優れた特許を有し、高額な報酬を得ている。日本へ帰国し特務のためのパフォーマーとして劇団員の冬馬とその友達の大地をスカウト、報酬は破格の百万円。拓海の温厚で謙虚でどこか放っておけない人柄と、スリリングな仕事の魅力に冬馬と大地は惹かれていく。ある日、拓海からロボット製作のきっかけとなった初恋の人、真由のことを聞かされるが。  愛しいほどに純粋で面白くてカッコいい男たち。温かい家族。チームワーク抜

        • 『サイコドラマ(心理療法)』

           大堂は、メンタルクリニックに勤める臨床心理士。そこに、クライアントとして、エリート会社員の南条がやってくる。心にもやもやがあり、精神的に不安で仕方ないという。経済的にも余裕があり、仕事も順調。趣味も多彩で独身貴族を満喫している男を悩ませるものは何か? 唯一、彼を饒舌にさせる恋愛に着目した大堂は、『サイコドラマ』(心のイメージや感情を即興劇によって表現する集団療法)を提案する。恋愛をサイコドラマの中でしか表現できない不器用な大人たち。現代の晩婚化の背景にある自由と孤独。そんな

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        『僕はCに分類されている』第一章

          『スクール・フェスティバル』

           緋安は幼い頃から家族に冷遇され続けた影響で、人と深く繋がることを諦めていた。いつも厭世的で、現実逃避のために文学へ傾倒。十四歳の若さで文学特別賞を受賞する。その甲斐あって進学校に特待(タレンテッド)入学。しかし、友達を作らず、執筆もはかどらず、進路も決まらずで、急遽特設された二年E組へと進級することになる。そこには同様の才能あふれる個性的な生徒たちが集められていた。  ギターの天才で絶対音感を持つ、陸。絵画コンクールで何度も受賞し、ポップアートに世界的な価値を持つ、希大。演

          『スクール・フェスティバル』

          『ファイヤーボール』後編

          【登場人物】 美島 隼(22)北海道ファイヤーズ投手 美島貴子(29)隼の姉・会社員 石野亮介(29)ファイヤーズ捕手 宮本尚之(32)ファイヤーズ投手 美島幸典(58)貴子の実父・隼の継父 吉澤夕菜(25)女子アイスホッケー選手 檜田勇真(30)福岡ホームズ外野手 畑山宏一(45)ファイヤーズ広報担当 岩井 修(40)ファイヤーズ投手コーチ 柿沢良樹(55)ファイヤーズ監督 木戸 学(52)ファイヤーズGM 小沢  (21)ファイヤーズ内野手 春山慎吾(30)埼玉レパーズ外

          『ファイヤーボール』後編

          『ファイヤーボール』前編

           プロ野球・ファイヤーズの美島隼は、若干22歳にして年俸二億円、長身でイケメン、日本球界を代表するエースである。しかし、その実態は、天然でポンコツ、メンタル弱の超甘えん坊。何を隠そうスーパーシスコンだった。姉の貴子とは親同士が再婚であったため血はつながっていない。隼が六歳で実母を亡くしてから、貴子はまさに母親代わりとして無償の愛を注いでくれた。いつしか隼の方は本気の恋心に発展。堂々と貴子が好きだと言ってはばからない。そんなシスコンぶりをチームメイトも温かく見守っているのだが…

          『ファイヤーボール』前編

          『ガールズ・クライシス』【5】

           私は十四歳の夏にして初めて自覚した。  私は本気を出すと意外と頭がいい。今までやる気がなかっただけなのだ。夏休み明けの学力テストで一気にクラスの女子で二番になった。 「恵本、がんばっているな」  大好きな国語の吉野先生が目を細めて褒めてくれた。彼は三十七歳だが、白髪が交じり、背が低く痩せていて、度の強いメガネをかけているので、五十歳くらいに見える。一見、頼りない風貌のため皆は気づいていないが、実は教師の鏡、スーパーティーチャーなのだ。生徒の個人情報、趣味や嗜好に至るまで、全

          『ガールズ・クライシス』【5】

          『ガールズ・クライシス』【4】

           うぎぁあ。         翌朝、私は洗面所の鏡を見て、そんな字面どおりの悲鳴を上げた。相当なブスに逆戻りしていた。定期的メンテナンスを怠った時の緩やかなものとは明らかに違った。一夜にしての大後退だった。昨日の幸せ一転、大ピンチだ。私は、一体、何をやらかしただろう。冷静に考えた。  頭ポンポンだ!  私はその場にしゃがみ込んだ。間違いない。それしか考えられない。ほぼ元の顔に戻ってしまった。こんな顔では、美島さんに会えない。あまりのショックに、しばらくは動くことができなかった

          『ガールズ・クライシス』【4】

          『ガールズ・クライシス』【3】

           恋をした。  中一の終わり、終了式の日だった。遡ること、二日前の放課後、我が三組ではクラス替え前のお別れ会が開催された。有志たちが歌、ダンス、物まね、コントなどの特技を披露するというものだった。  私と友人のゆうこちゃんは、これといった特技もなかったため、後方の席に並んで座り、観客に専念していた。プログラムの後半、小型のアンプがセッティングされ、男子三名によるバンド演奏が始まった。その時、私は腹部に疼痛を感じた。まさか、大音量に刺激されたわけではないだろうが、予定より一週間

          『ガールズ・クライシス』【3】

          『ガールズ・クライシス』【2】

           翌朝、私の顔は、相当やばかった。効果は一目瞭然。そう、さらに可愛くなっていた。早速、持っている中で、いちばん可愛い洋服を選んで着た。似合わないからと、机の奥に眠らせていた水玉模様のカチューシャをした。嬉しくて何度も鏡を見た。  その後、朝食を食べていると、自身の能力の真偽を確かめようと思ったのか、コウちゃんが押し入れから、もぞもぞと出てきた。コウちゃんは目をぱちくりしていた。 「ねえ、コウちゃん。本当だったでしょう? 可愛くなっているでしょう?」 「何か、そんな気はしてきた

          『ガールズ・クライシス』【2】

          『ガールズ・クライシス』【1】

           【あらすじ】  自称可愛げのないブスな少女ジュリは六歳の時に両親が離婚。明るいフェミニストの母と二人で暮らしてきた。小六の時、偶然母を助けた青年、広大(コウちゃん)と同居することになる。母よりも十歳年下で頼りない広大は、気弱に母に片想いをしている。ジュリは、優しくておっとりとしている広大とは大の仲良しで、兄妹のように会話も弾み楽しく過ごしている。  そんなある日、ジュリは勘違いから広大に対して盗みを疑い、怒りをかって偶発的に殴られてしまう。ショックに大泣きするが、翌日目覚め

          『ガールズ・クライシス』【1】

          『カミング・クイーン』

           慎太郎は、まりあ宅に居候し好きな絵を描いて過ごすというお気楽な生活。紗英の別荘ではポーカーに勝利し、高級時計を巻き上げたりと、いい加減し放題。別荘地をうろついていると、草城家の家政婦・真智に、家庭教師と勘違いされ屋敷に招き入れられる。待っていたのは、一人娘・薫子。慎太郎に、いきなりわがままを注意され面食らう。お調子者だが偉ぶることなく、不幸な生い立ちすらも悲観せず受け入れている慎太郎に対して、薫子の態度は軟化。偽者の先生であることなど関係なくなる。こうして、慎太郎と薫子の楽

          『カミング・クイーン』

          『あの日の白いシャツ』

           真壁いずみは、素直な女性になって、愛する人に白いシャツを贈りたい。しかし、良に片想いのまま、友達歴五年。今更、その先に進めない。上司に「素直じゃない愛の告白を」と発破をかけられたいずみは思い切って想いを告げるが。友達という遠回りした分、すぐにはアツアツといかない不器用な二人を今日の白いシャツが見守っている。ちょっと可愛い大人のラブコメ。  【登場人物】 真壁いずみ(24)会社員 水島 良 (25)いずみの男友達 細田真理子(45)いずみの上司 ○いずみの部屋(1DK・一

          『あの日の白いシャツ』

          『月と風のフィリア』

           月上怜は実家の自室にこもり幽霊のような生活をしている。元々は教師をしていたが、いじめ加害者の保護者と校長に土下座を要求されて逆上、机をけり倒し自主退職をした。それを両親、友人、恋人にこぞって否定され人間不信に陥ったのだ。ある日、小学生の風真が毎日縁側に遊びに来るようになる。怜はこの家に棲みつく幽霊だと名乗るが、風真は怖がることなくあっさりと受け入れる。風真はIQ150で聡明、大人びた感性の持ち主でありながら、どこか純粋で憎めない。怜と風真は年齢差十八歳を超えて色々なことを語

          『月と風のフィリア』

          『日傘とメロンとコーヒーゼリー』

           小学校教諭のひとみは、赴任先の釧路で単身赴任中の伸吾と不倫の恋に落ちる。一年後、伸吾の札幌転勤を機に別れを切り出され、すんなりと受け入れる。しかし、女はそんなに単純ではない。夏休みに入り、札幌の実家に帰省したひとみは、沸々とこみ上げる感情をもてあまし、伸吾の家に『打ち上げ花火3連発』をお見舞いしようと思い立つ。悲劇のヒロインなんていない。女は超高速回転の心を持つ、タフな生き物なのだ。 【登場人物】 青田ひとみ(24)小学校教諭  水島冬波(21)大学生  水島伸吾(51)

          『日傘とメロンとコーヒーゼリー』