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大人になってから観る『スタンドバイミー』
この映画を初めて観たのは、中学生か高校生かそのくらい。母がBSか何かで放送されていたこの映画を録画していて、私を誘って来たのだ。
親に誘われるままに映画を見始めて衝撃を受けたり、虜になったりするのはよくあることだった。
わけもわからずスピーカーを爆音ギターで壊す青年を無理やり見せられたと思ったら、『バックトゥザフューチャー』だったり。
布団で半分顔を隠しながらも好奇心が抑えられず、生きた人
この道でよかったと思えた夜
4月某日。
20時30分に近くのコンビニを出発し、私は奈良の中でも屈指のお気に入りスポット、二月堂へと歩き出した。
東大寺の大仏殿の裏、街灯もまばらな暗い坂道をどんどん登る。
途中、立派な八重桜が満開を迎えていた。
思わずカメラを上に向けると、もう21時だというのに空がまだ少し明るいことに気がついた。
長かった冬が終わり、ようやく世界が春になろうとしているのを感じた。
山の中に迫
短編小説 駅前に落ちていた人形の話
これは通勤中に考えた完全なるフィクションです。
いつも通り、最寄駅のコンビニで弁当を買って家路に着いたんです。
そんなに大きくないけど、激安ファミレスとかドリンクスタンドや可愛いイルミネーション付きの噴水なんかもある、そこそこ栄えた駅です。人通りも結構あります。最近だと海外からの旅行客も多くて、近くの商店街は歩くのも大変なんです。
大学進学を機にこの街へ越してきたんですが、すっか
短編小説 ある柔軟剤を探す男
ある香りに取り憑かれた男の話。
「あ、柔軟剤切れてるんだった!」
溜めに溜めた洗濯物をオンボロ洗濯機にぶち込み、洗剤も入れ、とどめをさすだけ。というところで、葵は動揺と落胆の滲んだ声を上げた。
そんな彼女の揺れるポニーテールを眺めていた俺は、咥えていた煙草を指に挟み、「あ、まじか」と同調した。
いつもこの家では、必要なものは切れるまで補充されない。ハンドソープ、ティッシュ、シャンプー
短編小説 調香師の娘
ストックにあったこちらを今週末は投稿します。結構お気に入りです。
ココ•シャネルが調香師と出会いあのシャネルNo.5を生み出したことで運命を変えたエピソードが好きです。
いつか群像劇を書いてみたいなぁ。
では本編どうぞ。
ある王国に、宮廷お抱えの調香師がいた。
世界中の美しい花を集めた温室で彼女が調合する香水はまるで魔法のように人々を魅了していた。
薔薇、金木犀、鈴