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えらのむしマガジン

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自分の研究や巷を賑やかしている寄生虫のあれこれについて説明・紹介しています。身近な生き物である寄生虫を怖がらないでください。
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記事一覧

論文が出版されました4

論文が出版されました4

今回出版された論文は、以前にnoteで紹介したマナガツオという魚のエラに寄生している単生類の再記載論文です。マナガツオは、瀬戸内海に面する地域ではよく食べられますが、関東ではほとんど食べられない魚です。「西にサケなし、東にマナガツオなし」とも言われています。流通する量が少ないことから、たいへん高級な魚になっています。現在手元に寄生虫の標本が大量にあるのですが、マナガツオの単生類を優先して論文にした

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いつも隣に感染症

いつも隣に感染症

ここ2年ほど、落ち着いて本を読めていませんでした。途中まで読んだり、必要なところだけ読むという情報収集としては読書をしていたのですが、作品を楽しむことができていませんでした。最近、少し余裕ができたことから、ネットで話題(?)になっていたある小説を読んでみたのですが、なかなか楽しかったです。今回は、その感想文となります。

あらすじと事前情報

読んだ作品は、『清浄島』という小説です。北海道礼文島出

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いい湯だな(続き)

いい湯だな(続き)

前の投稿で、筑波大学などの研究チームが高温酸性の温泉からRNAウイルスがいるのを発見したと言う記事を紹介し、好熱性細菌とその利用についてお話ししました。高温で強い酸性(もしくはアルカリ性)の水の中に住んでいる細菌もすでに私たちの生活に欠かせないものになり始めています。今回は、その続きで身近なRNAについてお話しします。

DNAのコピー

科学に興味があるなし関係になく、DNAという言葉を聞いた時

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いい湯だな

いい湯だな

筑波大学などの研究チームが高温酸性の温泉からRNAウイルスがいるのを発見したと言う記事が先月でていました。科学に関わりの少ない方からすれば、「熱湯の中にもウイルスがいるのはすごいけど、だから何?」となるのではないでしょうか?この発見の凄さを知ることはコロナ禍において話題になったことを理解することと関わっています。そんな温泉の中にいる生物の話を何回かに分けてしていきます。

煮沸消毒されるんじゃない

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二人はどういうご関係?

二人はどういうご関係?

X(Twitterといった方が馴染むのですが)にて、自分で撮影したタイノエ(Ceratothoa verrucosa)にマダイヤツデムシ(Choricotyle elongata)の写真と一緒に、両種が超寄生していると紹介したところ、ウオノエの専門家から「超寄生じゃないよ」とコメントを頂きました。その時、この2種類の寄生虫の関係性について書かれた論文のリンクも一緒に書かれていたのですが、なかなか読

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論文が出版されました3

論文が出版されました3

今年2本目の論文が出版されました。この論文は、日本動物学会の学会誌”Species Diversity ”に掲載された”Description of a New Species, Microcotyle pacinkar n. sp. (Monogenea: Microcotylidae), Parasitic on Gills of Sebastes taczanowskii (Sebastid

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目黒寄生虫館に行ってきた

目黒寄生虫館に行ってきた

勤労感謝の日にほぼ2年ぶりに目黒寄生虫館に行ってきました。論文で使用した寄生虫の標本を収めるのと収蔵されている寄生虫標本で観察したいものがあったためです。また、東京まで行くのは安くはないので、標本を収めたりするだけならば郵送ですましたりするのでが、70周年の記念展示もあるということで、行くことにしました。

目黒寄生虫館ってどんなところ?

名前のとおり東京都目黒区にある寄生虫学専門の私立博物館で

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お魚ランキング(刺身編)

お魚ランキング(刺身編)

私たちは魚の寄生虫の研究のために、定期的に日本各地で魚を採取しています。最初のころは釣っていたのですが、しだいに市場での購入が中心になってきました。ちなみに、検査した魚は必ず食べるようにしています。先日、この3年ほど調査を手伝ってくれている方と、どの魚が1番美味しかったかと言う話になりました。結論を言うと、寄生虫の検査は鮮度が命なので、どの魚も鮮度がよかったため美味しかったですが、その中でも印象的

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論文が出版されました2

論文が出版されました2

先日、所員(研究所としているので)の書いた論文が出版されました。”Description of a new species, Pseudodiscocotyla mikiae n. sp. (Monogenea: Discocotylidae) parasitic on gills of Pristipomoides filamentosus from off Okinawa‐jima islan

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海の向こうに

海の向こうに

私はライフワークとして魚類の寄生虫の研究をしています。北の方にある大学の水産学部が出身で、大学の頃からずっと海に関わる勉強と研究を続けています。寄生虫に興味を持っていたのは中学の時からですが、もとから魚の寄生虫に興味を持っていたわけではなく、本当は医学部に行きたいと思っていました。今でも、高校の時にもっと勉強しておけばと後悔することもありますが、海に関する研究を続けられていることは悪いとは感じてい

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空飛ぶ線虫

空飛ぶ線虫

中学生のころ寄生虫に興味を持ったものの、専門書を手に入れられず藤田紘一郎先生の「笑うカイチュウ」や「空飛ぶ寄生虫」を読みあさっていました。まあ、エッセイですのでタイトルも比喩なわけですが、先日Twitterで本当に空を飛ぶ線虫がいたという話が話題になっていました。勉強不足(特に物理)で、うまく説明できていませんが、面白かったので紹介します。

何の論文?

論文のタイトルは、「Caenorhabd

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いろんな魚を食べてみて

いろんな魚を食べてみて

私は、趣味というかライフワークとして魚類の寄生虫の研究をしています。当然、寄生虫を手に入れるためには魚を解剖しなければなりません。その魚の大半は漁港などで購入しているのですが、なんでもよいわけではありません。今回のお話は、私がいつも解剖しているワケありの魚についてです。

魚は好きですか?

突然ですが、皆さんは魚は好きですか?日本は島国で、世界的にも有名な和食には魚がよく使われています。しかし、

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新種を探すプロジェクト

新種を探すプロジェクト

私は魚類の寄生虫の研究をしていますが、研究分野は分類学です。分類学をわかりやすくいうと、生物をじっくり観察し、体の特徴やDNA解析によってそれがどのような種類なのかを調べています。それだけでは、生物の名前を調べているだけのように思われますが、新種の発見や新たな生息場所の発見などにつながる基礎的な研究です。先日、興味深いリリースを見つけたので、新種の報告の仕方とともに紹介します。

国際的な未知の海

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もしもムシがでてきたら

もしもムシがでてきたら

もし、スーパーや鮮魚店で購入した魚から寄生虫が出てきたらどうしますか?“運が悪かったと思って捨てる”“購入した店に連絡して返金してもらう”という順当なものから、“悪質クレーム”“SNSでさらす”という品のないものまであるようです。これらの対応は正反対のように見えて、根っこの部分には同じものがあるのではないかと思います。それは、「安全だと思っていた魚から変なのが出ていた」や「ニュースやネットでひどい

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