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#小説

孤絶した場所にいる存在 —夏目漱石の小説「坊つちやん」について—

孤絶した場所にいる存在 —夏目漱石の小説「坊つちやん」について—

 今回は、夏目漱石の小説「坊つちやん」について見ていきます。
 この小説は、一人称が「おれ」である人物の語りで展開されます。この「おれ」については、精神のありようが、ほんの少しおかしい、そんな人物であると言えます。では、一体、どこがおかしいのでしょうか。それについては、登場人物である清の言葉を借りたいと思います。清は、「おれ」の性格について、「真っ直」(まっすぐ)な気性である、と評しています。その

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【第5回】あなたはどっち?「全能神型作家」「憑依型作家」

【第5回】あなたはどっち?「全能神型作家」「憑依型作家」

 ここ最近は読者の方からの質問に頼り切りであったモノカキTIPSですけれども、今回はいつもの形式に戻りまして、僕が経験したことを元にしたお話でございます。
 さて、物語を作るにあたっては作家それぞれいろいろ種々様々で、あまりこう固定化された作り方はない、ということを申し上げてきたのですけれども、ある一部分にフォーカスすると、結構作家を大別できるのではないか、というものもあります。

 今回は、「全

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編集者が応募原稿を読むときに「重視しているところ」と「実は気にしないところ」【ポプラ社小説新人賞への道】

編集者が応募原稿を読むときに「重視しているところ」と「実は気にしないところ」【ポプラ社小説新人賞への道】

小説家デビューの登竜門「新人賞」。
それぞれの新人賞には傾向がある、ということは前回の記事で触れましたが、賞に応募したら選考を突破していかないといけません。

選考方法は出版社や新人賞によって異なりますが、多くは一次選考・二次選考・最終選考と段階を踏んで選考していきます。

ポプラ社小説新人賞も一次選考・二次選考・三次選考・最終選考という過程があり、一次選考から編集者が全ての原稿に目を通しています

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タイトルについて思うこと

タイトルについて思うこと

 Twitterアカウントを持って「小説家になろう」や「カクヨム」に膨大な数の作品が投稿されているのを見るにつけ、ではなぜこんなに出版文化が衰退してしまったのだろうと首を傾げざるをえないのが、正直なところです。

 なんでも無料で読めるウェブの存在が、小説そのものの在り方まで変質させてしまった。

 もともと小説は、文章を書く頭と紙とペンさえあれば、ほとんど原価がかからずに書けてしまう手軽な表現媒

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伸びる作家・伸びない作家の違い

伸びる作家・伸びない作家の違い

伸びる作家と伸びない作家の違いは何か――。
疑問に思う点であり、編集者としては、
なんとかその「要因」を探りたいと考えるものです。

同時期にデビューして、次々と作品を発表し、
ぐんぐん人気を伸ばしていく作家と、1冊出して鳴かず飛ばず、
その後もぽつりぽつりとしか売れない作家……。

おもしろいほどに、その違いははっきりと出てきます。
その要因は一体何なのか。
多くの作家をデビュー時期から見てきた

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売れる小説を作るテクニック ~隙間を探す~

売れる小説を作るテクニック ~隙間を探す~

出版界ではやはり、二番煎じというのは多いですね。
ドカーンと売れるものがあると、「お、これ売れるんだ」
とみんなが気づいて、次々と似たものが出てくる、というアレです。

まぁこれは当たり前というか、どの分野でも
起こることではありますけども。

しかし、売れたものとまったく同じものを出す、
というわけにはいきませんので、
少しアレンジしたり、違う要素を付け加えたりします。

「売れる小説」を考える

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「制限」が面白さを作る

「制限」が面白さを作る

小説は人生と同じ。
「制限」があるほど、燃え上がるんです。

小説における「制限」は、面白さを生み出します。
どういうことかというと、例えば恋愛でいうところの
「ロミジュリ効果」のようなものです。

普通の男女が好き合って、一緒になりました。
二人はとっても仲良し。終わり。
では、つまらないですよね?

惹かれ合う二人なのに、何らかの事情で、
一緒になることが許されない、
逢瀬を重ねることができな

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プロ作家になるために、一番大切なこと

プロ作家になるために、一番大切なこと

プロ作家になるために必要なのは、実は文才ではありません。
すごく意外に思うかもしれませんが、文才がなくてもプロになれます。

では、本当に大切なものは何か。
それは………

プロ作家でやっていくという、強い気持ちです。
いやいや、答えになってないよ、と思うかもしれません。

でも、本当の話です。
プロ作家になるのは「プロになる」という強い気持ちが一番大事です。
それさえあれば、なんとかなります。

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読者から『面白い』と思ってもらえる小説ってどんなの?

読者から『面白い』と思ってもらえる小説ってどんなの?

 「はじめまして」の方もそうじゃない方も、こんにちは。
 私、2023年3月に角川ビーンズ文庫より小説家デビューを果たしております、野菜ばたけと申します。

 今回は『可能な限り一般的なものから一歩踏み込んだ創作論』の第一弾。
 小説書きにとっての永遠の命題、「『面白い小説』って何?」について考えていきたいと思います。

 にオススメです。
 少しでも何か、拾って帰ってくださいね。

野望がある作

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【考察】私が『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を、村上春樹の入門小説として推す理由

【考察】私が『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を、村上春樹の入門小説として推す理由

・村上春樹の小説を読んでみようと思うけど、何から読めば良いのかわからない。
・小説は読まないけど、村上春樹は有名なので読んでみたい。
・一番有名な『ノルウェイの森』を読んでみたけど、読んでも何が良いのかわからない。

日本はもちろんのこと、世界でも相当有名な作家、村上春樹。

一番売れたであろう『ノルウェイの森』や『1Q84』、最近発売された『騎士団長殺し』など、ニュースでも取り上げられることが多

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小説で何がプロとアマの差を分けるのか?

小説で何がプロとアマの差を分けるのか?

前回のnoteにも書いた通り、この10日間でアマチュアネット小説を一気に70作読みました。

まず70作読んで感じたことは・・・
リア友には小説を書いている人は少ないのですが、世の中にはたくさん物書きがいるんだなあって思いました。

仲間がいて嬉しいなと思いました。

一番思ったのは、膨大な分量を、コンスタントに書き続けている人たちがいっぱいいる!ってことでした。

小説って思っているよりも書き上

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