「制限」が面白さを作る
小説は人生と同じ。
「制限」があるほど、燃え上がるんです。
小説における「制限」は、面白さを生み出します。
どういうことかというと、例えば恋愛でいうところの
「ロミジュリ効果」のようなものです。
普通の男女が好き合って、一緒になりました。
二人はとっても仲良し。終わり。
では、つまらないですよね?
惹かれ合う二人なのに、何らかの事情で、
一緒になることが許されない、
逢瀬を重ねることができない……のだとしたら、
そこに「制限」が生まれ、それが「恋愛の盛り上がり」を生み出します。
主人公はサッカーが大好き。
誰よりも練習して、プロサッカー選手になりました。終わり。
……まぁ、その「練習」という部分に、どんな苦しいものが
入っていたのか、というドラマ性はありますが、
やはりこれでは物語として普通です。
でも、サッカー選手になるべく誰よりも練習を
積み重ねてきたのに、不治の病に犯されていたとしたら、どうでしょうか。
余命1年、それでもサッカー選手を目指していたら?
ある時、異世界に飛んで、国を建国しなくてはならなくなった。
大変だったけど、なんとか建国できました。終わり。
今はやりの異世界転生ファンタジーでも、
「大変だったけど」の部分にドラマはあると思いますが、
その建国、30日以内にしないと、自分が死ぬとしたら?
建国すると、異世界で暮らすか、元の世界に戻るか選べるとしたら?
……このように、小説の物語や登場人物に制限を設けることで、
ストーリーに緊張感やリアリティを与えることができます。
その制限を乗り越えるための努力や、
その中での人間関係や感情の描写が、物語に深みを出してくれるのです。
また、制限を設けることで、
作者や読者の創造力を刺激することができます。
その制限をどのようにクリエイティブに乗り越えるかを考えることで、
新しいアイデアやストーリー展開が生まれたりします。
人ってやはり、「ダメ」と言われると燃え上がったり、
「あと1時間で締め切りだ」と思うとやる気が出たり……
「制限」があることで、スイッチが入ったりするものなんですよね。
それをぜひ、小説の中でも上手に活用していきましょう。
物語の起伏を作るには、「制限」が必要になってきますが、
最近はまったく「制限」のない小説……主にラノベなんかですが、
そういうのも出ていたりはします。
つまり、好きだと思ったら相手からも熱烈に愛されていて、
たまに喧嘩はするけど、めっちゃラブラブで幸せです。終わり。
という話。
「どこが面白いんかな~」と、正直私は思ってしまうのですが、
需要があるから出版されているわけです。
これはですね、小説に感情の起伏を求めていないのです。
「感動」ではなく、「安心」を求めている。
つまり、「面白い!」ではなく、「癒される~」が欲しいわけです。
……みんな、疲れてるんだね……。
まぁ、そういう可愛い猫の動画を見るような、
幸せ一色しかない小説がウケるのも、
時代の流れかなと思います。
どこまでいってもハチミツのように甘くて、
苦さも辛さも酸っぱさもない。
そんな小説は小説じゃない!!
と、内心では思いつつも、みんなが欲しいものを作るのが編集者。
まぁ、この甘すぎる小説も、世知辛い世の中を
痛感した後に読むと、ほっとするのは事実です……(笑)。