缶詰工場の一本の木が、三階の部屋から見下ろせた。
平凡な木だった。なんの木かも知らないけれど。
その木とは引っ越して7年の付き合いだったが、突然の別れとなった。
缶詰工場が倒産、そこに高層マンションの建設が決まり、エントランスの邪魔だと抹殺されてしまったのだ。ばっさりと。
朝には切り株だけが残され、昼にはひき抜かれ、夕方にはコンクリートの地面になっていた。
もちろん、わたくしの木ではない
ある日プロットを組んでいて「さーて後はラスボスのこの連続殺人鬼と主人公を対面させてー」となった時、ふと気づいた。
──主人公、こいつの居場所にどうやって気づけばいいんだ!?
そう、意外とボスキャラとの戦いは難しい。倒すのが大変という話以前に、対面するのが難しい。
なので今回はちょっとラノベのボスキャラの居場所の突き止め方について少し調べてみることにした。
・拠点が分かっている
基本。魔王城
「ひとは誰も肉体的・精神的に身ごもっており、 ある年齢に達すると、産むことを熱望する。
しかし、産むためには、美しいものが必要である。美しいものに触れたときに初めて、かれはその熱望の苦痛から解放されて、無事に出産することができる。
精神的に身ごもっている者は、このようにして、美しいものに触れて、哲学的な知、詩作品、法律、技術的な発明品などを創りだす」
プラトンの「誰も精神的にみごもって
あれは月じゃない…宇宙基地なんだと父が言った。幼かったわたくしは彼から空想することを学び、人生に楽観的な考えをもつようになった。
Father Moon - a
That's no moon... it's a space station. (月じゃない…宇宙基地だ。)
というのが、『スターウォーズ(1978年公開)』のオビ=ワン・ケノービのセリフであると、大人になってから気付いた。
それ
本編
翌日。
どういう訳か天城が来た時点で、当の本人――久遠寺文音(くおんじ・あやね)は部室に訪れていなかった。今度は鞄もない。
既に部長机に荷物を広げて、何やら絵を描いていた星生にも聞いてみたが、首を傾げるだけで全く知らないときた。
流石に昨日の今日で忘れているという事は無いだろうし、いくら久遠寺とはいえ、この大事な日にダブルブッキングしてしまうなどというミスを犯すこともない