千葉とうしろう/論理的作文講座

理屈で説得する論理的な作文講座(オンライン)

千葉とうしろう/論理的作文講座

理屈で説得する論理的な作文講座(オンライン)

記事一覧

産屋敷の「人の思いは永遠」は本当か。宇宙の巨大数をめぐる科学史

 『鬼滅の刃 柱稽古編』について。産屋敷と無惨の会話で気になったので、ツッコミを入れたいと思います。  産屋敷の「その事実は今、君がくだらないと言った人の思いが…

矛盾を抱えるのはしょうがない。宗教史すらそうなのだから、ましてや職場や子育ての矛盾なんて

『サピエンス全史』を再読中です。 1.一神教の崇拝対象が一つではない矛盾 キリスト教は一神教と言われているのに、どうして崇拝対象がたくさんいるのか、前から気にな…

暁美ほむらは、どう説明すべきだったか。説得力のある忠告について

 『魔法少女まどか☆マギカ』が面白い。きらびやかな美少女の戦いもの(『プリキュア』とか『おジャ魔女どれみ』)かと思いきや、退廃的で悲壮・苦痛のダークな展開と世界…

論理的なのはカナデだった。北宇治吹奏楽部の鬱憤を考える

 シーズン3。北宇治高校吹奏楽部には多くのトラブルがありました。特にエピソード9から10(夏合宿から関西大会)にかけては生徒どうしの悩みや愚痴や言い合いも多く、…

二宮尊徳をたまに思い返すべき。経営コラムニストの非論理性

 Yahooニュースの公式コメンテーターによるコメント。それの揚げ足をとる記事です。今回、揚げ足をとるのはこちらのコメント。ニュース記事「障害者5000人が解雇や退職 …

個別具体的な交通違反取締りのストック。仕事ができるようになる方法

「どうすれば仕事ができるようになりますか?」 職場の若手からの質問です。  この質問への結論を言うと「目的をもって周りを見ろ」ということになります。以下、これの…

では高坂麗奈に何と言うべきだったのか。「おかえりオーディション」反論例

 アニメ「響け!ユーフォニアム」が面白い。「涼宮ハルヒの憂鬱」から京アニ繋がりでユーフォニアムを見始めたのだけれど、これが正解でした。  北宇治高校吹奏楽部の生…

なぜ「俺はそうは思わない」で意見を主張できるようになるのか

 「逆ソクラテス」、面白かったです。伊坂幸太郎氏の作品。  タイトルからしてやられました。「『逆ソクラテス』って何だよ」という初見殺し。「舞台は古代ギリシャなの…

それなら、私は誰にも罪を犯してないのだ。論理的アントニーと非論理的ブルータスの対比

 論理的に相手を説得するのは難しく、その理由の一つは具体例をうまく提示できないことにあります。  言いたいことはすぐに浮かんでくるが、それに説得力をもたせられる…

ケンカの必要条件。民度の定義

1.「民度」をいかに定義するか 民度の定義について考えています。というのも、こちらの記事を聞いたから。  「民度の高低を感じるのはどんな時? そもそも民度ってな…

シカ・アナタ・大谷翔平。思想の愉快

 思想とは、なんと愉快な概念なのでしょう。  当人すら(だからこそ)知らず知らずのうちに支配されている偏見。物事を考える際に陥りがちな思考上の癖。本人は認識でき…

モンテッソーリよりもデータ教。「生まれながらの力」すら凌ぐ、思想の威力

1.モンテッソーリ教育とは  先日、幼児を持つ友人からこんな話を聞きました。「モンテッソーリ教育の学校に子どもを入れようと思ってるんだよね」と。  まあ、この友…

交通違反者と大剣「ドラゴンころし」。こうして論理性は鍛えられた

 論理最大の敵は感情ですね。「論理学がわかる辞典」なる本を読んでいるのですが、「論点のすり替え」の箇所を読んでいて昔の事を思い出されました。「権威論証」だの「燻…

「セロリが好きな人もいる」から抜け出せない。思想の魅力

「何の本をよく読んでいるんですか?」 と聞かれて 「思想が好きで、よく読んでるよ」 なんて答えた会話を最近したので、そのことについて書きます。  私は思想関係の本…

運動機能のピークが6歳という不安。具体的エピソードの役割について

榊原さん方に起こったエピソード。色素性乾皮症の進行  Yahooニュースで、色素性乾皮症という病気の記事を読みました。色素性乾皮症は、「2万人に1人」という難病。愛…

論理も宗教だった。『サピエンス全史』の話

1.世界統一と身内の平和。サピエンス全史 『サピエンス全史』が面白い。なるほど「読みだしたら止まらない」という評価も十分に頷けます。著者であるユヴァル・ノア・ハ…

産屋敷の「人の思いは永遠」は本当か。宇宙の巨大数をめぐる科学史

産屋敷の「人の思いは永遠」は本当か。宇宙の巨大数をめぐる科学史

 『鬼滅の刃 柱稽古編』について。産屋敷と無惨の会話で気になったので、ツッコミを入れたいと思います。

 産屋敷の「その事実は今、君がくだらないと言った人の思いが不滅であることを証明している」というセリフを少し細かく見てみましょう。
 何を証明しているのか。 「人の思いが不滅であること」を証明している。
 何が証明している? 「その事実」が証明している。
 その事実とは? 「この千年間、鬼殺隊が無

もっとみる
矛盾を抱えるのはしょうがない。宗教史すらそうなのだから、ましてや職場や子育ての矛盾なんて

矛盾を抱えるのはしょうがない。宗教史すらそうなのだから、ましてや職場や子育ての矛盾なんて

『サピエンス全史』を再読中です。

1.一神教の崇拝対象が一つではない矛盾 キリスト教は一神教と言われているのに、どうして崇拝対象がたくさんいるのか、前から気になっていました。

 三位一体などといって、神とイエスと精霊の三者をワンセットにして崇拝している。これって一神教としてどうなんでしょう? 一神教とは「崇拝対象が唯一の存在」ということ。であれば、三位一体という信仰をしているキリスト教は、一神

もっとみる
暁美ほむらは、どう説明すべきだったか。説得力のある忠告について

暁美ほむらは、どう説明すべきだったか。説得力のある忠告について

 『魔法少女まどか☆マギカ』が面白い。きらびやかな美少女の戦いもの(『プリキュア』とか『おジャ魔女どれみ』)かと思いきや、退廃的で悲壮・苦痛のダークな展開と世界観。どちらかというと『魔法騎士レイアース』をもっと暗くした感じに見えます(似たような小動物が出てくるし)。

1.暁美ほむらの言葉不足 で、一通り見て、今は劇場版(再編集したもの)を見ています。
 改めてストーリーを最初から見ているのだけれ

もっとみる
論理的なのはカナデだった。北宇治吹奏楽部の鬱憤を考える

論理的なのはカナデだった。北宇治吹奏楽部の鬱憤を考える

 シーズン3。北宇治高校吹奏楽部には多くのトラブルがありました。特にエピソード9から10(夏合宿から関西大会)にかけては生徒どうしの悩みや愚痴や言い合いも多く、議論にこだわる私としては記事ネタとして「どれを取り上げようか」と迷うほどです。

 が、たしかに生徒どうしの言い合いが多くはありましたが、すべて一つの基準で解決できたはず。

 それは……論理。
 論理ですべて解決できたのです。黒江マユの悩

もっとみる
二宮尊徳をたまに思い返すべき。経営コラムニストの非論理性

二宮尊徳をたまに思い返すべき。経営コラムニストの非論理性

 Yahooニュースの公式コメンテーターによるコメント。それの揚げ足をとる記事です。今回、揚げ足をとるのはこちらのコメント。ニュース記事「障害者5000人が解雇や退職 事業所報酬下げで329カ所閉鎖」への、経営コラムニストによるコメントです。

 このコメントは非論理的な内容になっています。というのも、自信も根拠もない、ただの思いの吐露になっているのですから。詳しく見ていきましょう。

1.「たま

もっとみる
個別具体的な交通違反取締りのストック。仕事ができるようになる方法

個別具体的な交通違反取締りのストック。仕事ができるようになる方法

「どうすれば仕事ができるようになりますか?」
職場の若手からの質問です。

 この質問への結論を言うと「目的をもって周りを見ろ」ということになります。以下、これの説明です。

 まずは一冊の本を紹介。
「教師のための読書の技術ー思考量を増やす読み方ー」

1.言葉が思考に限定を掛ける。名文の書き方 レトリック学者・香西秀信氏の著書。文章力を上げるにはどうすればいいか。それは、「自分で文章を書く時に

もっとみる
では高坂麗奈に何と言うべきだったのか。「おかえりオーディション」反論例

では高坂麗奈に何と言うべきだったのか。「おかえりオーディション」反論例

 アニメ「響け!ユーフォニアム」が面白い。「涼宮ハルヒの憂鬱」から京アニ繋がりでユーフォニアムを見始めたのだけれど、これが正解でした。

 北宇治高校吹奏楽部の生徒は、若者らしく部活に一生懸命で好感がもてます。が、彼女らは一生懸命なだけに言い合いも多く、高校生だけに議論の中に誤謬が目立ちます。気になった誤謬を見ていきましょう。

⒈「自分たちの意思で決めてください」〜議論における誤謬例(1)全国大

もっとみる
なぜ「俺はそうは思わない」で意見を主張できるようになるのか

なぜ「俺はそうは思わない」で意見を主張できるようになるのか

 「逆ソクラテス」、面白かったです。伊坂幸太郎氏の作品。
 タイトルからしてやられました。「『逆ソクラテス』って何だよ」という初見殺し。「舞台は古代ギリシャなのか? それともソクラテスのような天才が出てくるのか? それにしても「逆」って何だよ。何が「逆」なんだよ。」

1.「俺はそうは思わない」から意見が始まる ストーリーも痛快でした。
 打点王氏が草壁を褒めるところ。褒めてくれて良かった。「中学

もっとみる
それなら、私は誰にも罪を犯してないのだ。論理的アントニーと非論理的ブルータスの対比

それなら、私は誰にも罪を犯してないのだ。論理的アントニーと非論理的ブルータスの対比

 論理的に相手を説得するのは難しく、その理由の一つは具体例をうまく提示できないことにあります。
 言いたいことはすぐに浮かんでくるが、それに説得力をもたせられるだけの具体例がなかなか浮かんでこない。たとえ関係の有りそうな具体的場面が浮かんできたとしても、主張とうまく整合性がとれない。「この具体例はなんか違う」「この具体例もちょっと違う」とえり好みしているうちに、当初の構想が頭から薄れてくる。主張そ

もっとみる
ケンカの必要条件。民度の定義

ケンカの必要条件。民度の定義

1.「民度」をいかに定義するか 民度の定義について考えています。というのも、こちらの記事を聞いたから。

 「民度の高低を感じるのはどんな時? そもそも民度ってなに? あなたにとっての民度の定義は?」です。私も仕事の中でよく「民度」という言葉を使っていたので、この音声記事が引っかかりました。仕事というのは警察の仕事、です。「まったくすぐにバイクで暴走行為しやがって。ここいら地域の人間は民度が低いな

もっとみる
シカ・アナタ・大谷翔平。思想の愉快

シカ・アナタ・大谷翔平。思想の愉快

 思想とは、なんと愉快な概念なのでしょう。
 当人すら(だからこそ)知らず知らずのうちに支配されている偏見。物事を考える際に陥りがちな思考上の癖。本人は認識できていないけれど、周りから見れば、やはり束縛されている。他人をメタの視点で見られるから、思想は面白いのです。

 他人が思想から支配されているのを眺めるのは愉快痛快です。
 「アナタには自覚がないでしょうが、実際、こうなっていますよ」と見抜く

もっとみる
モンテッソーリよりもデータ教。「生まれながらの力」すら凌ぐ、思想の威力

モンテッソーリよりもデータ教。「生まれながらの力」すら凌ぐ、思想の威力

1.モンテッソーリ教育とは

 先日、幼児を持つ友人からこんな話を聞きました。「モンテッソーリ教育の学校に子どもを入れようと思ってるんだよね」と。
 まあ、この友人は、純粋に子どものためを思ってモンテッソーリ教育を視野に入れているのでしょう。自分の子どもを「かわいい」と思う気持ちには抗しがたいもの。自然淘汰で自身の子に愛着をもつ個体がDNAを繋いできたので、今生きている生物の多くには子に愛着を持つ

もっとみる
交通違反者と大剣「ドラゴンころし」。こうして論理性は鍛えられた

交通違反者と大剣「ドラゴンころし」。こうして論理性は鍛えられた

 論理最大の敵は感情ですね。「論理学がわかる辞典」なる本を読んでいるのですが、「論点のすり替え」の箇所を読んでいて昔の事を思い出されました。「権威論証」だの「燻製ニシンの虚偽」だの「人身攻撃」だの詭弁の項を読んでいると、どうにも記憶が刺激されて、感情がフツフツと湧いてきます。論理的であろうとして「論理学がわかる事典」を読んでいるのに、目に見えて刺激されるのは感情である、というおかしな話。

1.交

もっとみる
「セロリが好きな人もいる」から抜け出せない。思想の魅力

「セロリが好きな人もいる」から抜け出せない。思想の魅力

「何の本をよく読んでいるんですか?」
と聞かれて
「思想が好きで、よく読んでるよ」
なんて答えた会話を最近したので、そのことについて書きます。

 私は思想関係の本をよく読みます。というのも、思想が興味深いから。どのように興味深いのかというと、無限ループのような恐怖を感じるのです。「どうあがいても出られない」とでもいうような恐怖が、私の興味を思想に向かわせます。

その車は左折したのか直進するのか

もっとみる
運動機能のピークが6歳という不安。具体的エピソードの役割について

運動機能のピークが6歳という不安。具体的エピソードの役割について

榊原さん方に起こったエピソード。色素性乾皮症の進行

 Yahooニュースで、色素性乾皮症という病気の記事を読みました。色素性乾皮症は、「2万人に1人」という難病。愛知県に住む榊原妙さんは、息子の匠さん(現在16歳)が2歳の時に、匠さんが色素性乾皮症であることを医者から告げられました。この病気に罹患すると運動機能のピークは6歳頃で、そこからはできる事が減っていくのだという。当時、小学4年の匠さんに

もっとみる
論理も宗教だった。『サピエンス全史』の話

論理も宗教だった。『サピエンス全史』の話

1.世界統一と身内の平和。サピエンス全史 『サピエンス全史』が面白い。なるほど「読みだしたら止まらない」という評価も十分に頷けます。著者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏の書き方、及び訳者の訳が上手いのでしょう。平坦な文章にも関わらず、知的興奮を味わえる。文字の羅列の中から、サルから人間に進化したヒトの苦悩や、領土を広げる際のローマ皇帝の高揚が想像できます。

 さて、本書の第12章には「宗教という超

もっとみる