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雑文エッセイ日記コラムプロレス諸々

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その名の通りです。
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#すごい選手がいるんです

「本を売ることに力を入れたい書店員」と「強い新日本プロレスを取り戻したいレスラー」

「本を売ることに力を入れたい書店員」と「強い新日本プロレスを取り戻したいレスラー」

先日こんな小説を書きました。

本は利益率の低い商材。だから雑貨や文具、催事などで補う必要がある。わかっています。それでも「本屋の売りは本」という考えを捨てたくない。そんな熱を込めた掌編です。

本屋の売りが本なら、新日本プロレスのそれはプロレスです。にもかかわらず、広島大会でおこなわれたKOPW争奪戦は3ラウンド制で、1ラウンド目はマツダ車のタイヤをリング上で4つ積み上げた方が勝利。2ラウンド目

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ハードボイルド書店員が考える「ギムレット」の真意

ハードボイルド書店員が考える「ギムレット」の真意

全日本プロレスの若き王者・安齊勇馬選手が、新必殺技を披露しました。

その名もギムレット。肩車で抱えた相手を、捻りながらパワーボムのように落とす強烈な一撃です。

意味はふたつ。直訳の「錐」は技の外観を物語っています。

もうひとつ。ハードボイルドファンには言うまでもありませんね。

いくつかの訳で楽しめるレイモンド・チャンドラーの名作です。

試合を終わらせ、対戦相手とお別れをする切り札にこの名

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「トライ&エラー」と「人間だよ!」

「トライ&エラー」と「人間だよ!」

新しいことをどんどん試し、思うような成果が上がらなければ手を引き、べつのアプローチを目論む。挑戦と失敗、微調整を繰り返し、少しずつ目標の達成へ近づく。

「トライ&エラー」と呼ばれる方法論です。

悩ましいのは切り替えのタイミング。株の損切りと本の返品を同一線上では考えられません。同じ書店でも、常に賑わうコミックの棚とさほど混まない人文書のそれでは基準が変わってきます。

「ストロングスタイル」を

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「4年前の支え」と「誇りたい同志」

「4年前の支え」と「誇りたい同志」

2020年春。

某感染症の流行に伴い、各プロレス団体は興行を自粛。無観客で収録した試合をネットで配信する形へ切り替えました。

当時の楽しみは、毎週土曜に最新回がアップされた全日本プロレス。現在進行形の闘いから元気をもらえて助かりました。

緊急事態宣言が出てお店は休業。それでも荷物は入るので週に2度だけ出社しました。膨大な量の雑誌を棚に出し、まったく減らぬまま返品。そんな仕事を続ければ気分が滅

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オカダ・カズチカの「未完の仕事」と「新しい海外移籍」

オカダ・カズチカの「未完の仕事」と「新しい海外移籍」

そっちでしたか。

WWEへ行くと確信していました。来年のレッスルマニアで中邑真輔選手と一騎打ちだと。

両者のシングル戦は、オカダ選手が2012年に「レインメーカー」へ変身して以降、3度実現しています(中邑選手の2勝1敗)。ただいずれも同じユニットに属する間柄での一戦で、本格的な抗争ではなかった。

団体の頂点を極めたふたり。そんな彼らが新日本プロレスでやり残した唯一のUnfinished Bu

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「寄り道」+「本気」=「生きる道」

「寄り道」+「本気」=「生きる道」

「とにかくそれは、見事な男であった。あっぱれな奴であった。好いところが一つもみじんも無かった」

太宰治「親友交歓」の一節です。↑を見て思い出しました。

札幌大会ではセコンドの介入による場外リングアウトでエル・デスペラード選手を倒し、IWGPジュニア王座を獲得したSHO選手。賛否両論や好き嫌いは当然あるでしょう。昔からプロレスを見ている人ほど、あるいは拒否反応が強いかもしれない。お気持ちは理解で

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「一番自分を評価してくれた人」の思い出

「一番自分を評価してくれた人」の思い出

4年前。

いまの職場に来てしばらくは棚を任されず、雑誌の手伝いをしていました。正直「またか」です。最初に入った書店で長く雑誌担当を務めたせいか、以後の職場でも「じゃあやって」となるケースが多かったのです。

しかしある日、店長に「雑誌をやらせるつもりはないから」と告げられました。そしてビジネス書や専門書の棚を作るコツをイチから教えてくれたのです。時間をかけてじっくりと。

同僚の非正規に「ここは

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「2000年4月の思い出」&「すべての答えは○○」

「2000年4月の思い出」&「すべての答えは○○」

「もし負けたら○○○」

プロレスを長く見ているとしばしば目にする光景です。

リスクの程度や当事者の契約事情によって、実際に敗れるかどうかの確率が変わってくる印象を受けます。しかし侮るなかれ。人生と同様、リング上も一寸先は闇です。

思い出すのは2000年4月。新日本プロレス・東京ドーム大会のメインでおこなわれた「橋本真也 vs 小川直也」です。「橋本真也34歳小川直也に負けたら即引退スペシャル

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「中心を諦めた人」VS「中心を受け入れた人」

「中心を諦めた人」VS「中心を受け入れた人」

赤が似合いますね。

1.4東京ドーム大会から使い始めたばかりですが、すでに「これでなきゃ」と思えます。むしろ自然体。まるでピカチュウが満を持してライチュウへ進化したように。

赤は戦隊もののセンターカラーです。いまはどうか知りませんが、私が子どもの頃は「後楽園ゆうえんち遊園地でぼくと握手!」というテレビCMに、その年のレッドが出ていました。だからなのかエンターテインメントの世界で赤を身に着けてい

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「○○○」は、いざという時に強い

「○○○」は、いざという時に強い

「10分間、最後までベルトを持っていた選手が勝利するルールで、3分ごとに試合時間がストップし30秒間でできるサーキットトレーニングが行われる」

プロレスを見たことのない人に伺いたい。意味わかります? 

「最後までベルトを持っていた選手が勝利」を文字通りに捉えたら、試合時間が終わった時点でベルトを物理的に抱えている方が勝者と解釈できる。

エンターテインメントはわかりやすさが第一。会社やメディア

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「遠藤保仁選手の思い出」と「落合博満監督の教え」

「遠藤保仁選手の思い出」と「落合博満監督の教え」

ついに引退ですか。

サッカーに詳しくない私にとって、遠藤保仁選手の思い出といえば2010年の南アフリカW杯です。

デンマーク戦のFKも素晴らしかったけど、特に印象深いのはパラグアイ戦のPK。一番手で出てきてふわりとボールを浮かせ、見事に決めた光景がいまでも脳裏に焼き付いています。

よく「難しいことを簡単そうにやってこそプロ」みたいな言い回しを目にします。確かにそうかもしれない。でも尋常ならざ

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「腑に落ちない風習」と「○○○○○の名言」

「腑に落ちない風習」と「○○○○○の名言」

異議あり。

プロレスは私の人生において最も重要な要素のひとつ。「大事なことをすべて教えてもらった」と言っても大袈裟ではない。本当に感謝しています。

一方で、長く見ているからこそモヤモヤする点、腑に落ちない風習があるのも事実です。「重要な試合の再戦がすぐ組まれがち」もそのひとつ。

年間最大のイベントである東京ドーム大会のメインを飾ったSANADA選手と内藤哲也選手のIWGP世界王座戦は、そんな

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「32年前の無念」と「10年前の第7試合」

「32年前の無念」と「10年前の第7試合」

謹賀新年。

といってもプロレスファンの私にとって、真の年明けは1月4日。新日本プロレス・東京ドーム大会を見ることで実感します。

最近は「元日興行」も珍しくないし、全日本プロレスはずっと1月2日&3日に後楽園大会を開催しています。ただお正月ならではのプレミアムな非日常感に浸りつつ、前年の締め括りと新年の幕開けを噛み締めるのは、普段よりも圧倒的に広い空間で楽しむ「レッスルキングダム」なのです。

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イチプロレスファンが「新社長・棚橋弘至」に思うこと

イチプロレスファンが「新社長・棚橋弘至」に思うこと

年の瀬にとんでもないニュースが飛び込んできました。

新日本プロレスのエース・棚橋弘至選手が、23日付で同団体の社長に就任することが発表されたのです。

ここ数年の新日本にはかなり不満を感じていました。ベテランの処遇、王座の価値を落としかねない新設ラッシュ、さらには選手及びスタッフへの配慮を欠いた超過密スケジュール。リニューアル&値上げ後に使い勝手が悪くなった動画配信サービス「新日本プロレスワール

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