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よみきり話

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思いつくまま気の向くままに書いたいろいろエッセイ。ときどき、ご挨拶や謎インタビューなども紛れ込みます。
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「ポタポタ物語」怒涛の最終回

「ポタポタ物語」怒涛の最終回

「水難の相が出ています……」

と、深刻ぶった顔で占い師に告げられそうなほど、ここ最近、私は「濡れる災難」にたびたび遭っている。1度目は出先で買った弁当の容器を持ち帰る際、袋から魚の煮汁が零れてお気に入りの白シャツに茶色いポタポタがついた。2度目は、出勤途中に買った冷たいうどんからやはり何故か汁が漏れ、制服に出汁風味のポタポタがついた。3度目などはポタポタどころではなく、買ったばかりの白ワインを鞄

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国数社理英、役に立ったか考える。

国数社理英、役に立ったか考える。

「勉強しなさい」
と、10代の頃親に言われた記憶がない。母は自分が親からガミガミ言われて嫌だったから、自分の子には言わないと決めていたらしく、ほとんど勉強に関する小言をいわなかった。父はオールマイティな成績を取るよりも、自分の得意分野を伸ばすことを大事と考えるタイプだったので美大に受かったときにこそ一番喜んでくれた。
そのように放任な親のもとで、しかし長女的真面目さでもって自分のメンツが保てると私

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「紙か電子か?」ー25時、コーヒーショップでしたい話②

「紙か電子か?」ー25時、コーヒーショップでしたい話②

学生の頃、深夜のコーヒーショップで友だちとよく長話をした。そういう時に交わす会話は、酒席でのダラダラトークと違い、淡々としつつも、互いの核となる部分をちょっとだけ明かし合うようなひりついた時間だった。

おとなになると、明日も仕事だし、夜中のコーヒーショップも随分行ってない。けれどたまには、知的な会話をのんびり誰かとしたい夜もある。

たとえば今夜はど定番、紙か電子かの話。



先日弟と蕎麦屋

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幸せを失わないための手段。

幸せを失わないための手段。

「人の記憶って、全然アテにならないなあ」

と最近驚いた会話がある。友人Rと福島旅行に行った夜(『おでかけがしたい。⑲』参照)、宿の大広間で豪華な食事をいただいていたときのこと。
「高校のときさ、新宿のライブ行ったじゃん?あの日、モスで、隣の席のカップルにゴミかけられたの覚えてる?」
「えっ?なんのこと」
寝耳に水状態の私。

Rの記憶によると、あの日、私たちはライブ前に大喧嘩をやらかし(それは私

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成人式の思い出

成人式の思い出

今日は成人の日。かつて、私もその日の主役だった年がある。



金沢から名古屋へ帰省していた20歳の私は、朝7時半に、子ども時代から通っている馴染みの美容室の扉を開けた。すでに艶姿の姫がふたりいて、そのどちらとも仲良くはないが顔見知り。さすがは地元である。
当時の私は、前髪だけ長めで後ろは刈り上げという短髪スタイルだったが、危惧していた通り、やはり付け毛をつけられた。しかも、三つ編みを両サイドに

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2024年のごあいさつ

2024年のごあいさつ

皆さまこんにちは、宇佐江です。

私はおめでとうを言えないのですが、今年も一年どうぞよろしくお願いいたします。

今年はなんと、元旦から月曜!
皆さまにとって、今年が健やかで幸せなことの多い年でありますように。

宇佐江みつこ

表題イラスト/©宇佐江みつこ





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2023年のあとがき

2023年のあとがき

皆さまこんにちは、宇佐江です。

本日が2023年最後の月曜で、私のnoteも今年最後の配信となります。
この記事を含め、今年は65本の記事を投稿いたしました。
お読みいただきました皆さまのお心に、少しでも届くものが書けていたら何よりの幸せです。



先の記事にもちらりと書きましたが、今年は本当に自分の環境や生活がめまぐるしく変化した1年で、そのぶん、秋ごろには早くも今年の自分を振り返り
「何

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映画館に行きたい派。

映画館に行きたい派。

表題イラスト/©宇佐江みつこ

今年もまもなく終了する。どんな年だったか?というのはまた「あとがき」(毎年の最終月曜)で振り返るとして、ひとつ自分の中の変化をあげるとすると、映画情報をマメにチェックするようになった年だった。

もともと映画館に行くのは好きなほうだったけれど、自分が観たい映画をピンポイントで観に行くだけで、今、どんな映画が劇場公開しているのかというラインナップまでは全く把握していな

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知らない人の荷物が届いた。

知らない人の荷物が届いた。

ある日帰宅すると、ドアの前に小さな段ボールが置いてあった。置き配というやつである。何も頼んでいないはずだが?と宛名を確認すると、住所は確かにこのアパートで部屋番号も私の部屋。

しかし名前は全く知らない人。

さて困った。とりあえず、置きっぱなしには出来ないので荷物を抱えて中へ入り、パソコンを起動し、ネットに繋ぐ。同時に、この部屋の管理会社に電話してみた。
「すみません、知らない人の荷物がウチに届

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東京と云う街

東京と云う街

ある日の東京。
お昼どき、まえから行ってみたかったカフェが近くにあったので寄ってみたらものすごい行列で、時間の都合もあり、仕方なく断念し適当な店に入った。

そこはガレットの専門店だった。そば粉を使った、クレープのようなフランス料理である。「東京の人はさすが洒落たもの食べてるなあ~」と思いながらレジに並び(先に注文してから席に着くスタイル)、メニューがいまいちよくわからないので、前の人の注文をまん

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25時、コーヒーショップでしたい話①/「チャットGPT」

25時、コーヒーショップでしたい話①/「チャットGPT」

学生の頃、よく深夜のコーヒーショップで友だちと長話をした。酒席でのダラダラしたトークと違い、コーヒーショップでする話は、淡々としつつもお互い真剣な内容が多かった。

おとなになると、明日も仕事だし、夜中のコーヒーショップも随分行ってない。けれど、たまには知的な会話をのんびり誰かとしたい夜もある。

たとえば今夜は、チャットGPTの話。



新聞やテレビでその特集をやっていると、つい見てしまう「

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昔、酔っぱらい嫌いだった私へ。

昔、酔っぱらい嫌いだった私へ。

表題イラスト/©宇佐江みつこ

こちらのnoteで不定期連載している『美大時代の日記帳』は、そのものずばり、私自身が美大生当時に夜な夜な書いていた日記をもとに書かれた文章である。記事化できそうなネタを探す一方、読み返していると、当時の自分の思考回路が克明に描かれていて、非常に興味深い。

たとえば20歳の日記に、酔っぱらいについて書かれたこのような記述がある。

Yさん、ごめんなさい…。

短期間

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(短編エッセイ)イッキ読み願望/お寺様と女子会。

(短編エッセイ)イッキ読み願望/お寺様と女子会。

イッキ読み願望ずっと読みたかった漫画の全巻セットを正月に丸2日かけてイッキ読みした。
掃除もせず、洗濯もせず、食事もテイクアウトかインスタント。日がな一日ソファで過ごし、眠くなったらそのまま目を閉じ、覚めたらまた続きを読むというまさに至福のひととき。

私が漫画を集め始めた時期はまわりの子と比べてやや遅く、小学4年生のころだった。以来、親とおでかけすると必ず本屋さんに寄ってもらうようになった。地下

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元葬儀屋勤務の娘、父の葬儀を手配する。

元葬儀屋勤務の娘、父の葬儀を手配する。

「この仕事に就くことを親御さんはなんとおっしゃってますか?」

就活のとき、重役面接でそう尋ねられて驚いた。世間ではこの仕事への偏見が未だにある―と実際に働く人たちが認識しているということに。

その会社は葬儀社で、内定を得た私はのちにそこの社員になった。

縁もゆかりもアートもない葬儀業界を私が選んだ理由は、一言でいえば非日常を仕事にしたかったこと。そして、日本人特有のごたまぜな宗教観や冠婚葬祭

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