つる・るるる

エッセイ集『春夏秋冬、ビール日和』『「お邪魔します」が「ただいま」になった日』、202…

つる・るるる

エッセイ集『春夏秋冬、ビール日和』『「お邪魔します」が「ただいま」になった日』、2023年の新刊『羽ばたく本棚』などを文学フリマやSTORES「つるる書店」にて販売中。ぬか漬けが好きです。 ヘッダー画像はKaoRu IsjDhaさんの作品です。素敵〜!

マガジン

  • 夏ピリカグランプリ

    • 109本

    2022年・夏ピリカグランプリ、記事収納マガジンです。

  • エッセイ集のご感想・ご紹介など

    つる・るるるのエッセイ集『春夏秋冬、ビール日和』『「お邪魔します」が「ただいま」になった日』『羽ばたく本棚』のご感想やご紹介をまとめたマガジンです。書いてくださったみなさま、本当にありがとうございます!

  • 家族の話

    家族との出来事や思い出を綴ったものです。

ストア

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    羽ばたくセット

    福袋が売りたい!そんな衝動に任せて、数量限定でお得なセットをご用意しました。①羽ばたく本棚(1200円)②橘鶫さんの「イヌワシのつがい」ステッカー(100円)③KaoRu IsjDhaさんの「乙姫つるる」ポストカードセット(500円)④限定小冊子『別冊「羽ばたく本棚」』(200円)以上、合計2000円相当の商品を1500円で販売します!限定小冊子『別冊「羽ばたく本棚」』は、『羽ばたく本棚』の座談会で鶫さん、KaoRuさんが推していた本を読んで書いたエッセイを収録。・背徳のホームズ、忘却のワトスン(シャーロック=ホームズシリーズ)・「何かが起こり狂う」小説は好きですか?(巨匠とマルガリータ)
    ¥1,500
    つるる書店
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    つるる&とき子の本を作る理由

    【内容】文学フリマで一緒に本を売ったり、互いの本にエッセイを書き合ったりしているつる・るるるととき子が「文学フリマ」をテーマにした小冊子を作りました。つるは「文庫本が110円で手に入る時代に、本を買ってくれる人がいること」を大幅リライト版、とき子は書き下ろし「文学フリマでお会いしましょう」を執筆。表紙のイラストは、KaoRu IsjDha。A5判、16ページ。【著者紹介】つる・るるる: 1994年生まれ、湘南育ち。みみっちい日常を綴りがちなぬか好き。著書にエッセイ集『春夏秋冬、ビール日和』『「お邪魔します」が「ただいま」になった日』『羽ばたく本棚』がある。文フリの思い出は、「ヨモツシコメがお客を呼んできた」。https://note.com/tsururururuとき子:1977年生まれ、茨城育ちの転勤族。北海道、九州、四国を経て現在大阪在住。何弁でもすぐマスター出来る自信あり。著書にエッセイ集『なけなしのたね』『にじいろの「はなじ」』。文フリの思い出は、「文フリの片隅で悲喜交々を叫びがち」。https://note.com/toccodoccoKaoRu IsjDha:1980年生まれ、2002年9月よりチェコ共和国在住。元アニメーターの絵描き。文フリの思い出は、「ボソっと一言」。https://note.com/dinor1980
    ¥200
    つるる書店

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文庫本が110円で手に入る時代に、本を買ってくれる人がいること

かれこれ三年、本を売っている。 自分が書いた文章をまとめて、表紙を描いてもらって、ゲストに協力を仰いで。 そうして三年間で三冊の本を作って、文学フリマのようなイベ…

つる・るるる
7か月前
169

祖母の戒名

この時期一番の楽しみといえば、なんといってもスーパーや図書館に飾られた七夕飾りの短冊だろう。 雨にも暑さにもめげず、短冊が飾られていそうな場所には積極的に出かけ…

つる・るるる
2週間前
94

夫を持ち上げる

30歳の誕生日が、健康診断にぶち当たっていた。 弁当を作りながらいつものクセでつまみ食いをしそうになって、慌ててすべてを弁当箱に押し込む。 白湯を飲みながら健診の準…

つる・るるる
4週間前
111

ペルーのバスに試されて

虫でも練りこまれてるのかと思うほどに、鼻くそが黒い。 これがペルーの首都、リマに着いた日の日記の冒頭だ。 はるばる異国で鼻をほじってんじゃないよ、というツッコミ…

つる・るるる
1か月前
65

連用日記という地層

子どものころ憧れていたものの一つに、連用日記があった。 母が持っていた皮っぽい表紙の分厚い連用日記が、まるで魔法使いが持っている巨大な魔導書のような重厚な存在感…

つる・るるる
1か月前
87

文学フリマという名の同窓会場

お顔は知らないけれど文章は知っている人と、初めて会う日。 何度か会っている人の、張り切っている姿を応援する日。 誰かの熱い思いがこもった、未知の本と出会える日。 …

つる・るるる
2か月前
134

祖父の伸びしろ

母方の祖父は私が物心ついたときにはとうにベテランの「おじいちゃん」で、それ以外の生きものだったことなんてないように見えた。 彼にまつわる記憶の大半は、祖母にこっ…

つる・るるる
2か月前
105

癖の盗人

「お電話ありがとうございます。◯◯図書館です」 受話器を取って相手の名前やお問い合わせ内容をざっくり伺い、「では担当者に代わりますね」と保留を押して内線に繫ぐ。 …

つる・るるる
2か月前
112

眠れる森の三十代

「30を越えたあたりから、全然眠れなくなったよね」 初めてそう耳にしたのは、母親と親戚の会話だったように記憶している。 登校ギリギリまで眠っていたい子どもだった私は…

つる・るるる
3か月前
102

分けなかった家事のゆくえ

なんか、私ばっかりトイレットペーパーを買ってる気がする。 そう気がついてしまったのは、noteのお題「#家事分担の気づき」がきっかけだった。 主催者もこんな「気づき」…

つる・るるる
3か月前
106

スカイブルーが似合いたい

もしかしたら、水色の服を持っていないかも。 そうハッとしたのは、ミッチーこと及川光博氏が「今年のツアーのテーマカラーは、スカイブルー(水色)です」と発表したとき…

つる・るるる
4か月前
82

包み紙をラミネートする時代【文フリ広島 前日編】

「文フリ広島の日さ、あっちゃんの家に一緒に泊めてもらおうよ!」 「え、大丈夫ですか?あっちゃんさんがいいならありがたいですけど……」 「あっちゃんOKだってー!!!…

つる・るるる
4か月前
62

【お知らせ】
結婚エッセイ『「お邪魔します」が「ただいま」になった日』残18冊となりました。
完売後はKindle版を作成するかもしれませんが、書籍版をご希望の方はご注文or取り置きのご連絡をいただけると嬉しいです。
https://tsuru-rururu.stores.jp/

つる・るるる
4か月前
41

モーゼに割られた海の気持ち【文フリ広島 当日編】

東京から夜行バスで12時間かけて降り立った広島で、まさか自分がこんな気持ちになるとはまったく想像していなかった。 一週間前の記事では「めっちゃいい位置!イエーイ!…

つる・るるる
4か月前
87

私たちはどうイキるか

文学フリマ広島まで、残り約一週間。 本日2月17日、土曜日。 あと8日後の2月25日(日)には、我々は広島にいる。 嘘でしょう? ついこないだまで「あけおめ、ことよろ」と…

つる・るるる
5か月前
96

短所が思いつかねんだ

6月から勉強していた図書館司書の資格をついに取得し、約5年ぶりに就活に勤しんでいたある日のこと。 第三志望の図書館から面接の案内が届いた。 zoomでグループ面接と小論…

つる・るるる
5か月前
147
文庫本が110円で手に入る時代に、本を買ってくれる人がいること

文庫本が110円で手に入る時代に、本を買ってくれる人がいること

かれこれ三年、本を売っている。
自分が書いた文章をまとめて、表紙を描いてもらって、ゲストに協力を仰いで。
そうして三年間で三冊の本を作って、文学フリマのようなイベントや自分のネットショップなどで売っている。

もともとは形を持たない、頭のなかをぼうっと漂っていたものに、活字をまとわせ紙に刻み、ひと塊にして世に送り出す。
その作業自体は、とても楽しい。けれど本に値段をつけることは、毎回とても恐ろしい

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祖母の戒名

祖母の戒名

この時期一番の楽しみといえば、なんといってもスーパーや図書館に飾られた七夕飾りの短冊だろう。
雨にも暑さにもめげず、短冊が飾られていそうな場所には積極的に出かけて行くし、短冊が飾られている場所を待ち合わせに指定してしまう。
私は嬉々として、なるたけ多くの人間の欲望を啜るように覗き見ている。なんだか新手の妖怪みたいだ。

今年の当たりは、図書館の児童階に飾られていた短冊だった。
私の近所の図書館は大

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夫を持ち上げる

夫を持ち上げる

30歳の誕生日が、健康診断にぶち当たっていた。
弁当を作りながらいつものクセでつまみ食いをしそうになって、慌ててすべてを弁当箱に押し込む。
白湯を飲みながら健診の準備を整えて時計を見上げると、いつもより15分ほど早かった。
水しか摂れるものがないと、朝の時間をだいぶ持て余してしまう。

身支度を終えて夫の耳元に「おはよう」とささやくと、彼は「うう、うう」と身をよじった。
「るるちゃん、検尿ちゃんと

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ペルーのバスに試されて

ペルーのバスに試されて

虫でも練りこまれてるのかと思うほどに、鼻くそが黒い。

これがペルーの首都、リマに着いた日の日記の冒頭だ。
はるばる異国で鼻をほじってんじゃないよ、というツッコミはとりあえず飲み込んでいまは私の話を聞いてほしい。
鼻くそが、びっくりするほど黒かったのだ。
私が思うに原因は十中八九、排気ガス。

大学四年生の夏休み、大学の選択科目で「スペイン語圏でホームステイをして語学学校に通って単位をもらおう☆」

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連用日記という地層

連用日記という地層

子どものころ憧れていたものの一つに、連用日記があった。
母が持っていた皮っぽい表紙の分厚い連用日記が、まるで魔法使いが持っている巨大な魔導書のような重厚な存在感を放っていたのだ。

すごいのは見た目だけではない。
「去年の今日もカレーだったみたいよ」
「一昨年の今日は、おばあちゃんちで花火したんだって」
母は流れるような文字でぎっちりと日々の出来事が綴られた日記帳を開き、過去のその日に私たち家族に

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文学フリマという名の同窓会場

文学フリマという名の同窓会場

お顔は知らないけれど文章は知っている人と、初めて会う日。
何度か会っている人の、張り切っている姿を応援する日。
誰かの熱い思いがこもった、未知の本と出会える日。
文学フリマ東京に遊びに行った5月19日は、そんな、心躍りっぱなしの一日だった。

東京は今回から入場料が1000円。
多少お客さんが少なくなっていたら回りやすくてありがたいなぁ……。
よこしまな期待を抱きながらモノレールに揺られて会場に着

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祖父の伸びしろ

祖父の伸びしろ

母方の祖父は私が物心ついたときにはとうにベテランの「おじいちゃん」で、それ以外の生きものだったことなんてないように見えた。
彼にまつわる記憶の大半は、祖母にこっぴどく叱られている姿だ。

一人でうまそうなものを開けては「こういうときは他の人にも一声かけるもんだよ」と叱られ、晩御飯ができたと呼ばれたときに煎餅を開けてはタイミングが悪いと叱られ、歩きながら放屁しては汚いと叱られ、立ち上がって自分の用だ

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癖の盗人

癖の盗人

「お電話ありがとうございます。◯◯図書館です」
受話器を取って相手の名前やお問い合わせ内容をざっくり伺い、「では担当者に代わりますね」と保留を押して内線に繫ぐ。
4月に入職してから約一ヶ月、業務の三分の一くらいを電話番が占めている。
直接何かに対応するというのではなく、あくまで担当者に引き継ぐまでがいまの私の仕事だ。

先週のことである。
「はい、はい。それでは……」と言いながら担当の先輩の手が空

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眠れる森の三十代

眠れる森の三十代

「30を越えたあたりから、全然眠れなくなったよね」
初めてそう耳にしたのは、母親と親戚の会話だったように記憶している。
登校ギリギリまで眠っていたい子どもだった私は、その言葉にしびれるような羨ましさを覚えた。
当時の私は、横に猫のぬくもりを感じれば寝て、宿題に飽きては寝て、いい感じの日なたがあればそこに座布団を引きずっていって寝ていた。

そんな私でも、30歳になれば眠れなくなるのだろうか。
それ

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分けなかった家事のゆくえ

分けなかった家事のゆくえ

なんか、私ばっかりトイレットペーパーを買ってる気がする。
そう気がついてしまったのは、noteのお題「#家事分担の気づき」がきっかけだった。
主催者もこんな「気づき」は求めてないだろうに。

一緒に住み始めてから約二年、私と夫はお互いのこだわりに合わせて家事を炊事と掃除に大別し、そこそこ円満に暮らしてきた。
「安上がりに健康に」がモットーの私が玄米とぬか漬けを軸に据えた食事を作り、花粉を憎悪し猫ア

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スカイブルーが似合いたい

スカイブルーが似合いたい

もしかしたら、水色の服を持っていないかも。
そうハッとしたのは、ミッチーこと及川光博氏が「今年のツアーのテーマカラーは、スカイブルー(水色)です」と発表したときのこと。ミッチーのワンマンショーでは、観客のかなりの割合がテーマカラーを身に着けて踊り狂うのが恒例だ。
ところがクローゼットを開けると予感的中、スカイブルーどころかそもそもパステルカラーの服が一枚も存在しなかった。

動揺を静めるべく、いま

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包み紙をラミネートする時代【文フリ広島 前日編】

包み紙をラミネートする時代【文フリ広島 前日編】

「文フリ広島の日さ、あっちゃんの家に一緒に泊めてもらおうよ!」
「え、大丈夫ですか?あっちゃんさんがいいならありがたいですけど……」
「あっちゃんOKだってー!!!」
「マジですね?それならお言葉に甘えてしまうけど、本当の本当にいいんですね?」

そんなあまりにも軽やかなノリに流されて、私は文学フリマの前日にとき子さんのお友だちのあっちゃんのおうちに泊めてもらうこととなった。
あっちゃんにとっては

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【お知らせ】
結婚エッセイ『「お邪魔します」が「ただいま」になった日』残18冊となりました。
完売後はKindle版を作成するかもしれませんが、書籍版をご希望の方はご注文or取り置きのご連絡をいただけると嬉しいです。
https://tsuru-rururu.stores.jp/

モーゼに割られた海の気持ち【文フリ広島 当日編】

モーゼに割られた海の気持ち【文フリ広島 当日編】

東京から夜行バスで12時間かけて降り立った広島で、まさか自分がこんな気持ちになるとはまったく想像していなかった。
一週間前の記事では「めっちゃいい位置!イエーイ!」とか書いていたのに、お客さんたちが、私たちを真ん中に綺麗に両サイドに流れていく。
なすすべもなく見ていると、モーゼに割られた海のような気持ちになった。
よりにもよってなぜここを干上がらせようと思ったのだろうか。

目の前でお客さんが左右

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私たちはどうイキるか

私たちはどうイキるか

文学フリマ広島まで、残り約一週間。
本日2月17日、土曜日。
あと8日後の2月25日(日)には、我々は広島にいる。
嘘でしょう?
ついこないだまで「あけおめ、ことよろ」とか言ってたくせに。
光陰矢の如しとは言うけれど、せめて矢じゃなくて紙飛行機くらいに速度を落としてくれないものだろうか。

文学フリマ広島は、規模としてはこれまで私たちの出たことのある東京や大阪ほど大きくはない。それに加え駅から会場

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短所が思いつかねんだ

短所が思いつかねんだ

6月から勉強していた図書館司書の資格をついに取得し、約5年ぶりに就活に勤しんでいたある日のこと。
第三志望の図書館から面接の案内が届いた。
zoomでグループ面接と小論文をおこなうらしい。履歴書や職務経歴書を再読したりしていたら、あっという間に当日になった。

途中までは、すこぶる順調だった。

「図書館司書を志望した理由は」
「前職ではどのような経験を」

私は予想通りの質問の数々に内心ほくそ笑

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