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怪異を訪ねる【遠野 早池峯神社】その四
神社の聖域は想像以上に広かった。前回の投稿で紹介した以外にも、駒形社、金勢社、稲荷社、黒門などがあり、散策スペースは確保されており、神社仏閣に惹かれる方は楽しめるだろう。
途中、用を足そうと思い、境内を探していると、それらしき場所から参拝者や神社関係者が出てきたので、一人の男性に声を掛けてみる。
「あのう、すいません。御手洗いはあちらですか」
「おーう、そうだよ」
私が声を掛けたのは
歴史を踏みしめる【ムカサリ絵馬】その五 若松寺 完結編
和室の欄間あたりの高さから天井に向かって、沢山の絵馬が設置されている。描写された夫婦二人の背景は、黒鳥観音堂で見た絵馬と同様に神社仏閣の鳥居や境内と思しき場面が割合として多い。その他、観音様が上部に描かれた絵馬もある。本坊内は撮影禁止なので写真はないが、若松寺の公式ホームページに掲載された画像があるので、そちらを引用させて頂く。
再び、腰を下ろして鈴木さんにいくつか問うてみた。
「ざっと見
歴史を踏みしめる【ムカサリ絵馬】その四 若松寺
昼食では私にとっての旅の定番メニューであるラーメンを啜り、午後からは天童市にある「若松寺」へと向かう。時刻は正午を過ぎている。事前に若松寺へはメールで連絡をさせて頂いており、一時頃にお話を伺うと約束していた。
さて、東根駅から電車で移動すること凡そ三〇分。天童駅に着いた。天童市は将棋の駒の製造、生産で有名であり、温泉の評判も良い。改札を出ると、「『歓迎』湯のまち天童 あなたの度に、王手」と書か
歴史を踏みしめる【ムカサリ絵馬】その三 黒鳥観音堂
正門に正対する。天井がやや低い木造の仁王門が私を迎え入れてくれた。一礼して潜る。仁王門とはいっても左右に仏像が立って睨みを利かせているわけではない。そこは蛻の殻であり、唯一、不定期で出入りしているかもしれない関係者が、きっと使用しているであろう作業道具が置いてあるだけだった。
境内に戻ると、目の前に御堂が待ち構えている。右手には、先程、下りてきた階段と水子地蔵があるという構図だ。改めて見る御
歴史を踏みしめる【ムカサリ絵馬】その二 黒鳥観音堂
「黒鳥さんねえ。あそこ何にもないですよ」
地域に精通したドライバーさんでもそう思うらしい。ムカサリ絵馬について調べてみると、見学可能な場所はいくつか候補が浮かび上がる。列挙してみよう。まず、これから向かう黒鳥観音堂。そして、天童市の若松寺。「山寺」の愛称で有名な山形市にある立石寺の奥の院。他にもあるが、以上の三箇所が、調べれば見つけやすい場所だろう。
実は、訪問前の五月と六月半ばに、取材が可
【日本酒記 その七】一白水成
前回にご紹介した「農口尚彦研究所」に続いて、年末年始にはもう一本、開栓した酒があった。秋田県の福禄寿酒造様が醸す「一白水成」である。
これまでそれなりの数の日本酒を戴いてきたと自覚しているが、一白水成は私にとって、現時点で一番好きな銘柄である。まず、出逢いから振り返りたい。
私が日本酒を購入するにあたって、選ぶ時の基準は四つある。「名称の響き」、「話題性」、「気になっている地域」、そして「
【日本酒記 その六】農口尚彦研究所
新年一発目の投稿は日本酒記シリーズである。私事であるが、年末年始は数本の日本酒を空けることが恒例となっている。そこでまず今回は、石川県の地酒「農口尚彦研究所」をご紹介したい。
元日に発生した令和六年能登半島地震のせいもあり、私の心は未だ複雑ではあるが、このタイミングで石川県の地酒を戴けたことに感謝しかない。そして地域を応援する意味も込めて、美味しいお酒が存在することを発信できればと思い、ここ
怪異を訪ねる【遠野 早池峯神社】その五 完結編
場所を移動したり、建物から出たりして執拗にタクシー会社に電話を掛けてみる。しかし、繋がらない。さて、どうするべきか・・・。そうだ、先程、受付で少しお話をさせて頂いた女性の係員さん、「ヘルプ!」との思いでその姿を探してみた。すると、校舎の入り口すぐ左手にある事務室にいらっしゃったので、すぐさま声を掛ける。
「すいません。見学させて頂きましたが、懐かしく思えて、楽しかったです。ところで、今、帰りの
怪異を訪ねる【遠野 早池峯神社】その三
四月二十八日。いよいよ座敷わらし祈願祭を見学する為に、私は遠野駅に降り立った。遠野へは実に二年半ぶりの訪問である。
(そういえば、こんなにも高いところにある線路を走って、山に囲まれた景色を見ながら、前もここに来たんだっけ)
そんなことを思いながら、緑一面の山を切り開く線路を、列車がゴトゴトと音を打ち鳴らして進んで行き、徐々に町らしき景色が車窓に浮かび、辿り着いた。
過去の記憶が懐かしく
怪異を訪ねる【遠野 早池峯神社】その二
座敷わらし祈願祭への現地取材と見学への予定が固まった私は、二〇二三年三月上旬、早池峯神社へ電話を掛けた。見学だけではわからなかったり気が付かない点もあるはずだと思い、祭りの前後の日程でお話を伺えないかどうか、取材の依頼の為であった。
早池峯神社には宮司さんや職員の方が常駐しているわけではない。電話を掛けたからといって、応答があるかは掛けてみないとわからない。よって、私は複数回、電話を掛けた。
怪異を訪ねる【遠野 早池峯神社】その一
季節は師走を迎えて寒さは増している。そうかと思えば、また気温が上がったりする日もあり、可笑しな気候で日々を過ごしている。
さて、今年の投稿を振り返る時季になってきたが、成り行きで書いてきたこれまでの記事では、ザシキワラシについての投稿が多くを占めた。ザシキワラシの存在そのものについての考察からはじまり、緑風荘と菅原別館での体験を基に記した記事など、記憶を辿りながらではあったが、我ながら皆さんの
【日本酒記 その五】鳩政宗 八甲田 ばんや にて
前回の日本酒記では、「田酒」についての記録とレビューを記した。今回は同じ青森県の地酒「鳩政宗 八甲田」について振り返りたい。
最初の一杯目の注文でじっくりと向き合えた田酒に比べれば、良い雰囲気でほろ酔いになってから注文した八甲田についての感想は、記録をつけるにはやや情報量が薄いかと思い、日本酒記でご紹介するかどうか躊躇っていた。しかしながら、ラベルの写真をお店の方に撮らせて頂いたので、フォルダ
【日本酒記 その四】田酒 ばんや にて
今回の投稿は、久々の日本酒記シリーズである。先日、怪異を訪ねて青森県に足を運んだ。去年の十月以来の訪問であり、意図せずまたしても同月の訪問となった。
今回の遠出は、あるお寺にお邪魔してお話を伺うことが主な目的であったのだが、そちらでのお話はいずれ報告するときがくるかもしれない。今回はその前日の夜に訪れた居酒屋での日本酒についてのレビューを記したい。
青森県内で私が過去に訪れたことがある場所
怪異を訪ねる【菅原別館】番外編 その後
菅原別館での夢のような時間から自宅へと戻り、また日々の生活がスタートした。次は何処へ行こうか。この世界は不思議で満ちている。構想は膨らむばかりだ。
ザシキワラシが出るとされる旅館では、気に入った宿泊客に付いて帰ることがあるという噂はつきものだ。今回、菅原別館に宿泊後、身の回りで何か怪異が起きないか、注意深くというほどではないが、僅かに期待を込めて生活をしていた。
結論から言うと、宿泊から半