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怪異を訪ねる【菅原別館】番外編 その後

 菅原別館での夢のような時間から自宅へと戻り、また日々の生活がスタートした。次は何処へ行こうか。この世界は不思議で満ちている。構想は膨らむばかりだ。

 ザシキワラシが出るとされる旅館では、気に入った宿泊客に付いて帰ることがあるという噂はつきものだ。今回、菅原別館に宿泊後、身の回りで何か怪異が起きないか、注意深くというほどではないが、僅かに期待を込めて生活をしていた。
 結論から言うと、宿泊から半年後に不思議なご縁を授かった。それは、自宅でオーブを写真に収めたとか、子供の声を聞いたとか気配がするといった類のものではない。振り返ってみて初めて、「そういえば、これって・・・」と因縁を感じただけであり、気付いたのは半年以上たってからだ。
 二〇二一年五月、私は職場で、業務を遂行する上で必要な、ある数字を割り当てられる機会があった。それは二十五番であった。
 この数字に関して、菅原別館シリーズを読んで頂いた読者のなかには、記憶が新しい方もいらっしゃるかもしれない。そうだ。私が宿泊した部屋番号は二十五番の間であった。
 正直なところ、結果として業務上必要になったこの数字に纏わる仕事は、私にとって特に嬉しいようなことではない。代わりがいればとっとと預けたいう気持ちが本音だ。しかし、私の感情は抜きにして、これは今でも業務において課せられた数字であり、まさに私の運命に関わってくる数字となった。今のところ、この数字から離れる様子はない。
 二十五番の間の曰くは、「玉の輿の間」であることは既に過去の記事で紹介した。曰くとは無関係だが、結果として数ある数字のなかから、仕事に纏わる数字が、私が宿泊した部屋の番号と一致することは、確率論を考慮しても低い。

 「偶然の一致」という一言で済まされないような出来事が起こった。そしてそれは二年以上経った今でも、変わることなく私を職場で繋ぎとめている。「あなたはこういうことをすべきなのだ」と、これも与えられた使命と受け止めて、粛々と日々、私は業務に励んでいる。怪異を訪ねる旅はまだまだ続く。

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