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お父さんが白血病になりました。〜ある家族看護の記録

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13歳と10歳の子どもたちを残して、お父さんが急性骨髄性白血病で入院しました。親族の僕が、家族看護に入っての記録集。
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#コラム

夏空クジラ ーー夏休みの思い出からーー

夏空クジラ ーー夏休みの思い出からーー

「理科と社会の夏休みの宿題は、早めにな~」
と、さんざん言っておいたが、一向に動きの見えなかった8月第一週。
僕らの世代には当然あると思っていた、「夏休みの計画」を書くフォーマットは、お姉ちゃんの中学と弟くんの小学校であたかも配られなかったかのように、彼らから僕への報告・連絡・相談は無音だった。

報告・連絡・相談がこないとき。
それは「仕事うまくまわってないぞー」というサインである。

そんな日

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自由研究ーー夏休みの思い出からーー

自由研究ーー夏休みの思い出からーー

今日は、弟くんの自由研究の記録を。

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記憶というのは、アウトプットして「記録」に変えておかないと、すぐに事実からねじ曲がって、はるか遠くへ行ってしまう。
そもそも、脳の記憶のしくみが「物語記憶」であって、事実を体感覚からインプットして、解釈や価値観やそれに伴う感情をつけて保存し、いくたびか咀嚼する中で付帯解釈・価値観・感情を塗り替えていく有機システムだからだ。

--芥川の『藪の中』は

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風が巻く日

風が巻く日

台風の前に病院の洗濯物を引き取りたくて、お盆休日ダイヤの電車とバスを乗り継いだ。
30分に1本のバスを目前で逃がし、時折強くなる雨足を受けるバス停の屋根の下に待つ。
不規則な風が時折止まり、時折巻く。大きな台風が沖で居座っている日。

面会時間の10分前に、面会受付の待ち行列に並ぶ。
休憩テーブル群の隅っこでツナマヨのおにぎりのセロハンをあけていると、隣では亡くなった方の家族が話していた。
警官が

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ああ、夏休み

ああ、夏休み

毎日毎日毎日毎日、親戚の子ども2人にメシを提供し臨時の見舞いに対応している間に、父親が死にまして。

通夜も葬儀も母に任せきりの、死に目にも合わずじまいの、散々な事態になりました。

入院中のパパさんの家から僕の実家は遠いので、戻ってるうちにこっちが急変したら子供2人ではなすすべがない。

軒先を貸して母屋を取られる、ということわざはありますが、他人を助けてる間に自分がドツボる、というのは、どうい

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「男はなんでも喜びますので!」

「男はなんでも喜びますので!」

定期試験前の「部活のない日」に当たる今日、お姉ちゃんが急いで帰ってきた。

テスト勉強があるので、パパさんの見舞いは今日は僕だけが行くのだが……

「微妙だけどこれ、当たりかはずれかわかんないけど」と、

「期間限定ゆず大福」を買って来て、僕に手渡したお姉ちゃん。

「パパは、あんこじゃないといらないとか、うるさくてうざいんだけど」

はいはい。

「父の日のシールをつけてもらえるサービスがあった

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6月になっていた

6月になっていた

1月15日に親族のパパさんが緊急入院して、もう半年。

核家族で、ひとり親で、親たちの介護が同時多発してる世帯って、なにかあったときに立て直すのが、本当に大変です。

今、パパさんの周辺では、パパさんの両親と義両親が全員、がんを抱えながら自宅療養か、腫瘍の手術のあとで施設入所と入退院のくりかえしが頻発する、などの状態になっていて…

もし、パパさんが一命をとりとめなかったら、

3年後の今頃は、ほ

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「子育て部」副部長

「子育て部」副部長

ご存じのとおり、白血病の数度の抗がん剤-輸血治療(”地固め療法”)では、毎回、ガン化した白血球をゼロにするにともない、抵抗力ゼロの状態になる。

そのため、病棟はクリーンルーム(無菌室)滞在、15歳以下は面会できず、飲料水は殺菌密封を開封後1日で飲み切れる量のものにする。
病院の自販機・コンビニより単価の安い水やお茶、コーヒー紅茶やパックジュースを買いまわっておいて、今は週2で運んでいる。

土曜

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限界前のエスプレッソ頼み・苦しい時の神だのみ

限界前のエスプレッソ頼み・苦しい時の神だのみ

ストレスがかかってる時……

寝る。

それ以外に取れる方法は、僕の場合、もう少しある。
紙に状況と感情をうわあーーーっと書きなぐること。
「ええい、こうなりゃやけだ! やっちまえ!」的に、コンビニのカルビ焼肉丼をひたすら食うこと。
散歩。
走る事。
水泳。
座禅にもならない座禅。

あとひとつ、
エスプレッソカップを目の前にして、一息つくこと。

ストレス過剰になった日々の積み重ねを、どこかで。

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ダンボール工作の連休

ダンボール工作の連休

パパさん、元号ウィーク中は自宅療養。5月6日に再び病院へ。
つまり我々一同は、大型連休を自宅で過ごす。

この機会に、弟くんが「ダンボール・ジュースサーバー」を稼働させました。

横倒しに仕込んだペットボトルの横腹に、あらかじめ穴を開けておく。そのジュースタンクを、右側のレバーで半回転させて、横穴を下向きにして、そこからジュースが、落ちる…という。

炭酸飲料で何回か乾杯。

ここで暮らして4ヶ月

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悪いな、そういう仕事のスタイルじゃないんだよ

悪いな、そういう仕事のスタイルじゃないんだよ

「メールの返信が速い人は、仕事ができる人」

と勘違いしたままの輩とは、僕は一緒に何かを積み上げることはできない。

互いにストレスのない情報共有・材料の受け渡しの方法は何か? について、個別の合意が取れていれば、仕事は進む。

だからたとえば、

4つのプロジェクトにアサインされていたとして、

「基本的に議事録だけ見る。見たけど不同意…は『逆さ判子』で意思表示する(意向であって、突っ切ってよし

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むらさきのつつじ

むらさきのつつじ

気密性の高いアパートの一室が、気温27度になった。ちょっとぎょっとした。
むらさきのつつじの色が去ってから、二日ほどした昨日のことだ。

小学生の頃「ヤマツツジ」、と誰かに教わってしまって、自分の中でそこに分類されている紫がある。ホントは、ヤマツツジは赤い花だ。

その紫は、薄く透けたワイン色とでも言おうか。うす紫と薄桃を混ぜた色相だ。この写真はピンク色の濃さが出すぎて現像されている。これよりもう

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丸美屋のりたまの「ひよこチップ」

丸美屋のりたまの「ひよこチップ」

びっくりした~

個包装のふりかけを、入院中のパパさんの食欲が少しでも出るように探してまして。
単純に値段で買ってきたら、すごいの入ってた。

一袋だけ病院荷物から持ち帰り…

子供さんと分けた w