ちひろ|微生物とシンバイオシス

私たちの体の内外、地球上に微生物があふれていることを知りました。 世の中は目に見えるこ…

ちひろ|微生物とシンバイオシス

私たちの体の内外、地球上に微生物があふれていることを知りました。 世の中は目に見えることがすべてではないし、ひとりぼっちでもないということを微生物は教えてくれます。というのを伝える仕事。 シンバイオシス株式会社、微生物事業部の研究員(なりたて)。 毎週火曜10時(と金曜?)更新

マガジン

  • 私たちの一生とマイクロバイオーム

    生まれた瞬間から私たちが塵となるまで、ずっと一緒に生きていくマイクロバイオームたち。 彼らは私たちの一生に、どんなふうに寄り添っているのだろうか? マイクロバイオームは、私たちの体の成長にどんなふうに影響しているのだろう? 子どもたちのために私たちができることはあるのだろうか? 菌たちをもっと身近に感じるマガジン。

  • 研究員の小さなつぶやき

    夢の中でも微生物のことを考えているような毎日ですが、微生物じゃない日常もちゃんと持っています。にんげんだもの。 異分野に首をつっこむのが大好きな研究員のつぶやき。

  • マイクロバイオーム最新論文を紹介するマガジン

    マイクロバイオーム、腸内細菌に関する論文は、この10年で指数関数的に増えています。 私自身すべて追えないのが現状ですが、'gut microbiome' 'FMT'などのキーワードで集めた論文を定期的に紹介します。

  • 腸内細菌おすすめ記事

    筆者がいいなと思った記事を追加しています。

  • 疾患とマイクロバイオーム

    感染症だけではなく、アレルギーや心疾患、精神疾患、腸の病気などさまざまな疾患に微生物たちの働きが関係しています。 え、こんな病気も細菌に関係があるの!?と驚くかもしれません。 「ここ数十年で特に増えた」そんな病気は要注意かも。

記事一覧

固定された記事

このnoteで学べること(微生物初級〜中級)

このnoteは、シンバイオシス株式会社の微生物事業部に所属する「ちひろ」(山本千尋)が運営しています。 「細菌」「ウィルス」などと聞くと、どうしても殺菌したい、消毒…

マイクロバイオームの「老化」を読み解く

老いという現象は、不思議だ。 それは昨日と今日のあいだにはなく、ふとしたときに顔を出す。 食事の嗜好、体力、肌のハリ。 子どもの成人、同窓会の友人の顔、治りにくく…

風邪をひいたあとは、風邪をひく前より体調がいい気がする

今日はひとりごとらしいひとりごとを投稿します。 風邪をひきました。 20代の頃は風邪なんて5年に一度の微熱くらいやったのに、産後めっきり免疫力が弱り、加えて子供(2…

子どもたちのこころの発達には、微生物が欠かせない

「脳腸相関」という言葉が市民権を得てから久しい。 マイクロバイオームの分野では、それは「脳腸内細菌相関」として研究されている。 腸内細菌と脳は、たがいに通信し合…

子どもたちの免疫力は微生物と一緒につくろう

免疫の練習中である子どもたちは、よく風邪をひく。 彼らはただ細菌やウイルスを排除する勉強をしているわけではない。病原菌には対抗しつつも、体の中で一緒に暮らしてい…

栄養失調だから腸内細菌が乱れるのか、その逆なのか。バングラディシュとアフリカの子どもたちの腸から学ぶ。

前回の記事では、抗生物質などによって子どもたちの腸内細菌(マイクロバイオーム)が乱れることで、肥満につながるという話をした。 今回は、抗生物質や栄養失調などが腸…

腐葉土になりたい。 〜生きづらい人は、みんな生物学に癒やされればいい

この世の中は生きづらいという言い方がよくされるけれども、そのなかでも特に生きづらい人たちがいる。 この記事は、そんな人を生物学の世界へ優しく誘うための記事です。…

腸内細菌が乱れると子どもは太るのか?  抗生物質と肥満の関係

私たちは、毎日ものを食べる。 肉、魚、野菜、ご飯などの穀物、それからいくばくかのおやつ。 毎日同じものだけを食べる人もいるかもしれないし、一日たりともメニューのか…

no.8 腸内細菌、FMT研究の最新論文紹介

今回はFMT(糞便微生物移植)の記事が多めです。 個人的には、最後の養豚場での薬剤耐性遺伝子の研究が気になりました。 ゲノム解析技術が手軽に使えるようになり、目に見…

どの国に生まれるかでマイクロバイオームはこんなに変わる

どの国に生まれるかで人生が変わる。 良くも悪くも、そのとおりだろう。 一方で、どの国に生まれても変わらない事実もある。 細胞の数、時間の流れ、両親の存在。 私たち…

用語解説の記事を更新しました。「この言葉も載せて〜」というリクエストがあればお気軽に。
https://note.com/symbiosis17/n/nd4cb355a16de

がんとFMT(糞便微生物移植)の研究まとめ

以前の記事で「がんと腸内細菌」をざっくりまとめたけれど(がんにもいろいろあるのはちょいと置いておいて)、 腸内細菌ががんに関わっているならば、腸内細菌をコントロ…

no.7 マイクロバイオーム研究の最新論文紹介(微生物、腸内細菌の最前線)

今回は「マイクロバイオームを浮き彫りにする」という特集がイチオシです。 さくっと読めるものでは到底ないですが、さまざまな論文が掲載されていて、本を一冊以上読むに…

【2024年最新】 腸内細菌と「がん」の関係を論文に基づいてまとめてみました。

腸内細菌とがんは、いずれもヒトの免疫システムに相互に関わっているという点などから、関連性が指摘されている。(1)(2) 腸内細菌叢のバランスの乱れががんの発生や進行に…

猫は絶対に実験に使うな 〜科学の限界と芸術の創造力

科学者には、運動好きと芸術好きが多い。 これは別に統計に基づくわけでもなんでもないことだけれど、すくなくとも消防士や弁護士、人事担当者、農家、株式仲買人なんかに…

ぜんぶ読んで選んだ、(入門〜上級)微生物・腸内細菌をもっと学ぶためのおすすめ一般書12選

何かを学ぶとき、どんなふうに学びはじめますか? ネット検索、スクールや習い事に通う、動画を見る、本を読む。 私は、だんぜん本を読む派です。 まずはネットでおおま…

このnoteで学べること(微生物初級〜中級)

このnoteで学べること(微生物初級〜中級)

このnoteは、シンバイオシス株式会社の微生物事業部に所属する「ちひろ」(山本千尋)が運営しています。

「細菌」「ウィルス」などと聞くと、どうしても殺菌したい、消毒したいという思いに駆られる方も多いかもしれません。

細菌をはじめとした微生物がいない世界をすこし想像してみましょう。

納豆やヨーグルト、ワイン、日本酒、パンがなくなります。
地球が動植物の死骸だらけになります。
風邪をひいてお母さ

もっとみる
マイクロバイオームの「老化」を読み解く

マイクロバイオームの「老化」を読み解く

老いという現象は、不思議だ。
それは昨日と今日のあいだにはなく、ふとしたときに顔を出す。

食事の嗜好、体力、肌のハリ。
子どもの成人、同窓会の友人の顔、治りにくくなった傷。
夢や野望を持つこと。感情の揺れ幅。

私たちは、肉体的にも精神的にも老いていく。

老いは、ある人にとっては怖いものかもしれない。
またある人にとっては、救いかもしれない。
年を重ねるプロセスを楽しむ人もいるだろう。

秦の

もっとみる
風邪をひいたあとは、風邪をひく前より体調がいい気がする

風邪をひいたあとは、風邪をひく前より体調がいい気がする

今日はひとりごとらしいひとりごとを投稿します。

風邪をひきました。

20代の頃は風邪なんて5年に一度の微熱くらいやったのに、産後めっきり免疫力が弱り、加えて子供(2歳)が保育所からもらってくる風邪を2回に1回はもらいます。

今回もGW終盤の夫発熱に始まり、子供→私の順に発熱し、その後一週間経ってもまだ鼻水がズルズルです。
熱が引いた後、微熱が続いたり鼻のど症状がだらだら続いて治りが遅くなった

もっとみる
子どもたちのこころの発達には、微生物が欠かせない

子どもたちのこころの発達には、微生物が欠かせない

「脳腸相関」という言葉が市民権を得てから久しい。

マイクロバイオームの分野では、それは「脳腸内細菌相関」として研究されている。
腸内細菌と脳は、たがいに通信し合っているらしい。

そして幼少期の通信は、子どもたちの脳やこころの発達に大きく影響することがわかってきた。

※本記事は「腸内細菌は何歳までに決まる? 赤ちゃんから子どもへの成長とともに歩む菌たちのこと」シリーズの一部です。
別のシリーズ

もっとみる
子どもたちの免疫力は微生物と一緒につくろう

子どもたちの免疫力は微生物と一緒につくろう

免疫の練習中である子どもたちは、よく風邪をひく。
彼らはただ細菌やウイルスを排除する勉強をしているわけではない。病原菌には対抗しつつも、体の中で一緒に暮らしていく細菌たちを選ばなくてはならないのだ。

細菌たちをはじめとしたマイクロバイオームが、子どもたちの免疫形成の一端を担っていること。
そしてその両者は、相互に作用しながら共生への道を探っていること。

これらの事実を並べられて「ふんふん、なる

もっとみる
栄養失調だから腸内細菌が乱れるのか、その逆なのか。バングラディシュとアフリカの子どもたちの腸から学ぶ。

栄養失調だから腸内細菌が乱れるのか、その逆なのか。バングラディシュとアフリカの子どもたちの腸から学ぶ。

前回の記事では、抗生物質などによって子どもたちの腸内細菌(マイクロバイオーム)が乱れることで、肥満につながるという話をした。

今回は、抗生物質や栄養失調などが腸内細菌に影響を与えることで、子どもが低体重になってしまう可能性について見ていきたい。

腸内細菌の乱れが、肥満と低体重という正反対の結果になるのは、どうしてなのだろう?

※本記事は「腸内細菌は何歳までに決まる? 赤ちゃんから子どもへの成

もっとみる
腐葉土になりたい。 〜生きづらい人は、みんな生物学に癒やされればいい

腐葉土になりたい。 〜生きづらい人は、みんな生物学に癒やされればいい

この世の中は生きづらいという言い方がよくされるけれども、そのなかでも特に生きづらい人たちがいる。

この記事は、そんな人を生物学の世界へ優しく誘うための記事です。

強いて言うなら、大学の「生物哲学研(ちょっと微生物寄り)」の新歓みたいなノリです。特に新しい知識は得られないのでご了承ください。

みんなみたいに「ふつうに」体調のいい日がデフォルトやったらいいのにな。
「ふつうに」オフィスとかで働け

もっとみる
腸内細菌が乱れると子どもは太るのか?  抗生物質と肥満の関係

腸内細菌が乱れると子どもは太るのか?  抗生物質と肥満の関係

私たちは、毎日ものを食べる。
肉、魚、野菜、ご飯などの穀物、それからいくばくかのおやつ。
毎日同じものだけを食べる人もいるかもしれないし、一日たりともメニューのかぶらない人生を送ってきた人もいるかもしれない。

それでも、私たちの体はブロッコリーを食べたからといって緑になるわけでもなく、もも肉を食べたからといって太ももにだけ肉がつくわけでもない。

それは、まったく別物に見える食べ物が、消化管のお

もっとみる
no.8 腸内細菌、FMT研究の最新論文紹介

no.8 腸内細菌、FMT研究の最新論文紹介

今回はFMT(糞便微生物移植)の記事が多めです。
個人的には、最後の養豚場での薬剤耐性遺伝子の研究が気になりました。

ゲノム解析技術が手軽に使えるようになり、目に見えないマイクロバイオーム、腸内細菌に関する論文は、この10年あまりで指数関数的に増えています。

ここでは、PubMedで'gut microbiome' 'FMT'などのキーワードで集めた論文を定期的に紹介します。

新しい論文はま

もっとみる
どの国に生まれるかでマイクロバイオームはこんなに変わる

どの国に生まれるかでマイクロバイオームはこんなに変わる

どの国に生まれるかで人生が変わる。
良くも悪くも、そのとおりだろう。

一方で、どの国に生まれても変わらない事実もある。
細胞の数、時間の流れ、両親の存在。

私たちと共生するマイクロバイオームは、どの国に生まれるかで変わるのだろうか?
答えは、イエスだ。

ただし、裕福で平和な国に生まれることとマイクロバイオームに恵まれることは、必ずしも一致しないかもしれない。

ここでは、国ごとに特徴的な子ど

もっとみる

用語解説の記事を更新しました。「この言葉も載せて〜」というリクエストがあればお気軽に。
https://note.com/symbiosis17/n/nd4cb355a16de

がんとFMT(糞便微生物移植)の研究まとめ

がんとFMT(糞便微生物移植)の研究まとめ

以前の記事で「がんと腸内細菌」をざっくりまとめたけれど(がんにもいろいろあるのはちょいと置いておいて)、
腸内細菌ががんに関わっているならば、腸内細菌をコントロールすることで治療を試みたいと思うのが人の常というものだ。

FMTという治療法についての詳しい解説は別の機会に譲るとして、この方法はまだ各疾患に対する治験が行われている段階にある。
(参考:腸内フローラ移植臨床研究会)

今回の記事では、

もっとみる
no.7 マイクロバイオーム研究の最新論文紹介(微生物、腸内細菌の最前線)

no.7 マイクロバイオーム研究の最新論文紹介(微生物、腸内細菌の最前線)

今回は「マイクロバイオームを浮き彫りにする」という特集がイチオシです。
さくっと読めるものでは到底ないですが、さまざまな論文が掲載されていて、本を一冊以上読むに匹敵するボリューム。
ほかに個人的に面白かったのが、FMTに関する論文。(★をつけています。)

ゲノム解析技術が手軽に使えるようになり、目に見えないマイクロバイオーム、腸内細菌に関する論文は、この10年あまりで指数関数的に増えています。

もっとみる
【2024年最新】 腸内細菌と「がん」の関係を論文に基づいてまとめてみました。

【2024年最新】 腸内細菌と「がん」の関係を論文に基づいてまとめてみました。

腸内細菌とがんは、いずれもヒトの免疫システムに相互に関わっているという点などから、関連性が指摘されている。(1)(2)

腸内細菌叢のバランスの乱れががんの発生や進行につながるのではないかというところを出発点として、特定の腸内細菌が鍵を握っているかもしれないという研究もある。

腸内細菌は、がんを治療したい患者さんにとって敵なのだろうか。それとも味方なのだろうか。

腸内細菌とがんという膨大なテー

もっとみる
猫は絶対に実験に使うな 〜科学の限界と芸術の創造力

猫は絶対に実験に使うな 〜科学の限界と芸術の創造力

科学者には、運動好きと芸術好きが多い。

これは別に統計に基づくわけでもなんでもないことだけれど、すくなくとも消防士や弁護士、人事担当者、農家、株式仲買人なんかに比べて著しく少ないという印象はない。

彼らは個人的趣味の範囲で楽しんでいるということももちろんあるだろうけれど、運動や芸術については、本業にも活きるようなメリットが多いようなのだ。
何しろ、科学者というものは「プライベートも本業に活かせ

もっとみる
ぜんぶ読んで選んだ、(入門〜上級)微生物・腸内細菌をもっと学ぶためのおすすめ一般書12選

ぜんぶ読んで選んだ、(入門〜上級)微生物・腸内細菌をもっと学ぶためのおすすめ一般書12選

何かを学ぶとき、どんなふうに学びはじめますか?

ネット検索、スクールや習い事に通う、動画を見る、本を読む。

私は、だんぜん本を読む派です。
まずはネットでおおまかなあたりをつけて、本をしっかり読みます。

ネット検索のいいところは、短時間で必要な情報を(その信頼性はともかく)さくっと得られるところ。
本は、体系的にしっかり学べます。
どういうわけか、本で学んだほうが忘れにくい気がします。

もっとみる