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#愛

死んだふり 《詩》

死んだふり 《詩》

「死んだふり」

必要悪が裏の正解領域で

息を殺して生き続ける

人の形をした程度の分際が虹を欲する

辿り着けない朝の向こうに
見えた汚れた海

大人の顔をした愛想が

一方的な暴力を振う

生まれてきた喜びや
生きて行く上での業だとか

慢心と理想論 

遠いと思い込んでいた天国と地獄

誰も悪くないのなら 
何故 僕等は泣いている

夢の奥底 今は黙って死んだふり

傷口を固めた嘘が 

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白い月の光 《詩》

白い月の光 《詩》

「白い月の光」

夜明け前の白い月に 

僕達ふたりの

それぞれが抱える
事柄の差異が映し出される

その白い月は夜空の端っこで

暗示的な光を微かに放つ

僕は迷いの中で朝を迎える

其れは圧倒的な混乱とは違う 

確信のある答えが
欲しかっただけなんだ

彼女は時計を見つめている

その針は宿命的な時を示す

僕は彼女の背中をそっと
指先で撫で

君は静かにうなずいた

所有し所有される事の

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君に贈る詩 《詩》

君に贈る詩 《詩》

「君に贈る詩」

君は詩なんか読まない

僕の書いた文字は透き通っていて

君の瞳には映らない

窓からは低くたれこめた
暗い雲が見えた

そうかもしれない 

僕は口に出してそう言った

僕がペンを持った瞬間に
言葉は消えて無くなってしまう

詩を読む様に独り言を呟く

君は詩なんか読まない

静かに雨が降りはじめた

Photo : Seiji Arita

琥珀のグラス 《詩》

琥珀のグラス 《詩》

「琥珀のグラス」

物事の終わりは 
いつだってあっけないものだ

世界は一定の原理に従い

然るべき方向に流れて行く

僕は夢の中の

彼奴の事を探し求めている

夜の闇は当たり前だけど暗いんだ

彼の歌う詩は 

ひとりで聴くには悲しみが強すぎる

危うさが勝ち過ぎている

琥珀のグラスの中に想い出を留めた

僕が大切にしていたものは 
彼の記憶だと気が付いた

妙にくっきりとした形の月と風の

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透明な風 《詩》

透明な風 《詩》

「透明な風」

必要な言葉は何故だかいつも

遅れて後からやって来る

あの日 あの時

僕等に
欠けているものなんて何ひとつ無い

そう君に伝えたかった

きっと君は微笑んでくれただろう

深い緑と青い空を持つ

夏だけが其処にあった

僕等はもう二度と

この場所に来る事は無い

そして君に逢う事も

定められた場所に
向かうそれぞれの道を歩み続ける

僕は一度だけ振り返る

其処には形を持た

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夜を忘れた花 《詩》

夜を忘れた花 《詩》

「夜を忘れた花」

儚い程の細い血脈にも

生きた赤い血が流れている

何処までも繊細で美しい
君の最後の声が空に消える

熟考は深い沈黙を必要とし

夜を忘れた花の傍には

眠りと覚醒 

現実と非現実の夢が横たわる

風や水が流れる様な陰影が

僅かに不揃いな図形に映り込む

君は居なくなったけど 
君はいつでも僕の傍に居る

其処にある無言の想いが

言葉にならない声になる

喪失と喪失 

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共犯者 春を呼べ 《詩》

共犯者 春を呼べ 《詩》

深い混乱の中に
均等なふたつの光の存在を探した

失われて行く時間の感覚 

ある種の衝動が

頭上からずれ堕ちて来る

僕は夢と想像の中に言葉を探す

其れは誰か特定の人に
向けられた言葉では無い

其処に見える憂鬱な風に包まれた

名前を持たない
消えかかった田園風景

其の僕の中にある

無名の場所を埋める為の言葉だ

疵痕も残さず切り裂いた刃 

大量の現実の血が
流されたはずだった

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黄色い月 《詩》

黄色い月 《詩》

「黄色い月」

春が終わりに近づいた夜 

空気は漠然とした湿り気を帯び

薄靄に包まれた
黄色い月がふたりを見ていた

僕の隣りで不規則に美しく揺れる
君のスカートの裾 

僕は自分を失ってしまうほど

激しく君を求めていた

はぐらかす様に微笑む君の唇に

静かに指先で触れた

少しの間の沈黙 

其れは彼女の同意を意味している

全てが再び現実の位相に服すまで

彼女の長い睫毛が

僕の心の

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車椅子のロージー 《詩》

車椅子のロージー 《詩》

「車椅子のロージー」

少しの乱れも無く調和した共同体 

そんな夢の中にだけ花は咲く

誰かが誇らしい気にそう言った

無音の雷鳴と目に見えぬ雷光 

其れが脳裏に焼き付いている

僕と言う固有のただひとつの人格が

名前を持たぬ混沌 

未明の暗闇の中で
かろうじて息をしている

抽象的な命題を空に描き 

頭は現実とは別の場所にある

恵まれてるとか 恵まれて無いとか 

魅力的な微笑みを浮

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銀河鉄道を待つ夜 《詩》

銀河鉄道を待つ夜 《詩》

「銀河鉄道を待つ夜」

雲が低く流れ

山肌を静かに湿らせている

細かな緊張をはらんだ空気が

其処に渦巻く

星降る夜に 
ひとりの少女が夢を見た

矛盾と悲しみに満ちた夢を見た

其の悲しみの中に美しさと静けさを
読み取る事が出来るのは 

きっと

少女と同じ境遇を持つ人に限られる

長期的に服用している薬が

時間が経てば経つほど  

だんだんと効かなくなって来る

乱雑な
現実的要素

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水平線 《詩》

水平線 《詩》

「水平線」

果てしない偶然性が積み重なり
今が形成される

理論や整合的な説明は出来ない

全ては其の偶然性に支配されている

其れを必然と呼ぶのかもしれない

其処には
言葉に出来る何かは存在しない

言葉に出来ないものの中に
潜む自己規定

幾つかの街が通り過ぎ 

鏡の中にお前を見る

深い夜と静けさが永遠に続き

時を刻み命と死が交差する

誰にも
解き明かせない唯一が此処にある

俺と

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小さな炎 《詩》

小さな炎 《詩》

「小さな炎」

僕の足元に

寡黙な陽だまりを作り出す太陽

時間は更に緩やかに流れる

君は猫の様に

暗い穴を覗き込んでいる

其の先にあるものは

君の瞳にしか映らない

その暗い穴には

深い暗示が隠されていた

「今日死んでしまえば 明日は死なずにすむ」

君はそう言葉にして囁く

其処はいつまでも

君が居る場所じゃない

何度も君にそう呼び掛ける

僕等はきっと

何処かに行く事が出

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不動の月 《詩》

不動の月 《詩》

「不動の月」

花一輪 

在りし日の君 

香る春

静かに添えた手のひら

暗黒の雲に覆われた夜空にさえ

音も無く浮かぶ不動の月

あやかしの時は遠去かり

あの日 夢見たふたりの旅

其処に咲いていた小さな花は

眠る事無く咲き続ける

夜更けに恋をし
君の名を呼ぶ

いつからか 

君の言葉の中に愛を探してる

月下の詩人と盲目の犬 《詩》

月下の詩人と盲目の犬 《詩》

「月下の詩人と盲目の犬」

大きな美質と

大きな欠陥が背中合わせに存在する

其処には見え透いた理論は無い

疑問を背負ったまま

僕等は今を歩き続けている

一匹の盲目の犬

何かに損なわれる事が無い様に

僕は其の犬を抱きしめていた

その失われた瞳を通して
彼はこの世界に現れる

そして彼の言葉が

僕の意識の領域に着地する

時間の歩みすら止まる気がした

ソメイヨシノが香る時

嘘しか

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