マガジンのカバー画像

散文詩

186
運営しているクリエイター

#僕等

スカイツリーとウクレレ 《詩》

スカイツリーとウクレレ 《詩》

「スカイツリーとウクレレ」

其の機能は全て 

論理的で倫理的であり

其れに伴う取り扱い説明書と

保証書が添付されている

スカイツリーはいつに無く

高くそびえ立ち

今もなお天高く 

伸び続けている様に見えた

救世主教会の尖塔 

頭頂部には其れが有り

地上の僕等を見下ろしている

街の路地裏は砂利で出来ており 

草すら生えない荒地だった

其処には 
無能、無知、馬鹿や偽善は

もっとみる
悪魔と青く深い海のあいだで 《詩》

悪魔と青く深い海のあいだで 《詩》

「悪魔と青く深い海のあいだで」

その水は何処までも
透明で純粋だったんだ

それを知る者は誰も居ない

灯りすらない夜の闇 

誰かの足音

くだらない
辻褄合わせに僕等は泣いている

銃声の音が聴こえますか

また大切な何かが失われて行く

知らぬ間に

目隠しをしていた愛の調べ

不釣り合いな恋に

傷付くのが怖かった

水平線の向こうには
花は咲いていますか

僕等の話を聞いてください

もっとみる
道化のグラス 《詩》

道化のグラス 《詩》

「道化のグラス」

僕は其の限り無く純粋な水を

道化と言う名のグラスに注ぐ

華麗な結晶が輝くとか

輝かないとか

僕等は瓦礫の山の
赤茶けた地面にトンネルを掘り

銀行を襲う計画なんだ

僕は才能の枯れ尽きてしまった

作曲家と写真家と絵描きを誘った

才能の枯れ尽きた
詩書きなら此処に居る 

そう言って笑った

失われた音符と失われたフィルム

失われた絵の具と失われた言葉

それでも其

もっとみる
誰よりも 《詩》

誰よりも 《詩》

「誰よりも」

街路樹の並木が遊歩道の路面に

くっきりとした涼しい影を落とす

なんだか初夏に似た感じ

誰かがギターを弾いて
歌を歌っている

僕等は海を見ていた 

特に理由がある訳じゃ無い

もしもあるとすれば 

水と波音と其処に吹く風が

僕等にとっては
大切な意味を持っている 

海は太陽の光を受け色や波の形や

満ち引きの速さを変えて行く

鮮明であり曖昧であり  

その輪郭の色

もっとみる
君を捨てる 《詩》

君を捨てる 《詩》

「君を捨てる」

君を捨てる 

其の傷跡は誰にも見えない

深さや形を変えてなおも
消える事無く記憶の中に生きている

僕は独り君との足跡を辿る

悲しみ 

動揺 

葛藤を含む象徴的な暗号

誰にもわからない様に詩的に変換し
吐露する事

それが唯一の
逃げ場である事を僕は知っていた

斬殺 斬首された風の無い深淵

其処に残された血を

跡形も無く流し去る激しい雨

僕は捨てられ 僕は君を

もっとみる
破滅の淵 《詩》

破滅の淵 《詩》

「破滅の淵」

僕等は先を急いではいない 

時間がかかるなら 

それでも構わない

空をゆっくりと流れる雲は

広い空の中に
自分の居場所を定めている

何処か遠くで

誰かが誰かを呼んでいる

僕等は世界でただひとつの

完結した場所に辿り着く

何処までも孤立し誰も入れない空間

其処には差し出すものも
求めるものも無い

沈黙のうちに過ぎる時 

だけど孤独に染まる事は無い

彼女は僕の

もっとみる
方舟と幸せの鐘 《詩》

方舟と幸せの鐘 《詩》

「方舟と幸せの鐘」

心を失くした

深い森の中を彷徨っていた

全ては無音のうちに始まり

邪悪な野獣と

純粋な精霊の吐息を聞いた

不確かな人生の灯りが揺れる

暗い終末の気配を含んだ
湿り気を帯びた風

彼女は方舟…そう一言だけ呟いた

特別な生命の匂いを彼女に感じた

僕等に歌う歌があるとしたなら

僕は漠然とそんな事を考えていた

僕の純粋な仮説が

保留の無い激しい愛を呼ぶ

彼女に

もっとみる
思考犯罪 《詩》

思考犯罪 《詩》

「思考犯罪」

世界はこの僕に伝えるべき言葉を

何ひとつ持ってはいない

仕組んだ謀略の行方 

謎に満ちた怪文書

霞の様な無気力な世界は

僕とは無縁な場所で
時を刻み続けている

パンドラの箱は既に開けられいる

僕は世界に不足している

パズルピースを

ひとつひとつ探し集めて手に入れた

終わる事の無いゲームは続いている

赤いランダムスターに祈りを捧げた

君の髪がキリストより長くな

もっとみる
魔女狩りの詩 《詩》

魔女狩りの詩 《詩》

「魔女狩りの詩」

生きる事を目的として戦い続ける 

目には見えない

圧倒的な力を持つものが襲う

其れに相対する

救いに似た光を求めた

あらゆるものを  

ただ黙々と受け入れ

其処にあるものを

呑み込み全てを赦した

其の優しさに身を委ねた

僕等の時間が
それぞれの経路を辿り流れる

恐怖や希望

絶望の中に揺らぐ炎を見た

だが君は心の奥底で死を望んでいる

その流れがひとつに

もっとみる
流れる水と小さな星 《詩》

流れる水と小さな星 《詩》

「流れる水と小さな星」

僕の目の前にある時間は

静かな足取りで通り過ぎて行った

其処には僕の意思とは関わりなく

其れ自身の原理に従い

流れる水の様に静かに

彼女は僕の知らない場所で
眠っていた

其処は時間と空間によって 

行動の自由を制限される事の
無い場所

夢の無い深い眠りの中で

僕達には行かなくてはならない所が

やらなくてはならない事がある 

その事をはっきりと知る

もっとみる
小さな鍵 《詩》

小さな鍵 《詩》

「小さな鍵」

君が自由である事 

それが僕の求める

ただひとつの事だった 

君の中にひっそりと隠された
秘密の小さな鍵

其の秘密の持つ
孤独さを浮かべた君の微笑みを

僕は見逃さなかった

色彩が奪われた訳じゃ無い

白も黒も同じ色には変わりない

それにやっと気が付いたんだ

僕等はお互いの欠片を交換し合い 

其の欠片を大切に胸にしまった 

誰にも気付かれない様に
 

僕等の記憶

もっとみる
もう一度 《詩》

もう一度 《詩》

「もう一度」

不安定で不器用な
感情の塊が骨と肉を纏い

目に見える形を作り出している

その形を持つものから発する

熱と息づかいを

僕は首筋に感じとっていた

抱いてくれ…

そう言い出したのは

僕の方でも彼女からでも無かった

ただ必要だったから

僕等は抱きしめ合って
長い夜を超えた 

世の中の

常識や概念が作る心理を消し去り

ゆったりと川の流れに身を任せた

もう一度 

もっとみる
侵蝕 《詩》

侵蝕 《詩》

「侵蝕」

僕はずっと昔に聞いた

雨音を思い出している

いつも
雨が降っている匂いがしていた

僕等の頭上にはただ空がある

地下鉄を乗り換えて
辿り着いた駅から

ビルの地下街を抜けて街に出た

其処に転がる季節を燃やした

僕等の意識の回路に 

埋め込まれた地図に従い

死の海に向かう

君がひとつになりたいと願った 
あの海に

柱時計のネジをまく片目の老人

時はまだ止まらない 

もっとみる
灰色の雲 《詩》

灰色の雲 《詩》

「灰色の雲」

僕等に吹き付ける冬の風は

強い力と価値基準を持っていた

それは僕等の記憶の裏側に隠した

混乱を巧妙に曝け出させる

価値基準を
満たした人の波が押し寄せて来る

僕等は溺れる様に彷徨っていた

曇り空に浮かぶ灰色の雲を
外部からの強い力が引きちぎる

奴等が求める完璧を否定した

僕等は奴等の言う完璧に

何の意味も見出せなかったからだ

勝ち負けに拘って来たのは

負ける事

もっとみる