マガジンのカバー画像

散文詩

186
運営しているクリエイター

#大切

誰よりも 《詩》

誰よりも 《詩》

「誰よりも」

街路樹の並木が遊歩道の路面に

くっきりとした涼しい影を落とす

なんだか初夏に似た感じ

誰かがギターを弾いて
歌を歌っている

僕等は海を見ていた 

特に理由がある訳じゃ無い

もしもあるとすれば 

水と波音と其処に吹く風が

僕等にとっては
大切な意味を持っている 

海は太陽の光を受け色や波の形や

満ち引きの速さを変えて行く

鮮明であり曖昧であり  

その輪郭の色

もっとみる
魔女狩りの詩 《詩》

魔女狩りの詩 《詩》

「魔女狩りの詩」

生きる事を目的として戦い続ける 

目には見えない

圧倒的な力を持つものが襲う

其れに相対する

救いに似た光を求めた

あらゆるものを  

ただ黙々と受け入れ

其処にあるものを

呑み込み全てを赦した

其の優しさに身を委ねた

僕等の時間が
それぞれの経路を辿り流れる

恐怖や希望

絶望の中に揺らぐ炎を見た

だが君は心の奥底で死を望んでいる

その流れがひとつに

もっとみる
流れる水と小さな星 《詩》

流れる水と小さな星 《詩》

「流れる水と小さな星」

僕の目の前にある時間は

静かな足取りで通り過ぎて行った

其処には僕の意思とは関わりなく

其れ自身の原理に従い

流れる水の様に静かに

彼女は僕の知らない場所で
眠っていた

其処は時間と空間によって 

行動の自由を制限される事の
無い場所

夢の無い深い眠りの中で

僕達には行かなくてはならない所が

やらなくてはならない事がある 

その事をはっきりと知る

もっとみる
左利きの彼女 《詩》

左利きの彼女 《詩》

「左利きの彼女」

濃密な空気の塊に雨の予感がした

もう時間が無い 

僕は高く茂った 

緑の草を掻き分けて  

綺麗な湖へと向かう 

野生の花の匂いと
幻想的なオルガンの音

ある時点で僕の感覚が

内圧と外圧に押し潰され 

其の接地面にあったはずの感情が

崩れ始め痛みと喜びを失った

綺麗な湖の辺りには
大きな木があって

その下に白いベンチがある

其処に君が居る 

その事だけ

もっとみる
小さな鍵 《詩》

小さな鍵 《詩》

「小さな鍵」

君が自由である事 

それが僕の求める

ただひとつの事だった 

君の中にひっそりと隠された
秘密の小さな鍵

其の秘密の持つ
孤独さを浮かべた君の微笑みを

僕は見逃さなかった

色彩が奪われた訳じゃ無い

白も黒も同じ色には変わりない

それにやっと気が付いたんだ

僕等はお互いの欠片を交換し合い 

其の欠片を大切に胸にしまった 

誰にも気付かれない様に
 

僕等の記憶

もっとみる
雨音 《詩》

雨音 《詩》

「雨音」

僕は彼女と交わした

話しの断片を思い出していた

いつの間にか天候は崩れて空は

湿気を含んだ重い雲に覆われていた

僕は傘を持っていない

長く降り続きそうな雨 

ネクタイを緩めた

彼女は不思議な事に
雨の夜にやって来る

もう逢えないかと思ってたよ 

そう言った僕に

貴方は私に逢う度に

同じ事を言うのね 

彼女はそう言って微笑んだ

そして唇を噛んでまた少し笑った

もっとみる
残された街 《詩》

残された街 《詩》

「残された街」

壁に焼き付けられた影が

腐敗と崩壊と失望を映し出していた

嘘だって良かったんだ 

お前と逢える口実を
探していただけなんだ

記憶は 

ゆっくりと時間をかけて

薄れ霞んで消えてゆく

其処に俺達が属している事は
静かに降り頻る雨が知っている

そして時が過ぎ去り

後には

街だけが残され今も生きている

幾つもの戸惑いと

頬にあるハスった傷

失くせないもの ただひ

もっとみる
Yes Sir 《詩》

Yes Sir 《詩》

「Yes Sir」

目の前にある現実を離れ夢想に耽る

其れは僕にとっても君にとっても

別の世界に通じる秘密の扉だった

その扉を開くのは自分自身の想像力

上手く強く想像する事が出来れば

その扉は開き

現実から遠ざかる事が出来る

其れが生きて行く為に
欠かせない必要な事なの

そう彼女は僕に微笑みながら囁いた

僕は彼女の瞳に

自分自身の反映を見る事が出来た

時には傲慢で身勝手で

もっとみる
もう一度 《詩》

もう一度 《詩》

「もう一度」

不安定で不器用な
感情の塊が骨と肉を纏い

目に見える形を作り出している

その形を持つものから発する

熱と息づかいを

僕は首筋に感じとっていた

抱いてくれ…

そう言い出したのは

僕の方でも彼女からでも無かった

ただ必要だったから

僕等は抱きしめ合って
長い夜を超えた 

世の中の

常識や概念が作る心理を消し去り

ゆったりと川の流れに身を任せた

もう一度 

もっとみる
オールドファッション 《詩》

オールドファッション 《詩》

「オールドファッション」

発する事の出来無い言葉 

文字にする事の無い想い

それはもはや
文字では無い想いでも無い

流れる水が傾斜を降る

決まってそれは
最短距離の道を行く 

時には自らその道を創り出しながら

君はナイロンの光沢で包まれた脚を
何度か組み替えていた

僕は尖ったピンヒールの先を見てた

彼女はいつも自分が

1番綺麗に映る鏡を探していた

僕は特に何も集めてはいないよ

もっとみる
ロマンス 《詩》

ロマンス 《詩》

「ロマンス」

僕は鏡を見つめていた 

其処には

何も映し出されてはいない

空白があるだけだった

感覚が麻痺している訳でもない

混乱や戸惑いもなく 

今を成立させる

基準や理論を探してた

自分自身が捉えた感覚を
適切に言葉に置き換える

その事だけに注力していた

それが僕の証を残す事が出来る

唯一の方法だったからだ

不均一で不可解な
空白と短い語彙で綴られた言葉

形作られた

もっとみる
消えない星 《詩》

消えない星 《詩》

「消えない星」

胸の奥で世界がまわる

君の呼ぶ声が聞こえた

街の片隅  
海を超え空を超え

君が振り向いた時 
全てが始まった

手を繋いで魔法がかかった

出会った日から 心の中に

消えない様に 消さない様に

夜の窓辺に虹色の時を
暗闇の夜空に消えない星を

寄せては返す波の様に

ずっと ずっと 

僕だけに出来る事 

いつも君を見ているよ

夢色に染まる時間 
君色に染まる夜 

もっとみる
ロメオとジュリエット 《詩》

ロメオとジュリエット 《詩》

「ロメオとジュリエット」

知らない素振り 

本当は自分が1番良く知ってるよ

見ないふり 聞かないふり

いつか そんなの壊れてしまうから

今日 誰と会ったの 
何を話したの

僕には大切な事なんだけど

君には大切な事でも無いみたい

都会仕掛けの時間の谷間

ウォッカ垂らしたテーブルクロス

マリンブルーの海を切り裂くナイフ

狂いそうな程 
眩しい太陽の輝き

ロメオとジュリエットとか

もっとみる
君の夢 《詩》

君の夢 《詩》

「君の夢」

眠ってる君の顔をただ見つめてた

時計の針 
秒針の音小さく聞こえてる

いつだって
君の傍に居たいと思うけど

現実には時間も無くて話も出来ない

それでも君は変わらず僕の傍に居て 

僕はそんな君を愛おしく感じてる

言葉にすれば全て 
安っぽくなってしまうから

言葉の代わりに
君の頬に小さなキスをした

寝返りをうつ君の姿 
少し笑った顔

何の夢を見ているんだろう
知りたく

もっとみる