百舌

様々の人生を経て、現在では離島に移住してのひとり暮らし。 それでも毎日の糧に感謝して楽…

百舌

様々の人生を経て、現在では離島に移住してのひとり暮らし。 それでも毎日の糧に感謝して楽しんでおります。 教え子に手を引かれて、再び執筆することに致しました。 楽しんで頂けると幸いです。

マガジン

  • 離婚式

    離婚式という社会通念が生まれて久しい。 両家がきっぱりと縁を分つために。 その縁を切る範囲は、現代では広すぎるので。 社会のモラルとして、結婚したら離婚保険に入るのは常識になってる。 なぜなら離婚事故を起こすリスクがあるのだ。

  • 人魚の涙

    海流に浮かぶ夫婦諸島。雄賀島と雌賀島を主島として幾つもの無人島や岩礁がある。その深い海底には人魚が棲むという伝説がある。しかし私にはそれは伝説ではない。 水底で見上げたあの人魚の姿を忘れたことはない。

  • 恋愛掌話

    ふと気晴らしに恋愛小説を書いています。

  • COLD BREW

    都会の一角にある純喫茶。先代からの珈琲の味と香りを頑なに守り続ける男。彼の周りを織りなす女性たちの物語。

  • 長崎異聞

    橘醍醐は、女心が分からぬ。 かれは次男であり家名は告げぬ。なので長崎奉行で小役を賜る。端役である限り無聊だけは売るほどある。 時は慶応26年、徳川慶喜の治世は30年近い。 その彼がまさか異国の娘に巡りあおうとは。

記事一覧

紺碧の回遊

 バカンスもそろそろ終了。  ワーカホリック気味の日本人では、かなりの怠け者である私でさえひと月は持て余します。余暇が多すぎてメンタルがやられて、詩作が中々浮か…

百舌
39分前
6

断崖の群れ

百舌
1日前
13

令和のダラさん 感想

 いやコレ本当に面白い。  Youtubeのフィルムコミックだけで魅了されてしまいました。  このお話は各話が過去編と現在編に分かれていまして。  その温度差がすごい。 …

百舌
2日前
9

夏が、終わりゆく。

 夏が終わる感触がします。  離島のかなり沖を台風が掠めてゆき、深夜には大雨がニ夜続きました。毎日の早朝は島一周ポタリング🚴で回遊しますが、汗の量がガクンと減り…

百舌
2日前
22

台湾2018 夏の旅 5

 迪化街という通りがある。  日本統治時代からの古い町並みという。  何しろ私は日本史・世界史を指導していたので建築物も好物なので足を運んだ。  なんというか。  …

百舌
4日前
18

離婚式 47 #女の第六感

 りょう、には女の第六感はない。  彼女に同期した瞬間に理解した。  感情ではなく論理的思考がある。  彼女にとっては不都合だろうが。  その補助脳に吸収され圧縮さ…

百舌
5日前
14

台湾2018 夏の旅 4

 台湾は日清戦争以降、大日本帝国の治世下にあった。  併合当初は清帝国が「化外の地」と呼ぶほどの、見下した土地柄であり、この土地を文明化するのに大日本はかなりの…

百舌
6日前
26

台湾2018 夏の旅 3

 台湾への旅はお遍路に近い。  愛犬を喪失した心傷を癒したい。  ひび割れが顕示化してきた家庭から、目を逸らしたい。  その解消には時間が必要だけど、如何にそれを…

百舌
7日前
26

離婚式 46 #AIに恋した話

 切り札は有効に使わないと。  補助脳のAIに、あの下種を迎え入れるように指示していた。  濡れてすぐに呑み込めるように。  下種が曲解して勝ち誇るように。  その獣…

百舌
8日前
18

精霊流し

 去年の貴方の想い出が  テープレコーダーから溢れています🎵  郷里の吟朗詩人であるさだまさしの歌詞にあるような、静謐な空気は微塵もありません。これでも条例によ…

百舌
9日前
25

台湾2018 夏の旅 2

 台湾には三面の顔がある。  中国国民党によって独裁を受けた国家。  かつての大日本帝国の残滓を残した国家。  大陸から共産思想の侵蝕を受けている国家。  それを如…

百舌
10日前
15

人魚の涙 27

 橘の眼に嘘はなかった。  島民にとっては厳しい決断になる。  水曜日の午後は休診で非番なので、こちらから出向いた。  相談事があるらしい。  歴史文化資料館はどこ…

百舌
11日前
16

台湾2018 夏の旅 1

 あの旅は6年前になる。  iPadの機能で、数年前の写真がトップに現れて、封印した思いが溢れてきた。そう傷心の旅でもあった。  既に家庭のひびが明らかになっていた。 …

百舌
11日前
17

ただいま、の重さ

 貴方にとって幸せって何?と彼女は問うた。  今の私で言うと、帰ってきた時「ただいま」を言うと「おかえりなさい」を言って貰えること。  目覚めるときに誰かの体温…

百舌
13日前
18

雲仙ツーリング 2

 雲仙は別世界だと思った。  炎熱続きの地上よりも、気温は5℃違う。  島原市に下りていく計画だったけど、この環境は得難いものなので、ずるずると高原ツーリングを楽…

百舌
2週間前
15

COLD BREW 32

 扉の呼び鈴が、乾いた音を立てた。  僕はオーヴンの掃除をしていた手を止めて、膝立ちの体勢からいらっしゃいませと、声をかけた。夜間営業の看板をおろし、もう外灯も…

百舌
2週間前
12
紺碧の回遊

紺碧の回遊

 バカンスもそろそろ終了。
 ワーカホリック気味の日本人では、かなりの怠け者である私でさえひと月は持て余します。余暇が多すぎてメンタルがやられて、詩作が中々浮かびません。
 ただ昨夜はかなり色っぽい夢を見て、それを必死に描写して台詞を脳裏に刻んでいる自分がいたので、もうじき復活できるなあと思っています。
 
 この数日は近隣の島巡りに充てていました。
 お隣は宇久島といいまして、面積は3倍程でしょ

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令和のダラさん 感想

令和のダラさん 感想

 いやコレ本当に面白い。
 Youtubeのフィルムコミックだけで魅了されてしまいました。
 このお話は各話が過去編と現在編に分かれていまして。
 その温度差がすごい。
 温度差で風邪ひくっても慣用句になってますね。

 山に巣食う妖と融合した巫女、それが山の土地神として障りが漏れ出さぬように護り続けていたのに〜
 そこに物怖じしない現代っ子が〜
 しかもかなり性癖に訴えてくる〜

 この過去編の

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夏が、終わりゆく。

夏が、終わりゆく。

 夏が終わる感触がします。
 離島のかなり沖を台風が掠めてゆき、深夜には大雨がニ夜続きました。毎日の早朝は島一周ポタリング🚴で回遊しますが、汗の量がガクンと減りました。
 また夜になると松虫の声が響くようになりました。
 日中はまだ夏の日照りですけど。それで自転車🚲で廻るなんて、いや時々は自己耐久でポタリングしていましたが。

 海に入っても今日の水温は明らかに冷たくなって。
 シーズンの終わ

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台湾2018 夏の旅 5

台湾2018 夏の旅 5

 迪化街という通りがある。
 日本統治時代からの古い町並みという。
 何しろ私は日本史・世界史を指導していたので建築物も好物なので足を運んだ。
 なんというか。
 明治生まれが着想した和洋折衷の建築物が軒を並べている。
 しかも鉄骨と石とコンクリが混在したものだ。装飾華美すぎるバロック調なのか、アジアに流行したコロニアル調なのか統一感のない町並みがごった煮になっている。まさにちゃんぽんになっていて

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離婚式 47 #女の第六感

離婚式 47 #女の第六感

 りょう、には女の第六感はない。
 彼女に同期した瞬間に理解した。
 感情ではなく論理的思考がある。
 彼女にとっては不都合だろうが。
 その補助脳に吸収され圧縮され、そして数値化されてHHD内かcloud内で保存されている人格で、そう考えた。
 もう既に自由な自我というものはない。
 彼女のcommandにただただ臣従するのみだ。
 むしろこのcloud内を漂っているときには、人格が存在している

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台湾2018 夏の旅 4

台湾2018 夏の旅 4

 台湾は日清戦争以降、大日本帝国の治世下にあった。
 併合当初は清帝国が「化外の地」と呼ぶほどの、見下した土地柄であり、この土地を文明化するのに大日本はかなりの投資を行った。
 明治政府の根幹となるのは、五箇条の御誓文である。
 まずは教育と医療を整えることから始まった。
 この新領土を大日本は植民地とはせずに平等な国家の一部として捉えたが、上陸した日本人に対して当時は激しい抵抗があった。
 芝山

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台湾2018 夏の旅 3

台湾2018 夏の旅 3

 台湾への旅はお遍路に近い。
 愛犬を喪失した心傷を癒したい。
 ひび割れが顕示化してきた家庭から、目を逸らしたい。
 その解消には時間が必要だけど、如何にそれを短縮できるかが問われていた。
 まずは自分自身が越えるべき壁を見つける。辛いとき、苦しいときは、独りで壁を直視して挑まないといけない。
 そんな習慣が私にはある。

 台湾を選んだのは近場であるからだ。
 かつてのような長期間のバックパッ

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離婚式 46 #AIに恋した話

離婚式 46 #AIに恋した話

 切り札は有効に使わないと。
 補助脳のAIに、あの下種を迎え入れるように指示していた。
 濡れてすぐに呑み込めるように。
 下種が曲解して勝ち誇るように。
 その獣欲を受け止めてみなさい。
 望月七楓の人格は己が補助脳の檻から、そう簡単には逃げられない。そこは念入りにrockしておいたから。自分の肉体が征服されているのを唇を噛んで視て、感触を味わうことしかできない。
 いい気味。
 神崎をNTR

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精霊流し

精霊流し

 去年の貴方の想い出が
 テープレコーダーから溢れています🎵

 郷里の吟朗詩人であるさだまさしの歌詞にあるような、静謐な空気は微塵もありません。これでも条例により、大人しく紳士的になりましたが。
 かつては暴徒の宴のようでした。
 箱ごと爆竹を観光客の車に投げ込んだり、箱ごと手持ちで爆竹をかき鳴らしたり、伏せたバケツに段ボールごとぶち込んでロケットのように飛ばしたり。
 もう恐ろしい光景でした

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台湾2018 夏の旅 2

台湾2018 夏の旅 2

 台湾には三面の顔がある。
 中国国民党によって独裁を受けた国家。
 かつての大日本帝国の残滓を残した国家。
 大陸から共産思想の侵蝕を受けている国家。
 それを如実に感じる。ある程度の年嵩の方々は日本語は通じるし、思考は私の祖父時代の方に近い。
 学生時代に台湾からの人と国際線で同席になって、色々と会話が弾んだときに、彼が日本時代を実に誇らしげに語るのに本当に驚いた。
 その直前には改革開放前の

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人魚の涙 27

人魚の涙 27

 橘の眼に嘘はなかった。
 島民にとっては厳しい決断になる。
 水曜日の午後は休診で非番なので、こちらから出向いた。
 相談事があるらしい。
 歴史文化資料館はどこかしらか黴っぽい臭いがしている。まだ梅雨は明けていないが、その日は初夏を思わせる日照りだった。
 席につくなり、彼は切り出した。
「協力して欲しい。例のポイントに潜って調査をしたい。日程はもう迫っている。今年の盂蘭盆会の15日の夜だ」

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台湾2018 夏の旅 1

台湾2018 夏の旅 1

 あの旅は6年前になる。
 iPadの機能で、数年前の写真がトップに現れて、封印した思いが溢れてきた。そう傷心の旅でもあった。
 既に家庭のひびが明らかになっていた。
 きっかけは5月下旬に愛犬が急死してしまったことだ。

 私は学習塾を経営していた。
 学習塾の塾長になった頃、「家庭が壊れやすいから気を付けてね」と助言を受けた。その当時は深刻には受け止めてはいなかった。
 しかしながら。
 午後

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ただいま、の重さ

ただいま、の重さ

 貴方にとって幸せって何?と彼女は問うた。

 今の私で言うと、帰ってきた時「ただいま」を言うと「おかえりなさい」を言って貰えること。
 目覚めるときに誰かの体温を感じること。
 それから互いに「おはよう」と声をかけること。

 淋しがり屋の上に独り暮らしの期間が長い。
 それでそんな会話に憧れると彼女に答えた。

 こうして炎熱のなか、苦行の帰路を辿る。
 離島までの航路にはもう慣れてしまった

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雲仙ツーリング 2

雲仙ツーリング 2

 雲仙は別世界だと思った。
 炎熱続きの地上よりも、気温は5℃違う。
 島原市に下りていく計画だったけど、この環境は得難いものなので、ずるずると高原ツーリングを楽しんでいた。

 雲仙では定番だけど、徒歩での地獄めぐり。
 高原地帯の涼しさが魅力的なのに、敢えて地熱と硫黄臭に満ちた場所を歩く。
まさに地獄です。
 終戦後すぐに「君の名は」というラジオドラマがあった。
 戦後復興の陰鬱なドラマに恋愛

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COLD BREW 32

COLD BREW 32

 扉の呼び鈴が、乾いた音を立てた。
 僕はオーヴンの掃除をしていた手を止めて、膝立ちの体勢からいらっしゃいませと、声をかけた。夜間営業の看板をおろし、もう外灯も落としていた。
 もう街には電飾が為され、賑やかで耳障りなクリスマスソングが流れだしている。こんな時間にも人通りは多くなってきた。
 観光客から道案内を頼まれるのか、酔客からトイレを貸してくれとごねられるか、ご近所から急場の要件があるのかと

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