百舌
信州樽沢にひとり棲む、巫女舞で悪霊を祓う女性。その正体は雪女。
この短編は、ラジオドラマ用に書いたものです。 note初期に連載したものを推敲して加筆しました。 テーマは不倫。原稿用紙5枚程度の連作を並べて、中編に仕立て直しております。美香、小夜、衣花3人目のヒロインが登場してきます。基本的に独立した掌編ですが、まとめて読んでいただくと、この3人が接点を持ち始めます。
ふと気晴らしに恋愛小説を書いています。男性脳と女性脳を切り分けながら。どれもショートショートの短編なので、生活の息抜きにいかがでしょうか。
かつて私は、旧い空冷のCBに乗っていた。二輪で旅をしていると自由になれるし、女ひとりのソロキャンプもそれなりに楽しい。 鼓動感のあるエンジン音を奏でながら、日常を振り切って旅は続く。
離島から各地へのバイク旅を綴っています。ときにはBROMPTONでの輪行も挟みます。地域のグルメ情報も多し。
桜が散っている。 私のロードスターは、高台のパーキングに停まっている。 ふたり乗りのちっぽけなロードスター。 オレンジに塗られたボディに、漆黒の布製の幌が掛かっている。 急勾配の傾斜の途中に、巨人が指でつまんでこしらえたような平地が、虚空に向かって突き出している。そのパーキングのへりに平たく張りついている。 仕事がかさんでいる時期には、帰宅が深夜になることも、ままある。 エンジンの鼓動が止まり、車外に出ると、眼下には夜景が広がる。星が吹き散らされたような眺めだ。
やっとやっと。 再始動しようかと。 ああ、もう一年を経過してしまったよ、この原稿。 もう離島暮らしを畳もうかと思っているこの師走。 不安なのは新天地でも、今の制作量が保たれるのか、という現実です。自分が本当に気まぐれで飽きっぽいって知っています。 それが確定する前に、踏み出しておけば、何とか責任感ってやつでしょうか。最後まで書こうとするんじゃないかなっていう淡い期待です。 先日の離島訪問してくれた級友も読み込んでくれた「風花の舞姫」ですが。いよいよ後半に差し掛
さて年末年始が迫っています。 その帰省旅のルートも固まり。 今回はバイクを諦めて、FIAT500での10日間の旅になりましたので、そりゃあお土産を積んで行けるぞ、ってことです。 なので絶賛、量産体制に入っています。 というのもケーキ型の買い替えをしたのですが、数量を誤って2個購入したのですね。んで試しに2個ずつ焼いてみたら、キレイに火が通るのですよ。なので最近は2本焼を中心にしています。 最近ではバナナブレッドをよく焼いています。 離島でもバナナは入手しやすく
4 小 夜 網膜に赤い爆発をみた。 そして具体的な感覚での浮遊感があたしを包む。 なにかすごい圧力で、全身が噴き上がっていく感覚がある。それも印象としては水中よりも、空中を飛んでいるようなものが多い。というのは、距離感の問題なのだろう。水中であの距離を往き来するには、深いところへ潜るには水圧という負荷がかかる。その負荷を感じないし呼吸も辛くないから、常識的に空中だと思うのだろう。 そこはいつも温かく、光があふれている世界。 静謐で儚くて、不思議と音のない世界だっ
袋ラーメンが好きです。 棒ラーメンも含みます。 カップ麺はもう10年以上食べていないし、カップ焼きそばは高校生くらいからご無沙汰です。 そして離島暮らしでは、ラーメン🍜専門店がありません。 なので陸地に上がるとそこで食べてくるしかないのですが、今や還暦直前の肉体では、麺類を食する前には「身体作り」が必要です。 それは朝食🥞を抜くか、最小単位とすることです。かつ夕飯が軽いモノに制限されます。ツーリング中にそれはもったいない。 なので縁が遠くなるのです。 離島で
3夜 美 佳 電話が鳴った。 バッグから携帯を取り出して、液晶に写る女友達の名前をすこし睨んでから、わたしは着信を受けた。普段なら電話の鳴ることのない時間帯、電源を切っておかなかったことをわたしは悔いていた。 彼女は、かなり飲んでいた。 舌の回転も怪しく、さんざんにつきあいはじめたばかりの彼氏の話題を一方的にまくしあげた。わたしの気持ちさえよそに、こんなときの彼女はお構いなしだ。わたしは気づかれないよう胸で溜息をひとつつき、ベッドサイドのテーブルで煙草に火をつける
昨晩は、私の退任祝いの席でした。 現在のところ同じ職を継続したままで、来年度の更新を望まれています。それは大変に有難いことですが。 進路については複数の選択肢で悩んでいます。 ひとつは来年度も離島の古民家に棲み、物資不足に悩みつつも現状の職務に従事すること。しかしながらもうひとつの、島を離れて本土の生活に戻ることに惹かれています。 実は本土の方で、お誘いを受けている会社もあります。 ですが最終的な大仕事が2年後に薩摩で待っています。それはライフワークかもしれな
2夜 小 夜 蒼いそらが見えた。 あたしの部屋は東に向いていて、家のなかでも最初に日がのぼる。四角に窓が切り取ったそらは、胸が痛くなるほど澄んでいた。 そうしてまた一日が始まるという残酷なことを、あたしは知るのだ。 昨日と同じように無為の一日が始まるということを、あたしは知るのだ。 なにもかもが面倒になって、この部屋でふさぎ込むようになってから幾日たつのか、それすらも考えたくないことだった。あたしは自分の顔を見つめるのをやめ、心に問うことをやめ、身体の線に努力す
初夜 美佳 肩で鎧戸を開けて、入ってきた。 看板にはまだ遠いけれど、お客の切れたお店。鎧戸が開閉するその音は空々しく、やけに大きく響いた。私はカゥンターのなかで磨いていた爪さきを慌てて隠した。 意外な訪問客だった。彼は昨日も通ったかのような慣れた会釈をして、わずかに微笑んで、バァカゥンターの止まり木についた。 隅から二番目のスツール。 そういう席につくときは、端っこからひとつ空けておくものよ。 そうしたら私が座ってあげる。隣に座れるのはあなただけ。私を独占でき
あたしさぁ、風俗嬢だったんだよね・・ もうバー勤めからセクキャバ、メンズエステに行って、そこまでいったらもう覚悟ができちゃって。一気に泡姫までやったの。ちゃんとピル飲んで、ナマの日ももちろんあったわ。 わかる? 普通の女子よりも本数をこなしてきてんの。 それでいいわけ? 彼女は人数で数えずに、本数で数えた。それだけの匿名性のある不特定多数なのだろう。中には懇意にしてくれた本数も、かなりあるはずだ。 後ろ手に抱き締めてみると、思いのほか、重みがずっしりと伝
その窯は、山科の谷間にあった。 北京都のさらに奥座敷に位置していて、緩い山道を上った後に広がる盆地が山科という街だった。三条線という雅な名前を引き継いでいる県道は、京都への上り線だけがずっと渋滞していた。 もう陽はとっぷりと暮れて、宵の口が迫っていた。 京都では、最近流行りだしたスーパー銭湯という施設で身体を温めた。それでも空冷CBで数分走るだけで、晩秋の鋭く冷えた大気が、その熱を容赦なく剝ぎ取っていく。 私が探していたのは、幹線道路から少し外れている田舎道の、バ
さてもさても。 友人たちをもてなした2泊3日も終了。 航路が違うので1人ずつのお見送りを収めて。 さあ、日常に戻ろっかとBROMPTONを漕ぎ出しました。 私の棲む島は全周で33km、主要道路1周して14km程度のコンパクトさ。なのでこの1周を毎日のノルマにしています。 実はその習慣を計測してみたら。 例えば月20日としても280kmとなり、年換算では3360kmになります。ですが月に10日も走らないって事はないのですね。ですから年間概算で4000kmはいく
昨夜は夜更かししました。 男子高校の同級生2名の宿泊なんですが、ひとりが天文マニアでございまして。それでこの離島の特性状、地表に灯りが少ないので星空が極めて綺麗というものがあります。彼が旅に出た理由のひとつでもあるのです。 実はもうひとりは雨男というか嵐男なので、この数日は強風波浪の荒天続きでしたが昨晩は快晴に近いお天気でした。 何しろ私は晴れ男なのです。 それで深夜23時よりFiat500を繰り出して、しかも還暦手前3人衆で、草原地の広がる斑島の海岸線へと走ります
大時化も収まりまして。 それでも航路は安定せずに五島まで接近していた友人も、私の棲む離島に辿り着きました。いやいや長旅でしたね~ 今日は雨男いやさ嵐男ともいえる彼でも、この晴天に恵まれました。もうひとりの友人にはバイクでの来島をお願いしていたので、今日は2台並んでバイクでのツーリング周回です。 時間帯を見計らって、絶好の展望台では落陽の時間帯ドンピシャ。 それで黄金色のひと時を愉しんでもらったよ。 さて遅参してきた友人のたっての希望で。 特製の自家製叉焼でのサ
離島は大時化に包まれています。 今週はもう欠航や遅延が相次いで、食材が揃わない日々でした。 なのに同級生が来るというので、まあキッチンで頑張っていたのです。ですがこの旅の切っ掛けの友人は、昨日に五島までは到達しているのに、大時化の欠航で動けないとな。 ですが佐世保からの友人は来島してくれて。 半日の島内観光になりました。バイクで来てくれましたが、この横風を喰らうと転倒しかねないので、Fiat500での案内にしました。 神が来臨しているかの光景が広がります。
京都も盆地で底冷えがしていた。 ここまでは山裾を這うように国道9号線を南下して、亀岡から京へと入った。しかも運悪く陽が落ちかけていて、宿を探すには不向きの時間帯だった。もう野営なんてできないし、そろそろ師走の時期で観光客も多いだろうし。宿泊代には多くをかけられない。 しょうがない、はんなりの京の都だし。 オールナイトをしている映画館があるかもしれない、金曜日だしな。固い床で雑魚寝でもしよう。 そう思って9号線から二条城方面へと左折した。 出石を離れたのは、もう雪