雲仙ツーリング 2
雲仙は別世界だと思った。
炎熱続きの地上よりも、気温は5℃違う。
島原市に下りていく計画だったけど、この環境は得難いものなので、ずるずると高原ツーリングを楽しんでいた。
雲仙では定番だけど、徒歩での地獄めぐり。
高原地帯の涼しさが魅力的なのに、敢えて地熱と硫黄臭に満ちた場所を歩く。
まさに地獄です。
終戦後すぐに「君の名は」というラジオドラマがあった。
戦後復興の陰鬱なドラマに恋愛要素が加わって、大ヒットして小説化、舞台化が行われた。さらに映画化もされて、その第3部が雲仙の設定だった。映画による観光おこしの先駆けであり、当時からその聖地巡礼があったという。
ぽこぽこと沸るその音が、周囲に熱波を撒き散らしているが、当のこの泉は歩行者に斟酌することもない。
そんな無節操であり余る熱量は、ああ恋愛感情に通じるものがあると思った。
そうした律動的でない感情に、自分が陥っているとは想像してもいなかった。
平成にお年号が変わる頃、父は急死して血族を失い、擬似家族は崩壊した。
令和に年号が変わる頃、妻は別居の選択を行い、今や家族は飛散している。
そうして私は、いずれ失なうのであれば、求めてはならないと己に定めるいたはずであったのに。
そうした逡巡を毎晩のようにしている。
なのでかなりの不眠症で眠りが浅く、昔語りの夢を見る。
夢のなかには妻の彼女時代から、佳い女子たちもかつてのように振舞っている。夜半に脂汗をかいて目覚めたので、温泉に再び浸かることにした。
この3年をかけて継続してきた恋愛小説があって。
話半ばで中々、ストーリーを進めることが出来なかった。それが今、繋がり始めています。
この激情を追体験できましたので、それは小説に封印したいと。
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