マガジンのカバー画像

映画と音楽

35
「好きなものを好きなだけ」 映画と音楽に纏わるエッセイやコラムを集めたマガジン。」
運営しているクリエイター

#眠れない夜に

『LIGHTHOUSE』若林さんの「飽きた」という発言が素直に羨ましいと思った

『LIGHTHOUSE』若林さんの「飽きた」という発言が素直に羨ましいと思った

『LIGHTHOUSE』で若林さんが仕事に飽きたと言っていた。素直に羨ましいと思った。若林さんが言う「飽きた」はありとあらゆる場所で結果を出してやりたいことがなくなったという意味であり、決して逃げの言葉ではない。

『LIGHTHOUSE』は星野源さんとオードリーの若林正恭さんが、“悩み”をテーマにお互いの悩みを赤裸々に打ち明けていくNetflixのトークバラエティ。

まだ何も成し遂げていない自

もっとみる
『どろろ』正義と正義のぶつかり合いの成れの果てにある世界は果たして美しいのだろうか

『どろろ』正義と正義のぶつかり合いの成れの果てにある世界は果たして美しいのだろうか

それぞれの正義に正しさなどあるのだろうか。正義は別視点から見ると悪に成り下がり、他者を傷つける要因となる。自身も正義を振り翳した結果、たくさんの人を傷つけてきた。後悔の念は消えることなく己の体に深く刻み込まれ、この取り返しのつかない現状がただただもどかしい。

週末を使って、Netflixで配信されている『どろろ』を一気観した。手塚治虫作品は人間の浅ましさが見事に描かれていて、観るたびに心の奥が締

もっとみる
『だが、情熱はある』は、自分の中に眠る情熱を再び思い出させる物語だ

『だが、情熱はある』は、自分の中に眠る情熱を再び思い出させる物語だ

「たりないふたり」がドラマ化されるとニュースを見たときに、本当に大丈夫なのか?と不安もあった。それも束の間、銀杏BOYZのオープニングが流れ、二人がステージに立った瞬間にそれが杞憂だったと知る。

毎回、ドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系)に魅了されている。「たりないふたり」とは、オードリーの若林と南海キャンディーズの山里の二人が組んだユニット。最近、よくお笑いを舞台にしたものが映像化されて

もっとみる
離れてても、同じ空の下

離れてても、同じ空の下

あの日、地元の友人たちが送別会を開いてくれた。

2023年の1月にずっと憧れていた東京に移住した。その理由は、30歳になって、やっぱり一度は東京で挑戦してみたいと思ったためだ。地元を離れるのは寂しかったのだけれど、上京に後悔はない。少し距離は離れているものの、LINEを使えばすぐに連絡を取れる。ひと昔前だったらありえない話だから、ITの発達はすごいなと感心するばかりだ。

僕が東京に移住する前に

もっとみる
『マイ・ブロークン・マリコ』は残酷な現実に放たれた一縷の希望の物語だった

『マイ・ブロークン・マリコ』は残酷な現実に放たれた一縷の希望の物語だった

人生とは奇妙なほどに残酷で、時折美しさを見せるものだ。幸か不幸か、どこに生まれるかは自分で選べない。一切の苦労をせずに平凡な幸せを営む人もいれば、生まれてくる場所を間違えたと思うほどに残酷な仕打ちが待ち受けている人もいる。幸いにも『マイ・ブロークン・マリコ』を観終えた瞬間の空は明るかった。もしも夜に本作を観ていたらと考えるだけで、居た堪れない気持ちになる。

痛みが心を支配する瞬間と出会った覚えは

もっとみる
『それでも世界が続くなら』に人生を救われた話

『それでも世界が続くなら』に人生を救われた話

声を枯らし、命を燃やしながら歌う彼の姿は優しくて狂気的だった。

『それでも世界が続くなら』と出会ったのは、大学生の頃だ。当時家庭環境が原因で、生きることに絶望していた僕は音楽によって救われていた。

誰も知らない新しいアーティストを発掘するのが好きだったため、大学の授業終わりによくタワーレコードに足を運んでいた。女性のイラストのジャケットに目を奪われて、手に取ったのが『彼女の歌は死なない』と書か

もっとみる
【愛がなんだ】「幸せになりたいっすね」から考える幸せの定義

【愛がなんだ】「幸せになりたいっすね」から考える幸せの定義

「幸せになりたいっすね」

映画『愛がなんだ』でナカハラが言った台詞である。以前『愛がなんだ』のテルコにまったく共感できないという記事を書いた。

この記事を書いてから1年近くが経ったが、やっぱりテルコの気持ちはわからないままだ。でも、なぜかナカハラの「幸せになりたいっすね」はずっと胸に残っていて、学生時代に同じ台詞をよく言っていたことを思い出した。

自分が不幸あるいは疲れているときは、他人の幸

もっとみる
Creepy Nuts“かつて天才だった俺たちへ”はすべての主人公になれなかった神童に捧げる応援歌だった

Creepy Nuts“かつて天才だった俺たちへ”はすべての主人公になれなかった神童に捧げる応援歌だった

小さい頃はなんにだってなれると思っていた。それが時間と経験とともに、自身の至らなさに気づいて、「所詮自分はこんなものか」と掲げていた夢を諦めるようになる。でも、中には自身の可能性を諦めず、天才になれない事実に抗い続ける者もいる。天才になれなかったと嘆くか。天才になる努力を続けるか。人生の分岐点はおそらくこの辺りなんだろう。

苦手だとか 怖いとか 気づかなければ
俺だってボールと友達になれた

もっとみる
11月が消えた

11月が消えた

11月が消えた。

2021年11月、20代最後の11月が跡形もなく消えた。11月が消えた瞬間に、人生の難しさを思い知らされた。それと同時に消えたことにも意味があると自分に言い聞かせる自分がいた。

11月の大半を病床で過ごしている。ありきたりな日常は奪われ、病床での日常がありきたりな日常と化した。悔やまれると言えばそれは紛れもなく事実だけれど、「うまくいかない日があることも人生だよ」と頭の中で囁

もっとみる
amazarashi“僕が死のうと思ったのは”は絶望の中に見えた微かな希望だった

amazarashi“僕が死のうと思ったのは”は絶望の中に見えた微かな希望だった

20歳になって生きる意味が見つからなかったらもう死んでしまおう。

淡々と流れる日常に意味を感じなくなった僕は、いつもそんなことばかり考えていた。

19歳といえば、モラトリアム期の渦中にいた。それは誰もが通る道なのかもしれない。

簡単に「死にたい」と口走っていた当時をいま振り返ると、「若い」の一言で片付けられる。でも、それは乗り越えたからに過ぎない。

「何者かになりたい」

では、その何者と

もっとみる
マカロニえんぴつ“恋人ごっこ”|もう一度やり直したいと願ったあの日々へ

マカロニえんぴつ“恋人ごっこ”|もう一度やり直したいと願ったあの日々へ

終わった恋をもう一度だけやり直したい。そう願った経験は誰もがお持ちなんだろう。失恋したときは後悔に苛まれるくせに、終わってしまうまでその過ちに気付かない。それでもやっぱり人は何度も恋に落ちる。性懲りもなく何度でもまた恋に落ちていくのだ。

2020年2月7日にDigital Singleとしてリリースされた“恋人ごっこ”。2ndフルアルバム“hope”に収録され、MVの再生回数は2000万回を超え

もっとみる
「愛がなんだ」のテルコの気持ちは一生理解できない

「愛がなんだ」のテルコの気持ちは一生理解できない

片思いの代表作品として、名を挙げた「愛がなんだ」。物語の率直な感想は「テルコの気持ちが全然わからない」だった。好きな人のために、自分の人生を簡単に犠牲にしてしまうテルコ。好きな人にいつ呼び出されてもいいように、仕事をやめ、好きな人の喜ぶ顔を見るためになんだって喜んでやる。そのくせして片思いは一向に報われない。

報われない片思いというやつは、他人からすれば儚いものである。当人は必死で悩んでいるのに

もっとみる
ギブス

ギブス

あなたはすぐに写真を撮りたがる。それを嫌がる私。あなたは過去を残したい人間で、私は過去を残さず、未来を見据えていたい人間だ。ずっと一緒にいたいと思っているつもりだから、もっと目の前の景色を味わったり、2人の時間を楽しみたい。

それに写真は私が古くなってしまう。ふと見返したときに、「ああ、こんなこともあったね」と振り返るのは私らしくないし、どんなときも綺麗でいる努力をしていたいからこそ、私は過去を

もっとみる