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ギブス

あなたはすぐに写真を撮りたがる。それを嫌がる私。あなたは過去を残したい人間で、私は過去を残さず、未来を見据えていたい人間だ。ずっと一緒にいたいと思っているつもりだから、もっと目の前の景色を味わったり、2人の時間を楽しみたい。

それに写真は私が古くなってしまう。ふと見返したときに、「ああ、こんなこともあったね」と振り返るのは私らしくないし、どんなときも綺麗でいる努力をしていたいからこそ、私は過去を振り返るのではなく、未来をずっと見つめている。

でも、あなたは写真に写る私を綺麗だと言う。確かに綺麗なのかもしれないし、それなりの努力もしてきた。それが私に合わないだけで、あなたの綺麗と言う言葉はきっと本心だし、綺麗に写る私はそこにいるんだろう。

あなたはすぐに絶対と言う。そして、私はそれをいつも嫌がる。嫌がる私に向かっていつもおどけてみせるあなた。その姿が可愛くいて、愛しくて、いつまでもこの時間が続けばいいなんてことを考えていた。でも、絶対なんてないし、絶対と言う人間ほどすぐに裏切る。恋が冷めた瞬間に嘘になる言葉なんて聞きたくない。

ずっとそばにいてほしい。私だけのあなたでいてほしいし、あなただけの私でいる。だから、2人が会うたびに抱きしめて、明日のことなんて何一つとして考えさせないでほしい。そして、今日が幸せならそれでいいってずっと思っていたい。

私を抱きしめたあと、いつもあなたはすぐにいじけて見せたがる。それを「あなたがカートみたいで、私がコートニーじゃない」と喜んでいたよね。なにげない幸せが2人の幸せで、それを守るために、ときにぶつかり、ときに笑いあって、目の前の出来事を2人でちゃんと味わっていた。

また四月が来て、あなたが桜の木の下で私を撮った写真を思い出して、思い出はやっぱり綺麗にならなかったよって。私が古くなるだけで、そんな写真が残ってしまうのはやっぱり嫌だから、目の前に広がる2人の時間をもっと楽しみたかった。

2人の合わない感性が2人を終わらせた。写真を撮りたがるあなたの感性は私には合わないと写真を撮られながらずっと思っていた。また出会えたときは、昨日のことなんて綺麗さっぱり忘れてみせるから、いつもより強くギュッとしててね、ダーリン。

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