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負の連鎖を垣間見る『17 Blocks 家族の風景』映画レビュー

負の連鎖を垣間見る『17 Blocks 家族の風景』映画レビュー

ここ最近で一番、心にグサッときた作品。

登場人物たちは、社会構造の歪みの被害者であり、彼ら自身の話を聴いてくれるひとをずっと探し続けている存在だ。

こんなに長い時間、ひとつの家族に密着した監督には本当に恐れ入る。「よくぞ!」と拍手したい。

元気そうにしてるひとだって、聴いてみると、実はプライベートで悩みを抱えている。特に日本人は、他人のプライベートに干渉しないところがあるが、これは最近始まっ

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誰もがクリエイター:映画『映画大好きポンポさん』レビュー

誰もがクリエイター:映画『映画大好きポンポさん』レビュー

2021年12月に行われた、COME BACK映画祭~コロナ禍で影響を受けた映画たち~ @Hall Mixa (池袋 東京) で鑑賞しました。

感想

カラフルで躍動感があってキャラクターそれぞれが魅力的。開始数分であっという間に世界に引き込まれた。

場面の切り替わり方も映画のようで、実に小気味よい。

私は「誰でも創造する作業は大なり小なりやっていて、一人一人が皆クリエイターだ」と思っている

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本来ならば至極当然の政治:映画『ボストン市庁舎』レビュー

本来ならば至極当然の政治:映画『ボストン市庁舎』レビュー

鑑賞にあたり

ご存知、274分という長丁場ということもあり、シートの座り心地が良さそう?な「新宿シネマカリテ」をチョイスし初訪問(※座席についてはあくまで個人判断です)。
こじんまりしているが、清潔でとてもお洒落だ。また行きたい!
そして本作の休憩時間は10分とかなり短いので、おやつ等集中力を保つモノが必携だ。新宿の映画館には自販機ならあった。

ちなみに「ヒューマントラストシネマ有楽町」の記事

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性犯罪は心の殺人だ。

性犯罪は心の殺人だ。

映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』を観る前から思ってたことだけど。頭がぐちゃぐちゃだから、整理がついたらまたこのノートを更新する。

4DX:映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』レビュー

4DX:映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』レビュー

1回目観たときの自分の感想読み返すと…今と全然違う。
もうすっかり沼ってるなぁ。
日野さんがディスクで4Dについて語っているとのことだったので

「そ、それは体験せずにはおれん!」

というわけで、第6弾特典もいただきつつ乗車。これが映画館最後かなあ(;ω;)

↓日野さんが「4Dおじさん」になったという情報源(ブルーレイが届くまで定かではない)

特典も思ったよりしっかりした紙に印字されていて驚

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韓国における「言論の自由」と愛すべき国民性:映画『タクシー運転手~約束は海を越えて~』レビュー

韓国における「言論の自由」と愛すべき国民性:映画『タクシー運転手~約束は海を越えて~』レビュー

1980年に実際に起きた『光州事件』を扱った映画。ドイツ人記者およびタクシー運転手は実在の人物をモデルにしている。

※映画冒頭のテロップを元に独自に編集

1980年、韓国。
独裁者として君臨していた朴正煕(パクチョンヒ)が暗殺され、民主的な政治が始まると期待した国民だったが、軍が権力を掌握。多発する大学生のデモを禁止するため、軍は厳戒令を敷いた。民主化運動の主導者、金大中(キムデジュン)も拘束

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企業の言う「サステナビリティ」「SDGs」を鵜呑みにするな!:映画『グリーン・ライ-エコの嘘』レビュー

企業の言う「サステナビリティ」「SDGs」を鵜呑みにするな!:映画『グリーン・ライ-エコの嘘』レビュー

とにかく、ああ、ひっきりなしに心が痛んだ。
でも、皆に観てほしい映画だ。これ以上、問題から目を背けないために。

特に、太古から育まれてきた美しい森が、パーム油を作るためだけに焼き払われた場面が、とにかくショックだった。
パーム油は、チョコレートなど様々な商品に使われている(そして“パーム油“とは記載されていないことが多い)。

チョコレートと、灰と化した森。

あまりにイメージがかけ離れていて、

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米国南部に残る黒人差別:映画『ゲット・アウト』レビュー(ネタバレなし)

米国南部に残る黒人差別:映画『ゲット・アウト』レビュー(ネタバレなし)

未だ人種差別的風習が残っているアメリカ南部を舞台に、鋭い風刺で観客の心をざわつかせる、ブラック・コメディ。
監督は、アフリカ系アメリカ人を父に持つ、ジョーダン・ピール氏。元々コメディアンで、これは彼の初監督作品だ。

グロテスクな映画が苦手なため普段あまり手を出さないジャンルだが、あちこちで高評価のレビューを見るもんでつい。笑

まず、まだ観ていない方々にご提案。
映画の予告編だけでもかなりのネタ

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鬼滅沼から抜け出せ (さ?) ない

鬼滅沼から抜け出せ (さ?) ない

※Procreateでファンアートを描いてみました。
※2021年3月26日更新。

2020年春辺りから『鬼滅の刃』の沼にハマり、順調に駒を進めております。友達からは「精神の核をやられたんだね」と言われました。確かにそうかもしれない。

私の駒 : アニメ → 映画 → 漫画 → ラヂヲ → ファンブック → アニメ遊郭編うおおぉおおおーーー! → 『鬼滅祭オンライン』および『キメツ学園物語~バ

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『鬼滅の刃』が人生に影響を与えたマイベスト3に入った件

『鬼滅の刃』が人生に影響を与えたマイベスト3に入った件

※Procreateでファンアートを描いてみました。
※映画無限列車編以降のネタバレはありません。

今更ながら、『鬼滅の刃』が「人生に影響を与えた漫画・アニメ」のマイ・ベスト3に入った件。

1位:『ワンピース』…生きる意味を教えてくれた
「生まれてきたこの時代を憎まない、生きていれば、楽しいことが必ずたくさん起こる」ベルメール
2位:『鬼滅の刃』…生きる目的やその方法を教えてくれた
3位:『進

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自然のエコシステムに波乗りすべし:映画レビュー『ビッグ・リトル・ファーム』(ネタバレなし)

・ドキュメンタリーながら、話の構成が非常に巧みで、ぐいぐい引き込まれる。無駄に動物たちの映像を多用していないし、飽きさせない。前半に挿入されるアニメーションも可愛い。

・と、ここまでかいたところで、ジョン(監督)は元々プロの動物カメラマンだったことを思い出し、激しく納得。

・最近どんな映画を観ても、今のパンデミックに紐付けて悶々と考えてしまう。自然のエコシステムにおいて、どれだけ様々な生き物が

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戦争は、憎まない者同士の無意味な殺し合い:映画レビュー『彼らは生きていた』

戦争は、憎まない者同士の無意味な殺し合い:映画レビュー『彼らは生きていた』

※映画をイメージしてイラストを描いてみました。私はGoogle Play Movieで観ました。

以下、私なりの映画の感想です。
一部過激な表現もありますので、敏感な方はご注意ください。

■概要
第一次世界大戦(英仏米vsドイツ)の様子を、兵士達(主にイギリス軍)に焦点を合わせて編集されたドキュメンタリー。

■見どころ
おびただしい数の記録や資料、音声を組み合わせ、鮮やかさとリアルさを徹底的

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「当たり前」の奇跡:映画レビュー『パターソン』(ネタバレなし)

「当たり前」の奇跡:映画レビュー『パターソン』(ネタバレなし)

※最初のマッチの詩がとても良かったのでイラストにしてみました。

アメリカのニュージャージー州に実在する『パターソン』という街を舞台にした物語。

住む場所と同じ名前のバス運転手、パターソンは、どちらかというと感情を豊かに表現するタイプではない。その代わり、日々自分の周りで起こることにヒントを得て、自前の『秘密のノート』にポエムを書きためている。その多くが、愛する妻に向けたもののようである。

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人間は宇宙に似ている:映画レビュー『海獣の子供』(ネタバレないつもり)

人間は宇宙に似ている:映画レビュー『海獣の子供』(ネタバレないつもり)

※漫画を読んで映画をみて、自分なりに解釈したイメージをイラストにしてみました。

叫ぼう、今は幸せと
大切なことは言葉にならない

主題歌:米津玄師「海の幽霊」より

自然への畏怖と、命の尊さ。
時が経ってまたこの作品に触れると、違うことに気づくかも知れない。

2020年に大流行した新型コロナウィルスは、私たちの生き方、考え方、全てを変えてしまった。
「当たり前」というモノは、こんなに脆いものだ

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