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映画レビュー【映画の中の人生】

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悩み事だらけの私は、映画で描かれる人々の生き方を観て、励まされ、救われ、生きる術を学んできました。そして、わずか2時間前後のストーリーに凝縮されたキャラクターたちの人生から、本当…
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#ヒューマンドラマ

ビッグ・フィッシュ(2003)

ビッグ・フィッシュ(2003)

豊かな人生を送りたい人は必見!
奇才ティム・バートン監督の心温まるファンタジー

ファンタジー映画『ビッグ・フィッシュ』は、人を喜ばせようとする優しい気持ちに満ち溢れた作品です。ファンタジックな映像の数々に、映画という媒体の素晴らしさが改めて分かります。

原作は米国でベストセラーを記録したダニエル・ウォルスの小説。映画ではファンタジーを信じる心が何を生み出すのか、実際に目にできることの幸運をじっ

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ラースと、その彼女(2007)

ラースと、その彼女(2007)

人形を愛した孤独な青年が起こす愛のマジック
心優しいキャラクターたちに癒される

孤独な過去に傷つき、心を閉ざした青年ラースと、彼を見つめる人々との不思議な交流を描いたファンタジックなヒューマンドラマ。

2007年に製作され、第80回米アカデミー賞の脚本賞にノミネートされました。日本ではあまり注目されませんでしたが、とても良い映画です。

明らかに人形と分かる“彼女”をビアンカと呼び、恋人として

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哀れなるものたち(2023)

哀れなるものたち(2023)

自由を求める女性の刺激的な冒険
大胆で挑戦的な映像世界は驚きの連続

2023年度の第80回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。今年3月に発表された第96回米アカデミー賞では、11部門にノミネートされ、4部門で受賞。複雑すぎる内面を持つ女性役に果敢に挑んだエマ・ストーンが『ラ・ラ・ランド』('16年)に続き、2度目の主演女優賞を獲得しました。

作品への高い評価は、社会にはびこる偏見や既成概念

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奇跡のシンフォニー(2007)

奇跡のシンフォニー(2007)

音楽がつなぐ親子の絆
偉大な音楽の力を実感

まだ見ぬ両親に会いたいと願う孤児の少年のひたむきな思いが奇跡を起こす――。

『奇跡のシンフォニー』という壮大なタイトルがぴったりなドラマチックなファンタジーです。

両親にその存在を知られていないエヴァンが、どうやって両親にめぐり合えるのかと興味を引くストーリー展開には、やや強引さも見受けられますが、音楽が3人を結びつける奇跡のラストには素直に感動で

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ローズメイカー 奇跡のバラ(2020)

ローズメイカー 奇跡のバラ(2020)

天才ローズメイカーが育てたのは人との絆
バラ色に染まった美しくて、爽快なヒューマンドラマ

フランス郊外のバラ園を舞台に、人生につまずいた《はみ出し者》たちが再起をかけて、世界でたった一つのバラづくりに挑戦します――。

新緑がまぶしく、バラが美しく咲き誇る季節にぴったりの、明るく、爽やかなヒューマンドラマです。

更生中のフレッドに“盗み”をさせてしまうエヴは、農園を守るためなら一歩も引かない頑

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潜水服は蝶の夢を見る(2007)

潜水服は蝶の夢を見る(2007)

過酷な運命を突きつけられたらどうするか?
絶望を希望に変えて生きる心の力

重度の脳梗塞で倒れ、全身麻痺となったフランス人男性ジャン=ドミニク・ボビーが、清らかな“心”で人生を見つめた渾身の自伝が、2007年に映画化されました。

「人生一寸先は闇」。何が起こるか誰にも予測不可能ですが、ジャン・ドーの身に起きた出来事はあまりにも過酷です。励まし、支えてくれる周囲の人々や、自分の意思とは無関係に進む

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旅猫リポート(2018)

旅猫リポート(2018)

大好きな人とずっと一緒にいたい
言葉の分かる“ツンデレ”猫が泣かせる

『図書館戦争』『植物図鑑』などの人気小説家、有川浩の作品の中でも、1、2位を争う高評価を受けていると話題の原作が2018年に映画化されました。

心優しい青年・悟と、飼い猫・ナナの絆を描いた、切なくも温かいロードムービーです。

懐かしい人々との再会とともに描かれるのは、悟の悲しい過去。それは小学生が受けるにはあまりにも大きな

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100歳の少年と12通の手紙(2009)

100歳の少年と12通の手紙(2009)

限りある人生を精一杯生きる
改めて見つめ直す“人生の意味”

死期が目前に迫った時の悲しみや苦しみは想像を絶しますが、そうなった時、人は何を考え、どう生きていくのでしょうか。この物語の主人公である10歳の少年オスカーは、神に寄り添い、心を成長させることで、わずかに残された日々を謳歌しました。

ひたむきなオスカーが“短くて長い”人生の中で感じ、学んだことは、“人生の意味”を見失いがちな悩める現代人

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インビクタス 負けざる者たち(2009)※再掲載

インビクタス 負けざる者たち(2009)※再掲載

“ノーサイドの精神”が生み出した奇跡の逸話を
クリント・イーストウッド監督が爽快に描く

本記事は2020年11月6日に掲載した記事を加筆修正したものです。2023年ラグビーW杯がいよいよ準決勝を迎え、大きな盛り上がりを見せる中、ぜひご紹介したい作品です。

W杯優勝3度を誇り、今大会でもベスト4へ進出した南アフリカ共和国は、立派なラグビー強豪国ですが、かつては不遇な時代もありました。

本作は、

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さよなら、僕のマンハッタン(2017)

さよなら、僕のマンハッタン(2017)

人生に悩み、もがく大人たち必見
大人の街ニューヨークに癒されるヒューマンドラマ

大都会ニューヨークを舞台に、人生の進路に惑う青年の心の成長を描くヒューマンドラマです。

政治や経済、文化や芸術など、さまざまな分野で革新的なムーブメントを起こしてきたニューヨークは、その華麗でエキサイティングなイメージから、夢や憧れの街として、多くの人々の心を捉えてきました。

しかし、夢を叶えた成功者がいる反面、

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いのちの停車場(2021)

いのちの停車場(2021)

死という〈永遠の別れ〉の前に立ち止まる場所
悲しくも温かい在宅医療の現場を描く

“駅”は電車や人の往来をイメージさせますが、“停車場”からは電車や人がひっそりと佇む光景が浮かんできます。

本作でいう“停車場”とは、命が〈ふっと立ち止まる〉場所。そして、動き出した後に向かう先は“死”――。

高齢者医療専門病院の現役医師・南杏子の同名小説を、吉永小百合主演で映画化。古都・金沢を舞台に、小さな在宅

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60歳のラブレター(2009)

60歳のラブレター(2009)

人生の終盤で気づく、本当に大切なこと
かけがえのない人のために贈る渾身のラブレター

3組の熟年のカップルが織り成す味わい深いラブストーリーです。

原案は、三井住友信託銀行が2000年より行っている同名の応募企画。「長年連れ添った夫婦が口に出しては言えない感謝の言葉を1枚のハガキに綴る」というピュアなコンセプトは、すったもんだの大人の世界で疲れ果てた人々の心に響いたのか、企画開始1年で書籍化、2

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フリーダム・ライターズ(2007)

フリーダム・ライターズ(2007)

「書くこと」で自由をつかんだ
熱血教師と移民の高校生たちの感動の記録

近年、ブログやインスタ、YouTubeなど、SNSを通して、自らを発信することで人生を変えている人々が大勢います。それぞれの意見や経験を、それぞれのアイデアで表現した投稿を読んだり、動画を見たりしていると、人間は誰もみな特別で、無限の可能性を秘めているのだ、とつくづく感じます。

この映画は、弱冠23歳の女性教師と無力の高校生

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バベル(2006)

バベル(2006)

21世紀になってなお、バベルの塔を建て続ける人たちへ
メキシコの俊英イニャリトゥ監督が見せる世界の現実

はるか昔、言葉は一つだった。しかし、人間が神に近づくために天にまで届く高い塔を建てようとしたとき、神は人間の驕りに怒り、言葉を乱し、世界をバラバラにした――。

これは旧約聖書の創世記に記されたバベルの街の伝説です。世界がバラバラになったのは、驕りたかぶった人間への天罰だといいます。

それな

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