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100歳の少年と12通の手紙(2009)

限りある人生を精一杯生きる
改めて見つめ直す“人生の意味”

死期が目前に迫った時の悲しみや苦しみは想像を絶しますが、そうなった時、人は何を考え、どう生きていくのでしょうか。この物語の主人公である10歳の少年オスカーは、神に寄り添い、心を成長させることで、わずかに残された日々を謳歌しました。

ひたむきなオスカーが“短くて長い”人生の中で感じ、学んだことは、“人生の意味”を見失いがちな悩める現代人の心に深く響くはずです。

【ストーリー】
白血病で入院中のオスカー(アミール)は余命わずかです。そのため、小児病棟の教室でいたずらしても、先生は叱らないし、両親は我が子の姿を見るのが辛くて見舞いを避けることも。そんな彼を特別視する大人たちに、オスカーは怒っていました。
周囲の大人たちに心を閉ざしたオスカーは、デリバリーピザの女主人ローズ(ミシェル・ラロック)とだけ会いたいと言います。元女子プロレスラーのローズは率直ですが口が悪く、偶然、病院で出会った子どものオスカーにも容赦なく悪態をつきます。しかし、オスカーは彼女が唯一、正直に接してくれる大人と感じたのです。

真実を言えない大人たちと、不自然な彼らの態度に傷つき、反抗するオスカー。両者の苦悩がよく分かるだけに、やるせない冒頭から涙が止まりません。

ローズは院長の依頼で、仕方なくオスカーの話し相手を務めることになりますが、それは年末の12日間の約束でした。オスカーはローズの不注意で自分の死期が短いことを悟り、落ち込みますが、ローズは「これからの1日を10年と考えて過ごすように」と提案します。そうすれば「12日間で120歳まで生きられるから」と。

ローズの提案に励まされ、10代、20代と1日ごとに成長していくオスカー。1日目の10代では思春期ならではの恋を経験します。さまざまな病気の子どもたちを交え、苦い恋の駆け引きを経験したオスカーは、意中の少女ペギー・ブルーと恋人同士になります。

2日目の20代はペギーと結婚、3日目の30代は夫としての責任を痛感し、4日目の40代では浮気、さらに両親との和解や老いなど、12日間の出来事を大人の視点で捉えるオスカーの姿が微笑ましくも、人生についてしみじみ考えさせられ、胸に迫ります。

各世代で直面する問題に悩むオスカーを励ますのは、ローズのプロレスラー時代のエピソード。どんなに屈強な難敵にもひるまず、知恵を絞り、勇気を出して戦うローズのプロレスシーンがコミカルで楽しいです。

少年の死を描く哀しい物語ですが、全体的に明るく、ファンタジックな雰囲気に包まれ、救われます。

人生の出来事と懸命に向き合ったオスカーが、図らずもやっていたのは毎日をしっかりと生きること。オスカーとの出会いを通して、人生を取り戻すローズの姿も感動的です。

監督は、フランス映画『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』('03年)のフランス人劇作家エリック=エマニュエル・シュミット。原作の『神さまとお話しした12通の手紙』もエリックが書いており、世界的ベストセラーを記録しています。

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