100歳の少年と12通の手紙(2009)
限りある人生を精一杯生きる
改めて見つめ直す“人生の意味”
死期が目前に迫った時の悲しみや苦しみは想像を絶しますが、そうなった時、人は何を考え、どう生きていくのでしょうか。この物語の主人公である10歳の少年オスカーは、神に寄り添い、心を成長させることで、わずかに残された日々を謳歌しました。
ひたむきなオスカーが“短くて長い”人生の中で感じ、学んだことは、“人生の意味”を見失いがちな悩める現代人の心に深く響くはずです。
真実を言えない大人たちと、不自然な彼らの態度に傷つき、反抗するオスカー。両者の苦悩がよく分かるだけに、やるせない冒頭から涙が止まりません。
ローズは院長の依頼で、仕方なくオスカーの話し相手を務めることになりますが、それは年末の12日間の約束でした。オスカーはローズの不注意で自分の死期が短いことを悟り、落ち込みますが、ローズは「これからの1日を10年と考えて過ごすように」と提案します。そうすれば「12日間で120歳まで生きられるから」と。
ローズの提案に励まされ、10代、20代と1日ごとに成長していくオスカー。1日目の10代では思春期ならではの恋を経験します。さまざまな病気の子どもたちを交え、苦い恋の駆け引きを経験したオスカーは、意中の少女ペギー・ブルーと恋人同士になります。
2日目の20代はペギーと結婚、3日目の30代は夫としての責任を痛感し、4日目の40代では浮気、さらに両親との和解や老いなど、12日間の出来事を大人の視点で捉えるオスカーの姿が微笑ましくも、人生についてしみじみ考えさせられ、胸に迫ります。
各世代で直面する問題に悩むオスカーを励ますのは、ローズのプロレスラー時代のエピソード。どんなに屈強な難敵にもひるまず、知恵を絞り、勇気を出して戦うローズのプロレスシーンがコミカルで楽しいです。
少年の死を描く哀しい物語ですが、全体的に明るく、ファンタジックな雰囲気に包まれ、救われます。
人生の出来事と懸命に向き合ったオスカーが、図らずもやっていたのは毎日をしっかりと生きること。オスカーとの出会いを通して、人生を取り戻すローズの姿も感動的です。
監督は、フランス映画『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』('03年)のフランス人劇作家エリック=エマニュエル・シュミット。原作の『神さまとお話しした12通の手紙』もエリックが書いており、世界的ベストセラーを記録しています。
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