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読書の前に

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日本人は大麻についてよく知らない件(その3)

日本人は大麻についてよく知らない件(その3)

▼大麻について、「精神科治療学」2020年1月号が特集していた。その紹介を続ける。

同誌はバリバリの専門誌だが、前回メモした、その1、その2を読めば、理解不能なことが書いてあるわけではないことがわかる。

要するに、薬物依存の治療の専門家が、「私たちは大麻について知らないことが多い」と明言しているのだ。

▼知らない、ということを知るところから問題の認識が始まるのは、この世を賢く生きていくための

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「神保町ブックフェスティバル」の代わりに小規模のフリマが行われる件

「神保町ブックフェスティバル」の代わりに小規模のフリマが行われる件

▼1カ月以上前、なじみの神保町の古書店主から「今年は神田古本まつりは中止です」と聞かされ、「神保町ブックフェスティバルも中止です」と追い打ちをかけられ、ガッカリしていた。

▼しかし、神保町ブックフェスティバルのほうは、皆無ではなさそうだ。白水社が声をあげた。

「新文化」の2020年10月19日配信の記事から。

〈白水社が2日間にわたる「神保町ブックフリマ」の出展社を募っている。「神保町ブック

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17歳の藤井聡太氏がいきなり二冠になるかもしれない件

17歳の藤井聡太氏がいきなり二冠になるかもしれない件

▼将棋棋士の藤井聡太氏が、棋聖戦に続き、王位戦でも挑戦者に名乗りを上げた。

〈将棋の藤井七段が王位戦リーグ最終戦に勝利 挑戦者決定戦へ進出〉(東京新聞2020年6月14日 07時09分)

〈将棋の第六十一期王位戦(東京新聞主催)の紅白リーグ最終戦が十三日、東京都渋谷区の将棋会館で六局一斉に指され、白組は藤井聡太七段(17)=写真(右)=が、紅組は永瀬拓矢二冠(27)=同(左)、叡王・王座=がい

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「うわさ」と「インフォデミック」との違いを考える(3)

「うわさ」と「インフォデミック」との違いを考える(3)

▼「情報+伝染」の新語である「インフォデミック」とは具体的に何か。

単なる「うわさ」との違いを踏まえて、松田美佐氏いわく、インフォデミックとは、

1)〈何が「信頼できる情報」なのか、それ自体が争われるような事態〉

であり、

2)〈「信頼できる情報」に対する不信感が増大する状況〉

であり、

3)〈必要な情報が届かないのではなく、届いたとしても、一部の人々には信頼されないという問題なのだ〉

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マスク考(3)~「生活様式」にご用心

マスク考(3)~「生活様式」にご用心

▼前号で、2020年6月1日付の読売新聞に載った斎藤環氏の「コロナ・ピューリタニズム」論を紹介したが、たまたま同じ紙面の下にも、似たテーマのコラムが載っていた。齋藤希史(まれし)氏(東京大教授、中国文学)の連載「翻訳語事情」。

一語ずつ、翻訳語の歴史を解説する、なかなか面白い連載で、この日の翻訳語は

【style▶様式】

〈型にはめようとした歴史 思う〉という見出し。

〈気になるのは、生活

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「アイデンティティー政治」は白人至上主義者の十八番である件

「アイデンティティー政治」は白人至上主義者の十八番である件

▼コロナ・パンデミックの影響で、アメリカでは、トランプ大統領がホワイトハウスの地下壕に一時避難する事態になっている。ウイルスが直接の原因ではない。黒人差別に抗議するデモが大きくなったためだ。

▼まず、概況記事を二つ。

一つは2020年6月1日配信の共同通信。

〈米抗議デモ、各地で暴徒化 首都など40都市で夜間外出禁止〉

〈米中西部ミネソタ州ミネアポリス近郊で黒人男性のジョージ・フロイドさん

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海外ではSNSを殺人の道具として活用している件

海外ではSNSを殺人の道具として活用している件

▼1週間ほど前、「ショー・マスト【ノット】ゴー・オン:日本の「リアリティー・ショー」はタレントを守らない件」と題して、テレビ局はタレントを守らない件をメモした。

▼SNSの誹謗中傷を止める方策は必要だが、誹謗中傷が無くなることはない。取締りをどれだけ厳しくしても、決して無くならない。

そんななかで、「商品」を誹謗中傷の矢面に立たせる、日本のテレビ局の「危機意識の周回遅れ」に疑問を呈する内容だっ

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アメリカのあちこちに「反マスク法」という法律がある件(3)

アメリカのあちこちに「反マスク法」という法律がある件(3)

▼アメリカで、どれだけ経っても黒人差別がなくならないのは、人類学的な理由がある、という話について、もう少し続ける。

興味のある人は、前号、前々号もどうぞ。

▼さて、トッド氏の『移民の運命』では、イングランドから輸入された家族システムや、プロテスタントの教義が、アメリカの差異主義と骨絡(ほねがら)みである、という仮説が示される。

いちいち辿(たど)るのは面倒なので、トッド氏本人が簡単に4つの項

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アメリカのあちこちに「反マスク法」という法律がある件(2)

アメリカのあちこちに「反マスク法」という法律がある件(2)

▼先週の金曜日(2020年5月15日)、下高井戸の駅前で中国製のマスクが「50枚入り1500円」で売っていた。

もともと「50枚入り3000円」のものを、タイムセールということで半額にしていたのだが、タイムセールはしばらく続いていた。この数カ月で、マスクの値段が乱高下している。

▼アメリカのあちこちに「反マスク法」という法律がある、というコラムから、トッド氏の『移民の運命』を思い出した話の続き

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アメリカのあちこちに「反マスク法」という法律がある件(1)

アメリカのあちこちに「反マスク法」という法律がある件(1)

▼新聞を読んでいると、世の中、自分の知らないことだらけだということがよくわかるが、思わず声をあげてしまった記事があった。2020年5月10日付の読売新聞から。中島健太郎アメリカ総局長のコラム。

〈マスクで浮かぶ差別の影〉

〈そもそも、米国の多くの州では理由なしに公共の場でマスクをつけること自体が違法だ。少なくとも18州に「反マスク法」と呼ばれる法律がある。その多くは覆面での白人至上主義団体の活

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日本社会に「QOL(生活の質)」という名の優生思想が浸透しつつある件(2)

日本社会に「QOL(生活の質)」という名の優生思想が浸透しつつある件(2)

▼前号で紹介した、共同通信の記事の続き。

▼「安楽死」という言葉をめぐるイメージが、日本と海外とでは異なる、という。オランダやベルギーでは、知的障害、精神障害、発達障害のある人に対しても、安楽死が行われている。

〈さらに、医療や司法が延命停止を決定する「無益な治療」論も進む。英国では近年、重い障害のある乳幼児の生命維持が裁判所命令で中止され始めた。〉

▼前号で触れた、子どもの子宮摘出も、乳房

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終戦記念日の新聞を読む2019(8)~妹と母を手にかけてしまった体験

終戦記念日の新聞を読む2019(8)~妹と母を手にかけてしまった体験

▼2019年8月15日付の県紙に、村上敏明氏の戦争体験が載っていた。筆者は四国新聞や琉球新報で見た。おそらく共同通信の記事だろう。

数年前、村上氏の告白を新聞で知った。知る人は知っているが、その数は少ない。知らない人は知らないから、繰り返して報道することにも価値がある。見出しは、

〈終戦から74年/11歳、毒で母と妹あやめた/満洲引き揚げ時、心に傷〉

〈あやめた〉というのは、〈殺した〉という

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終戦記念日の新聞を読む2019(4)毎日新聞「余禄」~アジアから見た日本

終戦記念日の新聞を読む2019(4)毎日新聞「余禄」~アジアから見た日本

「終戦記念日のコラムを読む」は、(1)では特攻した少年と親の物語、(2)では原爆被爆者の一言、いわば「虫の目」で見た戦争を、(3)では気候変動などの「鳥の目」で見た戦争や国家を、取り上げた。

▼今号で取り上げるコラムは、気候変動などと比べたら「低空飛行の鳥」の目で見た戦争かもしれない。

▼「戦争を知らない人間は、半分は子供である」という有名な言葉は、大岡昇平がフィリピン戦線の日本軍を描いた傑作

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終戦記念日の新聞を読む2019(3)日本経済新聞「春秋」~敗戦で救われた件

終戦記念日の新聞を読む2019(3)日本経済新聞「春秋」~敗戦で救われた件

▼「終戦記念日のコラムを読む」と題して、1回目は高知新聞の「小社会」を、2回目は愛媛新聞の「地軸」を読んできた。

▼3回目は日本経済新聞の2019年8月15日付「春秋」。

冒頭は、

〈汗、汗、汗。1967年8月公開の映画「日本のいちばん長い日」は、終戦の玉音放送にいたる軍部や政治家の動きを、むんむんする暑さと噴き出す汗の描写で見せきった作品だ。「玉音盤」奪取を試みる陸軍将校の軍服に染みる汗が

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