森往来の日本雑記

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ご覧いただき感謝します。マスメディアをめぐるメモや本の感想。好きな言葉「私たちは政治的過ちから自らを防衛するために、知性や合理主義に信頼することはできないのである」(ロバート・P・エリクセン『第三帝国と宗教 ヒトラーを支持した神学者たち』風行社、2000年)

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法人は個人を守らない話 その4 小学館のプレスリリース、義理と人情の絶妙なバランス

▼人の噂も七十五日、という諺(ことわざ)があるが、SNS時代は、情報の消費スピードが随分はやくなったから、人の噂も7.5日、かも知れない。まるで「シカゴ」の主人公二人の興行が、たった一週間で終わってしまうようなものだ。 以下、適宜改行と太字。 ▼D。〈ドラマ「セクシー田中さん」脚本家・相沢友子氏が追悼「頭が真っ白に」 自身の投稿を反省「深く後悔」/スポーツニッポン2024/2/8 15:46(最終更新 2/8 16:36)〉 〈日本テレビで昨年10月に放送された連続ドラ

    • 法人は個人を守らない話 その3 『これ描いて死ね』が心に刺さる

      ▼とよ田みのる氏の『これ描いて死ね』第5巻と松本大洋氏の『東京ヒゴロ』を読んだ。 両作とも自宅で読んだが、落涙を抑えられなかった。 ▼『東京ヒゴロ』は、編集者とマンガ家の物語。名作である。『これ描いて死ね』は、第5巻の帯や表紙の文言を引用する。 帯〈漫画、その光と影。/光があるから影がある。漫画創作は楽しくて、そして苦しい。夢破れた先生と、夢に向かう生徒たち。漫画と共に生きる物語。/漫画大好き漫画家が描く漫画の漫画!〉 以下、!が幾つも続く。 裏表紙と帯〈生きている

      • 法人は個人を守らない話 その2 小学館の社内向け説明文を読む

        ▼芦原妃名子氏の死について、多くのマンガ家、作家、脚本家たちがSNSにコメントを書いている。今号では、以下の6つの報道やコメントを読んで考えた。適宜抜粋、改行。 A)2024年2月7日/東京スポーツ/小学館の社内説明会の詳報 B)2024年2月7日午後/Business Journal/これまでのまとめ記事 C)2024年2月8日朝/東京スポーツ/小学館「ゼロ回答」の分析 D)2024年2月8日午後/スポーツニッポン/相沢友子氏のコメント報道 E)2024年2月8日

        • 法人は個人を守らない話 芦原妃名子氏の死について

          ▼マンガ家の芦原妃名子(あしはらひなこ)氏が2024年1月29日、亡くなったことが報道された。そのニュースを携帯電話で見た時、思わず声を上げてしまった。それまでの経緯も、携帯電話で見ていたからだ。 ▼芦原氏は『セクシー田中さん』(小学館)というマンガの原作者であり、先日、日本テレビが2023年10月期の枠でドラマ化した。 ▼以下、インターネット内で目にした、価値ある発言を、時系列でメモした。 これは、個別の事例にとどまる話ではなく、構造的な問題であると考える。具体的には

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        • 将棋のメモ
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        • 「移民」大国ニッポン
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        • 『「いいね!」戦争』を読む
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          「根拠が分からないものの拡散に自分は加担しない」という話

          ▼能登半島地震をめぐって、2024年1月8日「北國新聞」に載っていた、兵庫県立大学教授の木村玲欧氏のSNS論を抜粋する。木村氏は京都大学で情報学の博士号をとり、専門は防災心理学や防災教育学。 ▼基本的に「SNSと金儲けと編集者と」で紹介したものと同じだが、 より細かく論じられている。「災害とSNS」について考えるための、現時点での、もっとも簡便な資料だ。適宜改行、太字と【】は引用者。 〈今回の地震で特筆すべきなのは、23年のXの仕様変更に伴い、投稿の表示回数(インプレッ

          「根拠が分からないものの拡散に自分は加担しない」という話

          奥能登へのアクセスを邪魔してはいけない話 「北國新聞」2024年1月9日付を読む

          ▼〈今は命を守るための道/アクセス確保 喫緊の課題〉「北國新聞」2024年1月9日付の1面肩の見出しだ。適宜太字は引用者。 しつこく書くが、今は、自立して動ける人以外、奥能登に車で行くのは控えることをオススメする。ただでさえ、先週末は雪が降った。他人を「支援」しに行ったつもりが、自分が「遭難」するおそれすらある。1月1日からの数日は、気候が穏やかだったのが不幸中の幸いだった。 〈能登半島地震の被災者を救うために実行すべき喫緊の課題は、「奥能登へのアクセス道路」を確保するこ

          奥能登へのアクセスを邪魔してはいけない話 「北國新聞」2024年1月9日付を読む

          能登半島地震報道の局面が変わった話  「北國新聞」2024年1月8日付などを読む

          ▼能登半島地震が起きてから1週間経った。局面は変わった。以下、引用の太字は引用者。 「北國新聞」2024年1月8日付1面肩に、能登半島地震取材班による〈災害関連死 防がねば/「全村避難」ためらわず〉という記事が載った。災害発生直後の救命活動は終わりつつある。 ▼岸田政権の動きが鈍い。石川県の動きも鈍い。これまでの「常識」と比べて、後手後手に回っているように見える。 いっぽう、被災地の最前線の努力の様子も、まだ十全に伝わらない。 ただ、探せば見つかる場合があるのが当世の

          能登半島地震報道の局面が変わった話  「北國新聞」2024年1月8日付などを読む

          まだボランティアに行けないし、行ってはいけないという話(その3) 「北國新聞」2024年1月7日付を読む

          ▼能登半島地震について。2024年1月7日付「北國新聞」28面に、〈能登へ大挙、渋滞さらに/遠方の親戚や知人/知事「 来ないで」呼び掛けも〉という囲み記事があった。適宜引用、太字は引用者。 〈3連休初日となった6日、能登半島地震の被災地に向かう車で国道などがこれまで以上に渋滞した。全国から駆け付けた緊急車両のほか、親戚や知人の無事を確認しようと訪れた石川県外ナンバーの車も大挙。救助活動の遅れを懸念した馳浩知事が5日に「能登への通行はやめてほしい」と呼び掛けたものの、幹線道路

          まだボランティアに行けないし、行ってはいけないという話(その3) 「北國新聞」2024年1月7日付を読む

          まだボランティアに行けないし、行ってはいけないという話(その2) 「北國新聞」2024年1月6日付を読む

          ▼2024年1月6日段階では、能登半島地震について、個人のボランティアは石川県がまだ受け付けていない。到底、受け入れられる状況ではない。 とにかく能登には、今はまだ、来てくれるな、という悲痛なお願いが繰り返されている。昨日メモした「北國新聞」の記事を読めば、その現状がよくわかる。 ▼2024年1月6日付「北國新聞」34面にも、悲痛な記事が載っていた。 〈土砂崩れで家族11人が生き埋めとなった珠洲市仁江(にえ)町の現場では5日、取り残されていた7人が救出されたものの、死亡

          まだボランティアに行けないし、行ってはいけないという話(その2) 「北國新聞」2024年1月6日付を読む

          まだボランティアに行けないし、行ってはいけないという話(その1) 「北國新聞」のルポを読む 2024年1月5日付

          ▼電子版が普及して、実に便利になった。各地のブロック紙・県紙が、携帯電話で読める。 ▼北國新聞によると、のと里山海道は石川県の代わりに国(国交省)が復旧するそうだ。2024年1月5日付。適宜改行、太字は引用者。 〈県によると、のと里山海道と能越道では、県管理区間で大規模崩壊19カ所、段差やひび割れ122カ所の計141カ所が被害を受けた。〉 ▼今週末の天気予報は雪だ。 ▼同紙1面の見出しは、能登半島地震が、これまで日本社会が経験したことのない大震災であることを物語ってい

          まだボランティアに行けないし、行ってはいけないという話(その1) 「北國新聞」のルポを読む 2024年1月5日付

          SNSと金儲けと編集者と

          ▼2024年1月1日に起きた能登半島の大地震をめぐるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の惨状について。 断続的に旧Twitter(ツイッター、現X(エックス))を見ていたが、ゴミ情報や害悪が急増している。デマの拡散がひどい。災害時にはデマが増える、という法則は正しいと実感した。 ▼この状況は、これから災害が起きるたびに、どんどんひどくなるだろう。SNSで人生の時間を無駄遣いしないために、必要な心得は二つある。 ひとつ、インプットする人は、 「SNSは金儲け

          SNSと金儲けと編集者と

          コロナ禍で浮き彫りになった感染症差別の話

          ▼感染症差別といっても、今号は、新型コロナウイルスの患者が差別される話ではない。 ▼コロナ禍という世界的な出来事を強烈に相対化する記事が2023年5月9日付「朝日新聞」に載っていた。 〈ピーター・サンズ「グローバルファンド」事務局長に聞く 上/コロナで後退 3大感染症(エイズ・結核・マラリア)の克服を/中低所得国では後回しにされ 今なお流行/何十万もの子どもの死 手段あるのに座視〉 ▼一言でいうと、ここ3年間のコロナ禍対策によって、3大感染症(エイズ、結核、マラリア)の

          コロナ禍で浮き彫りになった感染症差別の話

          ウクライナ戦争は「アメリカが管理する戦争」である話

          ▼10日ほど前、ドイツの戦車をウクライナに供与するかどうか、が日本語の国際ニュースの大きな話題になっていた。これは「西側」の利害に大きく関わるから、ニュースの扱いが大きくなる。 そして、ドイツが戦車を供与するかどうかは、「ウクライナ戦争が長期化するかどうか」に関係する。ドイツはアメリカと話し合った後、供与すると決めた。ウクライナ戦争が終わる兆しは無い。 ▼最近のニュースから2つ。共同通信とNHK。 まず、共同通信。このニュースを読んで筆者は、ウクライナ戦争は「アメリカが

          ウクライナ戦争は「アメリカが管理する戦争」である話

          王将戦で「みんなAIに振り回されすぎ」るだろう話

          ▼いよいよ将棋の第72期王将戦が始まる。きょう2023年1月8日からだ。 20歳の藤井聡太五冠に、52歳の羽生善治九段が挑戦する。 羽生氏が王将に返り咲けば、タイトル通算100期という大記録である。「夢の対決」とか「黄金カード」とか言われているが、それらは大げさな表現ではない。2023年の時点で、これ以上に将棋ファンが盛り上がる対戦カードは存在しない。2023年1月7日配信の毎日新聞記事から。適宜改行と【】太字。 〈令和と平成の「王者」、タイトル戦で初対決 王将戦、8日

          王将戦で「みんなAIに振り回されすぎ」るだろう話

          「アマゾン」の「あとで買う」機能がとても便利な話

          ▼新刊本を買う時、アマゾンの「あとで買う」機能はとても便利だ。「あとで買う」の一覧が、たとえ100冊を超えても、筆者のデスクトップで閲覧すると、1列に8冊の表紙が並び、次々と眺めることができて、とても一覧性が高い。 ▼アマゾンの「この商品を見た後に買っているのは?」機能なども、思いもよらない本が出てきて、面白い。それらのなかで、気になったものを「カート」に入れて、「あとで買う」ボタンを押せば、あっという間に「買いたい本一覧」に追加されるわけだ。 ▼尤(もっと)も、実際に本

          「アマゾン」の「あとで買う」機能がとても便利な話

          「鬼滅の刃」が人身売買を考えるきっかけになっている話

          ▼大ヒットマンガ「鬼滅の刃」をめぐる面白い記事があった。2022年1月6日付東京新聞夕刊〈吉原観光 若者も全集中〉。太田理英子記者。 「鬼滅の刃」の人気によって、「吉原」の遊郭跡、つまり人身売買の歴史に光が当たっているそうだ。 〈江戸時代に幕府公認の遊郭として栄え、華やかな文化が花開いた吉原(東京都台東区)の歴史が観光資源として注目されている。(中略)街歩きする若者や親子連れが増えた〉という。 ▼「鬼滅の刃」のアニメ版「遊郭編」は、2021年12月から放送が始まった。u

          「鬼滅の刃」が人身売買を考えるきっかけになっている話