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熊本からの来訪者たち:『三四郎』と『ガールズバンドクライ』
「熊本」という偶然?の一致 このページはある一致からスタートする。ガールズバンドクライともうひとつの作品をつなぐ一致から。
そのもうひとつの作品とは、タイトルにもある通り『三四郎』。夏目漱石が1908年に発表した小説だ。
この『三四郎』という作品の主人公三四郎は、熊本から東京に出てくる。熊本は『ガールズバンドクライ』の主人公、井芹仁菜の故郷でもある。また三四郎は、熊本から東京の大学に通う
ガールズバンドクライ考察 ルパが「喧嘩」の中で求めているもの
「喧嘩上等」なルパ トゲナシトゲアリのベースを担うルパは、他の誰かが「喧嘩」しているのを見たがるキャラクターだ。実際に彼女が、バンドの他の面々が争う様子をどことなく楽しげな様子で眺めている場面は、ガルクラの全編にわたって散見する。その振る舞いは、一種の愉悦を求めるキャラクターと映らなくもない。
けれども、彼女が「喧嘩上等」を標ぼうするとき、それは必ずしもただ喧嘩を見るのが楽しいから、というだ
ガルクラ第12話 仁菜の「知らない」がゆえの強さと危うさ
第12話では、これまで描かれてこなかった仁菜のある側面が、それとなく描写されている。それはある意味、彼女の弱点と言ってもいい側面だ。
仁菜は、理想と現実の衝突を、本当の意味ではまだ経験していない。学校で現実と衝突したときと、今とでは明らかにちがっていることがひとつある。それは今では彼女が、桃香の歌を歌うという理想とともにあるということである。この理想と現実が実際に衝突をきたすという点は、こ
ガルクラ第8話 言葉はどんなふうに「生きる」のか まちがっていないまちがいについて
「言葉は生き物である」という言葉がある。このページは、ガールズバンドクライという作品を手がかりに、この言葉の意味を、特に言葉が生きるとはどういうことなのかを考えようとしている。
繰り返すけど、「言葉は生き物である」という言葉がある。
最近は、言葉遣いのまちがいを(悪い言い方をすれば)正当化するために、この言葉が用いられることがある。
たとえば「延々と」という副詞。最近はYouTube
ガルクラ「空白とカタルシス」MV感想 二次元とCGの使い分けに注目して
この感想は以前書かれたものを下敷きにして、「空白とカタルシス」のMVについてどんなことが言えるか、を考えようとしている。
そこでは、第7,8話について考えられていた。<二次元⇔CG>の違いは、<過去⇔現在>あるいは<幻想⇔現実>という対立に対応している、という考えを、仁菜と桃香の回想を手掛かりにして考察したのだった。
以下はこの観点をもとにして話を進めている。このMVの二次元とCG
安和すばるはどんなふうに「嘘つき」なのか? ガルクラ第4,6,11話
はじめに
ガールズバンドクライのキャラクターたちは、それぞれに特有の鬱屈を抱えているけれども、安和すばるのそれは「嘘つき」であることだ。この「嘘つき」というキャラ付け、一見したところ他メンバーたちと比べて、特徴として弱く映るかもしれない。学校中退やら南アジア系で天涯孤独といった背景を負った他の面々と比べると、崖っぷち具合もさほど深刻ではないように見える。「安」と「和」という苗字が象徴するように
感情移入の2つのタイプ ガールズバンドクライ第8話を例にとって
仁菜は「空の箱」が背中を押してくれたと言う。けれど、それはいったいどういうことを意味しているんだろう? こんなことも言う、「なんかいちばん行き詰ったときに聞いて。今の自分の気持ちを、そのまま歌ってる、って。…負けちゃだめだって(第1話)」。
こういった状態というか現象というかを指すのにぴたりとくるワードがあるだろう。感情移入。
このページは感情移入とは何なのかをまず考えて、その考えをもと
ガルクラ第10話 すれ違うことはきっと「まちがっていない」
正直に言って、この感想を書いていくにあたって、感じたことをうまく言葉にのせられる自信がない。言い足りないところ、まちがっていると思えるところも多々あると思う。
勝手を言うけれど、できればそういう部分を、読んでくれる皆さんのなかで補い、あるいは訂正していってくれると嬉しい。ここに書かれるのは、親がどう見えるのか、無数にあるだろうその見え方のうちの、ささやかなひとつだと思ってほしい。
なぜ親
ガルクラ第3話 「ループマシン」が意味するもの、あるいはむしろ意味しないものについて
「ループマシン」について愚痴りたい。つまり、ガルクラ第3話には、これでもかと「ループ」が、「繰り返し」が登場しているんじゃないか、ということ。いくつも、さまざまなレベルで、「ループ」とか「反復」とか、言ってみれば、「繰り返し」が起こっているのではないか? という……
というのもこの第3話、やたらいわゆる「天丼」的な要素が多い。そこに「ループマシン」なんていう小道具を桃香が持ち込んできたものだ