刹那的たまゆらエセー:失楽園の知らない私
同じ歌を何度も執拗に聞き返しているのは、それが与えた痛みを薄めようと欲しているようでもあれば、もう一度痛みを欲しているようでもあり、二つの欲望のあいだを揺れることで生じる酩酊を、欲しているようでもある。
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自分の心の状況をそのままに体現しているような作品に出会うことはない。人が作品に自分を重ねるとき、たいていはどこかがズレている。たいてい作品の中の美しい部分が、私たちに重なってくれないのだ。このズレが存在しないと錯覚することが、私たちのなかに快い感情、自分が浄化されるよ