記事一覧
マイクロノベル集 334「なにを言ってるんだ、君は」
No.1821
言葉が通じなくなったからと言って、あなた以外の者に問題があるとは限らない。あなた自身に問題があるかもしれないのだ。「でも、ぼくは見てしまったんだ。昨日、お母さんの背中にあるチャックを」君にはないのかい? 「そりゃあ、もちろんあるけど」えっ。
No.1822
会話が通じなくなっちゃったんだ。あうんの呼吸、美しいハーモニーを奏でられる友達だったのに。「木の裏側に広がる雲の中を進み、エ
マイクロノベル集 333「病ってほどじゃない」
No.1816
「すみません、すぐ修理します」アパートの管理会社が寄越した男が廊下をひっくり返す。カサブタを剥がすみたいで気持ちよさそうだな、と隣室の女。男は床に絆創膏そっくりなテープを貼る。夜に歩くと床が鳴るので連絡したんだ。もう完治はしないそうだ。
No.1817
「もう一度言ってもらえますか」告げられた病名が聞き取れなかったのだが、医者は残念そうに首を振る。「あなたは進行が早い。こちらへ」
マイクロノベル集 332「人類の新しいお仕事」
No.1811
窓から颯爽と入り込んだ猫。スッと蛇口に手を当てると滝のような水が! この勢いならプールに水を張るのも一瞬だ!! 「人類よ、新しい仕事を始めなさい。この水を止められたくなければ、最上級のツナ缶を捧げよ」水道代はうち持ちなんだよね。キュッ。
No.1812
お母さんは、ぼくが観ているアニメをいつも「つまんない」って馬鹿にするんだ。でも、本当に考えて喋っているのかな。だって、今日は「ア
マイクロノベル集 331「この物語はまだ始まっていない」
No.1806
川はどこから来るの? 「さあ。山で水が湧くのかな」どうして水が湧くの? 「さあ。山に染み込んだ雨が出てくるんじゃないかな」雨雲はどこから来るの? 「さあ」そう言って、お爺ちゃんは雲みたいな煙草の煙を吐いた。「これはね、煙に巻くってヤツだよ」
No.1807
むかしむかしのお話。お爺さんとお婆さんが住んでいました。お爺さんは川へ洗濯に。すると、どんぶらこどんぶらこ、お婆さんが流れて
マイクロノベル集 330「滅びて❤️」
No.1801
今朝の星座占いによると、ぼくは死ぬらしい。ぼくだけじゃない。六月生まれが一斉に命を失うんだって。どうしてこんなことに! どうしてだっけ? いまなにを考えてたっけ? 「スマホの動作が鈍くなってきたし、そろそろ機種変しなきゃ」南無阿弥陀仏。
No.1802
風が強い。山に登るのはやめておけ。こんな日は雲が早く流れて、木々が揺れる。もし、空を覆う青いカーテンが揺れたなら。お前は大きな手
マイクロノベル集 329「話は聞かせてもらった!」
No.1796
話は聞かせてもらった。「ほうほう。どんな話をお聞きになられましたかな?」いやですよ、お爺さん。ご飯はさっき食べたでしょ。「そうだったかのう」という話を聞かせてもらった。「ほうほう。どんな話をお聞きになられましたかな?」いやですよ、お爺さん。
No.1797
「話は聞かせてもらった! 食べた栄養がすべて腹の肉になっているのではないか。そう疑っているのだな!」そうなんだよ、胃袋さん。
マイクロノベル集 326「知らない場所で……」
No.1781
学校からの帰り道、知らない路地を見つけた。家に帰っても宿題をするだけだし、ちょっとした冒険のつもりで入ったけれど、路地はすぐ終わって、フェンス越しに学校の校舎が見えた。「おい、そこでなにしてる」鋭い声に逃げ出した。学校にフェンスなんかない。
No.1782
酔っ払った時にだけたどり着けるアイス屋がある。コンビニに向かっていたはずが、知らない風景。慌てて引き返すとその店が見つかる。
マイクロノベル集 323「助けが来た?」
No.1766
こんにちは、ぬいぐるみです。休みたいのにミキちゃんが放してくれません。「今日の占い。ぬいぐるみを椅子に座らせて、一日キープできたらラッキーデイ!」こんにちは。お父さんが仕事机からぼくを投げ捨てて、ミキちゃんがギャン泣きしています。助けて。
No.1767
お爺ちゃんの庭から声がする。探してみたら小さな穴が見つかった。お爺ちゃんは素早く魚をさばいて、内臓を取り除く。「ネズミの巣だよ
マイクロノベル集 322「戦いは続く!」
No.1761
ぼくはエアコンのスイッチを入れる。なぜって、うちの庭には永久凍土があって、そこから魔王が現れたんだ。「ここで待たせてもらうぞ」さらに勇者も現れた。「さあ、決着をつけよう!」でも、さらわれたお姫様がまだ凍ってるんだ。はやく結末が観たいのに。
No.1762
この猿は舌や声帯が改造されて、言葉を話せます。でも、脳は猿のまま。言葉の意味は理解していません。さて、ここで問題です。この猿は