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マイクロノベル集 333「病ってほどじゃない」

No.1816
「すみません、すぐ修理します」アパートの管理会社が寄越した男が廊下をひっくり返す。カサブタを剥がすみたいで気持ちよさそうだな、と隣室の女。男は床に絆創膏そっくりなテープを貼る。夜に歩くと床が鳴るので連絡したんだ。もう完治はしないそうだ。


No.1817
「もう一度言ってもらえますか」告げられた病名が聞き取れなかったのだが、医者は残念そうに首を振る。「あなたは進行が早い。こちらへ」奥の部屋にはベランダがあり、海が広がっていた。「船かクジラが見つかったら声をかけて下さい」まだ、なにも来ない。


No.1818
クローンで作られたぼくたちには個性がない。顔が同じ。受けた教育も同じ。どうにか抜け出そうと努力をしても、すぐ真似されて同じになっちゃう! どうしたらいいと思う? 「他人の真似をしなきゃいいじゃん」向上心がない個体を発見した。即、処分する。


No.1819
これこそがヨガの奥義。わずか二十年で習得するとは、師として喜びである。「絶対に許さねぇぞ!」悪い霊が取り憑いているな、と思っていたのだが。「体が硬いこいつの背中に取り憑いて四十年、あと少しで野望が叶ったのに!」言ってくれたら取ってあげたのに。


※noteだけで読める、このマイクロノベル集の続きはこちら。




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