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+1 マイクロノベル鱗

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noteだけの書き下ろしマイクロノベルです。 不定期更新。マガジンの表紙画像は、ぼくの祖母が描いた絵。
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記事一覧

+1 マイクロノベル鱗「母の日に聞いた話」

+1 マイクロノベル鱗「母の日に聞いた話」

マイクロノベルNo.1730
「母の日に聞いた話」

積立貯金みたいなものなんだってさ。ちょっとずつ、ちょっとずつ。お父さんたちは、毎年感謝の気持ちを贈ったんだ。だから返ってきたよ。今年は、叔母さんが贈った花だね。母の日に贈ったものが、こうやって、ちょっとずつ、ちょっとずつ、返ってくるんだよ。

+1 マイクロノベル鱗「ここは宇宙の果てじゃないけれど」

+1 マイクロノベル鱗「ここは宇宙の果てじゃないけれど」

マイクロノベルNo.1720
「ここは宇宙の果てじゃないけれど」

時間の流れは場所によってちがうんだ。宇宙の果てやブラックホールだけの話じゃない。こうしている、きみとぼくのあいだでもね。ときどきズレを修正しているんだよ。ほら、空を見て。あれはぜんぶ同じ雲だよ。正しい時間までシークされている途中なのさ。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「私はどう思っているのかな?」

+1 マイクロノベル鱗「私はどう思っているのかな?」

マイクロノベルNo.1715
「私はどう思っているのかな?」

人間ってなにを考えているか解らないところがあるでしょ。そうよ、人間同士でも不可解なの。ましてやこれだけ年齢が違うとね。気持ちがすれ違うの。AIのウサギさん、通訳をお願いできる? 「なあんだ。ミキちゃん、おばあちゃんは『一緒にあそぼう』だってさ」

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「飛べない夢の話」

+1 マイクロノベル鱗「飛べない夢の話」

マイクロノベルNo.1710
「飛べない夢の話」

空を飛ぶ夢を見たよ。でも、うまく飛べなくて、もたもたしているうちに目が覚めちゃったんだ。水の中にそっくりで、雲が綺麗だった。高いところから、おじいちゃんとおばあちゃんを見たよ。びっくりしてた。えっ、ぼくを見たの? じゃあ写真を送って。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「あがり、ってヤツ」

+1 マイクロノベル鱗「あがり、ってヤツ」

マイクロノベルNo.1705
「あがり、ってヤツ」

ぼくはついに世界の脱出口を見つけたよ。アイテムで通過できるタイプじゃなくて、時間経過がファクターだったんだよ。次の世界はどんな場所だろうね。緑の大地か、科学の世界か。それとも、どれだけ工事をしても完成しないディストピア? 楽しみだね。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「物語の結末は人それぞれ」

+1 マイクロノベル鱗「物語の結末は人それぞれ」

マイクロノベルNo.1700
「物語の結末は人それぞれ」

『灰被り』を知ってる? 少女が魔法使いに助けられて本物のお姫様になるのよ。わたしのお母さんはこの物語を少し作り変えていてね。だから、王子様とお姫様の間に生まれたわたしがシンデレラだって、ずっと信じていたの。あなたの『灰被り』は、どんなお話?

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「もし、君の心が動かなくなったなら」

+1 マイクロノベル鱗「もし、君の心が動かなくなったなら」

マイクロノベルNo.1695
「もし、君の心が動かなくなったなら」

やあ、ひさしぶりだね。ぼく? あいかわらずだよ。君は少し変わってしまったみたいだね。なあに、自分がなにをしたいかなんて、すぐに思い出すさ。ぼくのように太陽の光を浴びて、ただパタパタ回って楽しんでいればね。君もむかしはそうだったじゃないか。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「まずはなにをしようか?」

+1 マイクロノベル鱗「まずはなにをしようか?」

マイクロノベルNo.1690
「まずはなにをしようか?」

晴れた朝の私は元気があるの。風見鶏のように太陽を追いかけて光を蓄えた夜は、一緒に踊り明かそう。月夜から夜明けまで。私の光がピアノの鍵盤を揺らして、あなたが歌い飽きるまで。ふたりに必要な物は私が用意するわ。だから朝が来るまで帰らないで。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「ご縁は鉢植えの緑から」

+1 マイクロノベル鱗「ご縁は鉢植えの緑から」

マイクロノベルNo.1685
「ご縁は鉢植えの緑から」

よう、兄弟。鉢からまた芽が出たよ。なんの芽かは知らない。ただ、母さんが遺言で「これだけは絶対に捨てないでくれ」と言い残したんだ。家族は捨てればいいって言うけど、遺言じゃあ仕方がない。お前は今日もこれを食べに来たのか。もううちの子になるかい?

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「イフタフ ヤー スィムスィム」

+1 マイクロノベル鱗「イフタフ ヤー スィムスィム」

マイクロノベルNo.1680
「ひらけ、ゴマ!」

これは入り口です。神社の鳥居、遊園地のアーチ、コンピュータの起動画面……。パスワードを入力すれば、ここから先は別世界。今、あなたの魂は光回線を通じてゲートを突破し、変換された。ようこそ、なにもない現実世界へ。美しい天地の創造主たらんことを。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「それは、声ですらなく」

+1 マイクロノベル鱗「それは、声ですらなく」

マイクロノベルNo.1675
「それは、声ですらなく」

君の目はこの世界を見たくないのかもしれないよ。錯視ってあるだろう。線の正確な長さがわからない。あるはずの物が見えない。もしかしたら、誰にも見えていない――そんな物すらあるのかも。ぼくの声が聞こえるなら応答してくれ。言葉でなくてもかまわない。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「『架空の悪魔』は犬を入れる」

+1 マイクロノベル鱗「『架空の悪魔』は犬を入れる」

マイクロノベルNo.1670
「『架空の悪魔』は犬を入れる」

学習データを作るなんて簡単さ。物を教える相手が人間でも機械でも大差ないからね。もちろん、犬だってね。犬に人間の学問を教えて、箱の中に入れて……はい、AIのできあがり。俺は『架空の悪魔』。知識なんてまやかし。そう悟らせるために存在するのさ。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「悪魔を増やす方法」

+1 マイクロノベル鱗「悪魔を増やす方法」

マイクロノベルNo.1665
「悪魔を増やす方法」

子供には親切にするんだ。最近は悪魔なんて流行らないから、良さを知ってもらわないとね。「悪魔おじちゃん、おはよう」おや、ヒモが切れてマスクが外れているよ。新品があるから、これを使いなさい。そうだよ、口からこわーい悪魔が入って来ちゃうからね。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。

+1 マイクロノベル鱗「悪魔の空虚な提案」

+1 マイクロノベル鱗「悪魔の空虚な提案」

マイクロノベルNo.1660
「悪魔の空虚な提案」

悪魔に人の心がわかるのか、だって? それはお互い様。ただ、ぼくたちは勤勉なんだ。人間から欲望をたくさん教えてもらったよ。その呪いから解放されたくはないかい? クリーンになろうよ。もしなにも残らなかったなら、最初からなにもなかったってことさ。

※このマイクロノベルの前の物語はこちら。