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マイクロノベル集 328「水の中から」

No.1791
「コンビニで金魚を買ってきた」見れば、透明なカップの中をひらひらと泳いでいる。飼うのかい? 「まさか」手品のようにパッと一気飲み。美味しいの? 「味ってほどのものはしないね」けらけら笑う。まさか、こいつの尻から生えてるしっぽのようなアレは。


No.1792
雨の日に、水溜まりの中を魚が泳いでいた。「おい、オレを見逃せ。オレはこれからもっと大きくなる」雨が激しさを増して、水溜まりは大きくなり、魚の数も増えた。「旧人類と言えど、もうオレたちに手は出せないぜ。あっ」通りかかった車が水溜まりをはねた。


No.1793
おい、小僧。オレの話を聞け。そうとも、オレは石ころだ。こらっ、石蹴りなんて野蛮で原始的な遊びはやめろ。太古の時代から偉大な存在であった石は人間を助けてきた。今では小僧でも投げられるほど小さくなってしまったが……おい、やめろ。ぶくぶくぶく。


No.1794
勘違いするな。地球に海があるんじゃない。海の中に地球が沈んでいるんだ。信じられないか? なら、この番号に電話をかけてみろ。そうだ、着信音が聞こえるな。いま、防波堤の上で振動する地球がジリジリと移動し、ぼちゃん! うん、本当はお前のスマホだ。


※noteだけで読める、このマイクロノベル集の続きはこちら。




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