マイクロノベル集 326「知らない場所で……」
No.1781
学校からの帰り道、知らない路地を見つけた。家に帰っても宿題をするだけだし、ちょっとした冒険のつもりで入ったけれど、路地はすぐ終わって、フェンス越しに学校の校舎が見えた。「おい、そこでなにしてる」鋭い声に逃げ出した。学校にフェンスなんかない。
No.1782
酔っ払った時にだけたどり着けるアイス屋がある。コンビニに向かっていたはずが、知らない風景。慌てて引き返すとその店が見つかる。冷蔵庫から缶ビールを持って来た、八歳の娘が話してくれた。どうして知ってるの? 「お父さんと行ったでしょ」おっとっと。
No.1783
「お前を知っているぞ。俺はお前が見たこともない場所で暮らしているがな。昨夜は言いつけを破って夜中にご飯を食べたな」すみません、すみません。胃カメラの最中にアテレコするのはやめてください。「おっと邪魔が入ったようだ。十二指腸まで行ってみるか」
No.1784
キッチンの蛇口から猫が出てきた。ずぶ濡れで、とっても不満そう。バスタオルで拭いてあげたら。「一つ願いを叶えてやろう」お父さんとお母さんと一緒に話し合ったんだけど、願い事はまだ決まらない。「まだか?」退屈そうなあくび。あと二十年くらい待って。
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