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読書・講演記録

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#読書感想文

二デック(旧日本電産)の永守重信会長「運をつかむ」を読んで、なぜ経営者は験担ぎをするのかを少し理解する

二デック(旧日本電産)の永守重信会長「運をつかむ」を読んで、なぜ経営者は験担ぎをするのかを少し理解する

なぜ多くの経営者は手相占い、神社の参拝等、自分を超越した存在により縋ることが多いのか。

その思考回路の一端について、二デック会長・永守会長の著書「運をつかむ」を読んで少し理解ができた気がした。

永守会長の人生観は、「運が7割、実力が3割」というものである。

ここで重要なのは、始めから運任せにして7割の成功が自然にやってくるのでではなく、自力で3割の努力を積み上げた上で、運の7割がやってくる、

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「ソニー再生」を読んで、平井一夫元CEOは「貞観政要」の君主像の生き写しだと思わされた

「ソニー再生」を読んで、平井一夫元CEOは「貞観政要」の君主像の生き写しだと思わされた

ソニーの元CEO、平井一夫氏の著作「ソニー再生」を読んだ。

平井一夫氏はソニー在籍中、ソニーグループ3社の事業再生を手がけた、事業再生請負人である。

最初はわずか35歳にしてアメリカのサンフランシスコの南にあるフォスター・シティにあるソニー・コンピュータ・エンターテインメント・アメリカの事業再生を手がけた。

その後日本に戻ってからは(正確には、生活の拠点である米国か家族を残して日本に単身赴任

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永井荷風の「吾妻橋」を読んで、いつか港区女子文学・パパ活文学が生まれることを期待する

永井荷風の「吾妻橋」を読んで、いつか港区女子文学・パパ活文学が生まれることを期待する

永井荷風といえば、「あめりか物語」や「ふらんす物語」など、高等遊民的な立場で海外での生活を記した文学作品が有名だ。そんな永井荷風が戦後に書いた短編小説集・随筆集を読んだ(上記リンクご参照)。

合計18の作品が掲載されていたのだが、中でも目を引いたのは、現代でいう「パパ活」を行なっていた女性を主人公とした作品「裸体」「吾妻橋」だ。

戦後の永井荷風はよく浅草の街を歩き、ストリップ劇場の踊り子たちと

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内村鑑三著「代表的日本人」を読んで二宮金次郎のビジネスセンスとリーダーの才覚を知る

内村鑑三著「代表的日本人」を読んで二宮金次郎のビジネスセンスとリーダーの才覚を知る

キリスト教を日本に広く普及させたことで有名な思想家・内村鑑三の著作、「代表的日本人」を読んだ。

内村鑑三は本書を通じて、日本が海外いに誇る代表的・模範的な日本人として西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮の5名の生き様を詳細に記している。

5名全員、私利私欲に滅し、驕ることなくひたすら周囲の人や社会、国家のために自身を捧げた素晴らしい生涯を送った点は共通している。

が、中でも二宮尊徳(

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藤田田(でん)氏の著作、「ユダヤの商法」と「勝てば官軍」を読んだ感想

藤田田(でん)氏の著作、「ユダヤの商法」と「勝てば官軍」を読んだ感想

日本マクドナルドの創設者であり、若き日の孫正義氏に「米国ではITを学んできなさい」と助言を行った故・藤田田氏のベストセラー2冊を読んだ。

結論、あまりにも情緒的・感情的な記述が多く、また「欧米は凄いのに日本は全くダメ」といった西高東低論が次々と展開され、中には差別的発言や品のない表現が多く、後味の悪い著作であったことは否めない。

だが、この方がいなければ孫正義氏は米国でITでの起業をせず、ソフ

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名残惜しさを押し殺して帰る子供たちの姿に「いきの構造」の一端を垣間見た

名残惜しさを押し殺して帰る子供たちの姿に「いきの構造」の一端を垣間見た

「いき」とは男女の異性関係において見出される構造であり、その構造について「媚態」「意気地」「諦め」のプロセスを通じて「色気」の正体を語ったのが明治から昭和の時代を生きた高等遊民・九鬼周造の著作"「いき」の構造"である。

稚拙な説明を容赦いただきたいが、「媚態」とは好きな異性に近づき好意を示すこと、「意気地」とはもっと好きな異性に近づきたいけれど強がって近づかないツンデレになること、「諦め」とは好

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「ニュータイプの時代」を読んで感じた自分の日常に対する違和感

「ニュータイプの時代」を読んで感じた自分の日常に対する違和感

2019年4月に出版されたニュータイプの時代を今更ながら読んだ後、自分の職場の周りに21世紀型のニュータイプがいるかどうか思いを巡らせたが、自分も含めて一人もいなかったことに驚愕した。

オールドタイプは顕在化している課題について対処する一方、ニュータイプはそもそもの課題を発見する。

オールドタイプは論理性を皆と同じ正解を探すが、ニュータイプはありたい姿を構想しながら未来を創り出す。

オールド

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親鸞の歎異抄を読んで現代に生まれて良かったと感じる

親鸞の歎異抄を読んで現代に生まれて良かったと感じる

「南無阿弥陀仏(ナムアミダブツ)と唱えれば善人・悪人に関わらず誰でも極楽浄土に行ける」「ただし極楽に行けるかどうかは仏次第。自分自身で決められることではない」という簡易で明快な思想の下、鎌倉中期以降に浄土真宗を急速に読に広めた親鸞。

当時は現世で生きることが辛く、せめて死後の世界が良いものであるようにと望む者が多かったからこそ普及したのだろう。

現代でも死後の世界について信じる者はいるものの、

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福翁自伝(福沢諭吉著、現代語訳)を読んだ

福翁自伝(福沢諭吉著、現代語訳)を読んだ

日本国紙幣のうち最も高額である一万円札の顔である福沢諭吉。この度一万円札の顔が渋沢栄一に変わることに伴い、福沢諭吉の著作である「福翁自伝(現代語訳)」を読んでみて、改めてどんな人物であったのかを自伝を通して探ってみた。

佐賀県唐津市というやや閉鎖的で封建的な社会の中で生まれ育った諭吉は、神社の御神体の石を他の路傍の石と交換し、神の罰当たりは存在しないと確証した少年時代を送った。その後は酒に浸りま

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「死人は無敵だ」論と坂口安吾の「堕落論」から見る、「27クラブ」「ダブリンの市民」そして「春琴抄」について

「死人は無敵だ」論と坂口安吾の「堕落論」から見る、「27クラブ」「ダブリンの市民」そして「春琴抄」について

1.「死人に口無し」の別の意味について

(かなり古い漫画の話題で恐れ入ります)高橋留美子作の漫画「めぞん一刻」の序盤で、主人公の五代裕作がこんな独白を行ったシーンがあった。

アパートの管理人、音無響子に一目惚れをした五代裕作。自分の最大の恋敵は現在生きている者ではなく、故人である音無惣一郎氏であったことを知った時の独白である。

音無惣一郎氏が生きていれば、音無響子が一緒に生活をするにつれ嫌な

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「ネット興亡記 敗れざる者たち」を読んで起業のヒントを学ぶ

「ネット興亡記 敗れざる者たち」を読んで起業のヒントを学ぶ

今となっては大手となったIT企業の起業当初の秘話や、日本ではどうやって・誰がインターネット産業を作ってきたのか、が学べる名著「ネット興亡記」を読んだ。

サイバーエージェント、インターネットイニシアティブジャパン、楽天、NTTドコモのi-mode、Yahoo! JAPAN、ソフトバンク、ライブドア、LINE、mixi、アマゾンジャパン、Facebook日本法人、メルカリ、USEN、GMO、そしてこ

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「シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント」の名言をまとめてみた

「シリコンバレー最重要思想家ナヴァル・ラヴィカント」の名言をまとめてみた

著者の過去ツイートがまとめられた本であり、短文の箴言が並べられた本である。以下、名言だと思った箇所を記載しておきたい。
https://www.sunmark.co.jp/detail.php?csid=3979-5

なお、以下リンクにて全文が無料で公開されています。

https://www.sunmark.co.jp/book_files/pdf/978-4-7631-3979-5.pdf

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30代後半の主人公の悲哀が少し理解できる田山花袋著「蒲団」

30代後半の主人公の悲哀が少し理解できる田山花袋著「蒲団」

群馬県が誇る文豪・田山花袋の代表作「蒲団」を読んだ。30代も半ばに差し掛かり、すでに男性としての魅力は失われ生活に華がない、とは言え既に結婚もして子供も授かり、これから徐々に老いていくのだろうと有る意味男としての人生を諦めかけていたごくごく普通の男性が主人公である。ところが、こうした華のない生活が突如として一変する。自分のことを「先生、先生」と慕ってくれる可愛い一回り下の女性が寄ってくるのだ。自分

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「銃・病原菌・鉄」を読んで、農耕民族と狩猟民族の違いについて考える

「銃・病原菌・鉄」を読んで、農耕民族と狩猟民族の違いについて考える

はるか昔の学生時代、米国西海岸にてコンサルタントとして働く日本人の方のセミナーを受講したことがあったが、その中でその講師の方が言っていた興味深い発言があった。それは
「日本人のルーツは農耕民族だが欧米人のルーツは狩猟民族。だから思考も行動様式も異なる。農耕民族は控え目で意思決定も遅い一方、狩猟民族は主張が強く、意思決定も早い。これからの世界では狩猟民族型の思考を身につけなければならない」
といった

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