マガジンのカバー画像

特集 おすすめ本

15
読んでぜひオススメしたい!と思った本を紹介します。
運営しているクリエイター

記事一覧

ブックオフ愛が爆発したエッセー集。/『ブックオフ大学ぶらぶら学部』島田潤一郎ほか

ブックオフ愛が爆発したエッセー集。/『ブックオフ大学ぶらぶら学部』島田潤一郎ほか

「あなたにとってブックオフとは?」

NHKの某番組のような問いかけで始まるこの本は、ライターの武田砂鉄さんや京都のホホホ座の山下賢二さん等が自身のブックオフ愛について語るエッセー集。ひとり出版社でおなじみの夏葉社の島田潤一郎さんが別レーベルとして立ち上げた岬書店から刊行されている。

▼ブックオフ好きなら共感度100%の内容
ブックオフの特徴と言えば、暴力的な安さだった。古本屋のそれとは違い、本

もっとみる
動物好きとしてリスペクトする1冊。/『フジモトマサルの仕事』コロナ・ブックス編集部

動物好きとしてリスペクトする1冊。/『フジモトマサルの仕事』コロナ・ブックス編集部

上野動物園の友の会会員である。それぐらい動物園が好きだ。2カ月に1回ぐらいのペースでどっかの動物園に行く。そりゃ毎日行くような人に比べれば大したことないかもしれないけど、一般的に動物園に行くのなんてデートと家族サービスくらいなんじゃないだろうか。子どもの時行ったきり、なんて人も結構周りにいる。

そんなことはさておき、動物園に行くと、動物好きにしか知られていないような動物がいる。例えばフォッサ、ラ

もっとみる
ピリ辛展覧会エッセー🌶/『山内マリコの美術館は一人で行く派展』山内マリコ

ピリ辛展覧会エッセー🌶/『山内マリコの美術館は一人で行く派展』山内マリコ

美術館が好きです。でも展覧会はもっと好きです。そんな私にとって待望の本が山内マリコ著『美術館は一人で行く派展』。

もちろん展覧会について掘り下げた本は沢山ある。例えば図録。じっくり理解を深められるのはいいけれど、胃もたれしてしまう時もあるし、値が張るのでそんなにしょっちゅうは買えない。そこで気づいたのは、自分が広く浅く展覧会のことを知りたかったのだな、ということ。

『美術館は一人で行く派展』は

もっとみる
見慣れた近所が一変するお散歩攻略本。/『超芸術トマソン』赤瀬川源平

見慣れた近所が一変するお散歩攻略本。/『超芸術トマソン』赤瀬川源平

この自粛期間の一番の気づきと言えば、近所を歩くだけで色々な発見があるということ。具体的にいうと、トマソンが近所にこんなにも沢山あるのかとビックリしたのです。ハイ、これでほとんどの人の共感が得られなくなりました。

トマソンとは街中に潜むバグのようなもの。例えば、ビル壁の高い位置に張り付いたドアをご覧になったことはないだろうか。ドアに至るまでの階段がなく、かなりの足長おじさんでなくては入ることができ

もっとみる
カートゥーンネットワークが好きだったあなたにぜひ一度読んでいただきたいミステリー小説。/『ヨギガンジーの妖術』泡坂妻夫

カートゥーンネットワークが好きだったあなたにぜひ一度読んでいただきたいミステリー小説。/『ヨギガンジーの妖術』泡坂妻夫

泡坂妻夫は「ポパイ」が好きだったそうだ。ほうれん草を食べてムキムキになるアレである。ミステリー小説では事件が起きて、探偵がそれを解決するというのが定型。そのバリエーションを出すために念頭に置いていたのは、同じことを毎回違うパターンで描く「ポパイ」だったという。

「ポパイ」もだし「バックスバニー・ショー」もだし、ちょっと前にカートゥーンネットワークでやっていたアニメのパータンは大体決まっていた気が

もっとみる
巡礼の果てに見えてくる、人間と動物の関係性。/『動物園巡礼』木下直之

巡礼の果てに見えてくる、人間と動物の関係性。/『動物園巡礼』木下直之

ジャケット買いならぬ、帯買い。「オオアリクイの前に集合せよ」。帯に書かれたこの1文にやられてしまい、気づくとハードカバーを持ってレジに並んでいた。恐らくこれがライオンとか、パンダのようなメジャーな動物だったらスルーしていただろう。ここでオオアリクイを選んだところが絶妙なのだ。この帯を作ったであろう東京大学出版会の担当者さんに拍手!

巡礼を通して見えてくる、動物園と人の関係性の歴史。『動物園巡礼』

もっとみる
できることからやってみる。「双子のライオン堂」挑戦の日々。/『めんどくさい本屋 100年先まで続ける道』竹田信弥

できることからやってみる。「双子のライオン堂」挑戦の日々。/『めんどくさい本屋 100年先まで続ける道』竹田信弥

個人経営の好きな本屋を挙げるなら、双子のライオン堂(赤坂)、Title(荻窪)、青いカバ(駒込)、Readin’ Wririn’ BOOKSTORE(田原町)、、、挙げだすと止まらない!そして店の名前とセットで思い浮かべるのが、その店主の方々。メガネをかけていらっしゃる方が多い気がする。

双子のライオン堂の店主、竹田さんとはお店に伺った際、何度もお喋りしているし、2年前フリーペーパーを作った際は

もっとみる
400字以内で紹介する、泡坂妻夫『しあわせの書 迷探偵ヨギガンジーの心霊術』

400字以内で紹介する、泡坂妻夫『しあわせの書 迷探偵ヨギガンジーの心霊術』

寄席の演者の持ち時間は、1人15~20分くらい。だから講釈師の方は途中の良い所で噺を切って、高座を降りることがある。文章の教科書にも、何かルールを設けて書くことが大切だと載っていた。そこで今回は400字以内で書いてみたい。

『しあわせの書』はインチキ妖術師のヨギ・ガンジー先生とその弟子たちが、超常現象のトリックを解明する推理小説シリーズの2作目。平たく言えば、ガリレオのマジックバージョン。

もっとみる
超コッテリなチェーン店エッセイ。/『気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている』村瀬秀信

超コッテリなチェーン店エッセイ。/『気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている』村瀬秀信

『散歩の達人』に刺激を受けた私は、単身、夜の赤羽に繰り出した。ディープな酒場を発見するも、怖気づいて店に入れない。気づいた時には、「松のや」のカウンターでロースかつ定食(550円)を食べていた。ホッとしていた。

雑誌に載っている個人店ももちろん良い。でも手軽なお値段で、どこに行っても同じ味を提供してくれるチェーン店は安心するのである。

そんなチェーン店について、主にスポーツコラムを執筆するライ

もっとみる
動物園の役割ってなんだろう?/『動物園ではたらく』小宮輝之

動物園の役割ってなんだろう?/『動物園ではたらく』小宮輝之

あなたは何のために動物園に行くだろうか?デート?家族サービス?辛い現実から逃避して、癒されるため?少なくとも楽しむためではあるはず。修行のために動物園に行ったという話は、少なくとも私は聞いたことがない。

もちろんレジャー施設としての側面もあるけれど、上野動物園元園長の小宮輝之さん曰く、動物園の役割は

・「教育」
・「研究」
・「レクリエーション」
・「自然保護」
・「種の保存」
・「環境教育」

もっとみる
能動的な路上の楽しみ方。/『路上観察学入門』赤瀬川原平 他・編

能動的な路上の楽しみ方。/『路上観察学入門』赤瀬川原平 他・編

路上観察学とは何ぞや?タイトルに惹かれて書店でなんとなく手に取った。

編者の赤瀬川原平は白衣の集団が道路や敷石を清掃する「首都圏清掃整理促進運動」や、通貨模造で起訴された千円札の模写作品などで知られる前衛芸術家。一方で作家としての顔も持っていて、尾辻克彦名義で書いた『父が消えた』は芥川賞も受賞している、ヘンで面白いおじさんだ。

じゃあ路上観察学は現代アートなのかというと、そうではない。簡単に言

もっとみる
人間っていいな、な小説。/西加奈子『サラバ!』

人間っていいな、な小説。/西加奈子『サラバ!』

ひどいもので、殺人事件が起きない小説は面白くない、と高校生時代は思っていた。

しかし大学生になって人間一人一人や、またその関係性をじっくりと描く落語や講談にハマり、小説も登場人物の感情の変化とか、人間臭さに面白さを感じるようになってきた。

『サラバ!』は圷歩(あくつあゆむ)の半生を、上中下でじっくりと描く大河小説だ。

まず物語は圷歩がイランの病院で誕生するところから始まる。基本的に歩君の一人

もっとみる
小説家vsデザイナー 5番勝負。/小川洋子, クラフトエヴィング商會『注文の多い注文書』

小説家vsデザイナー 5番勝負。/小川洋子, クラフトエヴィング商會『注文の多い注文書』

こんな形式の小説読んだのははじめて!

作者が2人以上いる小説はいくつもあって、例えば複数の作家が共同で1つの物語を紡ぎあげるリレー小説。作者が亡くなり未完となったものを他の作家が引き継いで完成させた小説。多くは作家同士が協力して物語を紡ぎあげるけれど、『注文の多い注文書』は作者同士が、小説というフォーマットでそれぞれの想像力を戦わせる。

全5編が収録されており、それぞれ「注文書」「納品書」「受

もっとみる
全てはコンビニのために。/村田沙耶香『コンビニ人間』

全てはコンビニのために。/村田沙耶香『コンビニ人間』

久々にゾッとした!
自分が信じてきたものが虚構だったとわかるときの怖さ。吉田修一の『パレード』の読後感とも少し似てる。

古倉恵子、36歳、独身。この人、とにかく社会で「普通」とされることが理解できない。小学生の頃、体育の時間に男子が取っ組み合いの喧嘩が始めた。「誰か止めて!」という声を聞きつけた恵子、用具入れからスコップを取り出して暴れる男子を殴りつける。男子は頭をおさえ、動かなくなる。仰天する

もっとみる