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【コミックエッセイ】カルマティックあげるよ(時系列まとめ)

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くだらない話・不思議な話・ホラーな話を集めたコミックエッセイ。みょうちきりんな話が多いのでたぶん閲覧注意!
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#エッセイ

はじめてのケータイ(カルマティックあげるよ ♯181)

はじめてのケータイ(カルマティックあげるよ ♯181)

(文:KOSE)

2020年のある日、部屋を整理していたら、昔使っていた携帯電話が棚の奥から出てきた。

ソニー・エリクソン製のA1101Sという機種である。
契約したのは大学2年生の頃。人生で初めて買ったガラケーだった。
とっくに現役の通信機器としての役目は終了しており、もう電波をキャッチすることはできない。かつて白銀色だったボディも経年劣化によりすっかり黄ばんでしまっている。
それでも若かり

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貧乳ホルスタイン(カルマティックあげるよ ♯179)

貧乳ホルスタイン(カルマティックあげるよ ♯179)

(文:コセ)

今から12年前、丑年の2009年の新春。
ポストを開けると親友のエツから年賀状が届いていた。

新年の挨拶文と共に『貧乳ホルスタイン』という名のキャラクターが描かれていた。
つぶらな瞳と名前通りの控え目なボリュームの乳房とのギャップが印象的なキャラクターで、僕は一目で気にいった。
今でも大切に保管している。

目次→https://note.com/maybecucumbers/n

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2020年の健闘(カルマティックあげるよ番外編)

2020年の健闘(カルマティックあげるよ番外編)

今年もいろいろありすぎたよね?
予想不可能コロナ時代。

そんな2020年だけどMAYBECUCUMBERSは連発したり、たまに放置プレイしたりと自由気ままに更新してきました。
その中から、振り返り、労い、称えようとETSUとコセは勝手ながら、おこがましくも、グループ内アワードを決めたのでした。

それでは、順次各賞の受賞作品を発表します。
さぁ、拍手でどうぞ!!

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『カルマティックあげるよ』のはじめに

『カルマティックあげるよ』のはじめに

私たちは、この狭い島国の中でぼちぼち日々を過ごす、ごくごく一般的なカーストに属する人畜無害で牧歌的な人間です。
しかし今までの自身の半生を振り返ってみると、常識では考えられないような、不思議で奇っ怪で、因果な出来事がたくさんありました。自分の身から出たハプニングもあれば、他人が起こしたトラブルに巻き込まれることもあったし、移動の最中に意図せず不可思議な光景を見かけたりなど、そのケースは様々です。い

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16の秋
(カルマティックあげるよ ♯15)

16の秋 (カルマティックあげるよ ♯15)

高校に入学した当時、ろくに絵心もない分際で絵描きの道を志そうとした私は晴れて美術部に入部した。
しかしそこは実質的に活動する部員が3学年合わせて10名も存在しない、男子校の弱小美術部だった。
部内の空気もゆるゆるで顧問も先輩も「下手でも自分の好きなもの描いたらええやん」といったおおらかな考えの持ち主だった。

そんないい加減なスタンスの部活でのらりくらりと過ごす私に襲いかかった試練が秋の美術展だっ

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楽しい陶芸体験(カルマティックあげるよ ♯68)

楽しい陶芸体験(カルマティックあげるよ ♯68)

高校3年生の頃、私はほぼ毎日自宅から40分ほど自転車を漕いで、とある絵画教室に通っていた。
そこは大人や子供を対象とした絵画のレッスンを行うのと並行して、美術系の大学への進学を志ざす高校生を対象とした、いわば予備校としての役割を持つ講座も開講していた。
先生一家の住宅を併用した、同学年の塾生は10人にも満たないような小さな画塾であったが、先生の指導力は優秀で毎年塾生達全員を現役合格で志望校に合格さ

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線香にまつわる不思議な話(カルマティックあげるよ ♯127)

線香にまつわる不思議な話(カルマティックあげるよ ♯127)

まだしんしんと雪が降る大学2年の1月はじめのことだった。
私は日常生活のなかで、ある違和感を覚えていた。
部屋の中はもちろん、外の廊下でも、つまりはアパートの敷地内で四六時中、線香の臭いがしていることに気が付いたのである。
それは古着屋などで焚かれているお洒落な香りとは程遠く、まぎれもなく仏壇仏具のソレであった。
そうまるで、お寺にいるみたいな。
最初は正月休みで、周辺のどこかの民家では親戚が集い

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遠藤ミチロウさんの想い出・前編(カルマティックあげるよ ♯135)

遠藤ミチロウさんの想い出・前編(カルマティックあげるよ ♯135)

筆:KOSSE

「4月22日・遠藤ミチロウLIVE、当店にて開催。店内にてチケット販売中。」

それは大学4年生に進級したばかりの、春風の吹く4月初旬の頃だった。散歩のテリトリーだった道を徘徊中、よく前を通るカフェの窓ガラスに、そう書かれたポスターが貼られているのを見つけた。

「えっミチロウさん来るの!?マジかよ!」

驚いた僕は、チケットを入手するため迷うことなくそのカフェの中へと入っ

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遠藤ミチロウさんの想い出・後編(カルマティックあげるよ ♯136)

遠藤ミチロウさんの想い出・後編(カルマティックあげるよ ♯136)

前編はこちらから

「ジジイ!ジジイ!ニュージジイ!
 トエンティワンセンチュリーイ!クソジジイ!」

激しくかき鳴らされるアコースティックギターの弦の音、そのボリュームに負けじと叫ぶ遠藤ミチロウの歌声がカフェの空間の中に響きわたった。マイクもアンプもない真のアンプラグドと呼ぶべき弾き語りだが、閉じられたカフェの中を音で満たすには十分すぎる音量だった。

「21世紀のニュージジイ!」

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サイコなディナー(カルマティックあげるよ ♯155)

サイコなディナー(カルマティックあげるよ ♯155)

「今日暇?うちでステーキ食べない?いい肉があるんだよね」

大学四年の初夏、トシの主催するお食事会へと私は誘われた。

「コセくんも来るって」

そんなこんなで男三人によるむさディナーが決定した。

「準備あるから先帰ってるね。8時くらいに来て」

トシは居酒屋でバイトしてるだけあって、非常に料理が得意だ。
だからときどきハンニバル博士のように手料理をごちそうしてくれるのだ。

放課後、課題を一つ

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カーペットの下の秘密(カルマティックあげるよ ♯128)

カーペットの下の秘密(カルマティックあげるよ ♯128)

コタツの上にはグリル鍋仕様のホットプレートが置かれていた。

「今から材料用意するから待っててね」

とトシは意気揚々に言って腰に前掛けをしめると、台所へと移動し扉を閉めた。
少しでも冷気が入らないようにとする心遣いを感じた。
その言葉に甘んじるように鍋の仕込みは、料理が得意なトシに一任するとして、私とコウダイはコタツでぬくぬくと待つことにする。
おしゃれなジャズが鳴り響き、優しい間接照明が包みこ

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ナイト・オブ・シンクロニシティ:前編(カルマティックあげるよ ♯148)

ナイト・オブ・シンクロニシティ:前編(カルマティックあげるよ ♯148)

これから記すことは、僕とエツとトシが共に遭遇した、ある不思議な一夜についての記録である。

学生生活の終わりを目前に迎えた、大学4年生の3月。卒業制作展という美術系大学特有の一大イベントも終わり、学生達はみな新たな環境での生活に向け各自準備に追われつつも、残り少ない学生生活を謳歌していた。自分の周辺はどうだったかと言うと、エツは大学院への進学、トシは半年間の留年が決まっていた。そして僕はのらりくら

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ナイト・オブ・シンクロニシティ:後編(カルマティックあげるよ ♯150)

ナイト・オブ・シンクロニシティ:後編(カルマティックあげるよ ♯150)

不思議な一夜の記録、後編。

前編はこちら

真夜中の田舎道を、僕ら3人を乗せたジムニーは進んでいった。先ほどまで走っていた車通りの激しいバイパスとは打って変わって、周囲を走る車はほとんど見当たらない。時折対向車がビームライトに照らされながらすれ違っていくだけだ。あたりは田舎によくある敷地の広い民家ばかりで、すでに灯りを消している家も多く、点灯している家も広い庭ゆえ光は遠くに見えたのだった。植木が

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