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なんとなくいいな、の世界
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2023年7月の記事一覧

小説家になる夢はアダルトビデオを観て諦めた

小説家になる夢はアダルトビデオを観て諦めた

 十年経っても忘れられない思い出がある。それは私が中学生か、高校生の頃だっただろうか。夏の夜、友人数人とアダルトビデオを見る機会があった。
 経験のない私達は練習の一環としてその儀式(?)を行い、来るべき日のために知識を共有、ひいては自身に落とし込む必要があった。今考えれば正気の沙汰ではないし、勿論大人数でする必要はない。一人でやればいい。ただ、当時の私達はそう考えるには些か若く、視野が狭かった。

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短編小説:夜を歩く

短編小説:夜を歩く

一、23時

 寝返りをうつのはこれで何度目だろうか。形の合わない箇所にむりやりパズルのピースをはめ込んでいるような気分だった。
「寝れねえ」
 俺は誰に言うでもなくそうつぶやいた。しかし狭い部屋で独りそんなことをぼやいてみても余計に目が冷めていくだけだというのは嫌というほど分かっていた。ただそのことをはっきりと確認したかっただけなのかもしれない。つまりある種の諦めだ。
 目を開けて上半身を起こし

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エッセイ | 私にとっての『書く』と言うこと

エッセイ | 私にとっての『書く』と言うこと

書き出しはこうだ。
「改まったタイトルにしてしまったが、難しい話でも暗い話でもない。本記事で50回目の投稿となるため、私にとって『書く』ということの位置付けをしておきたい」磯森照美はキーボードをたたく。以前から始めていたnoteに投稿する記事を書いているようだ。

磯森はnoteを知ってから始めのうちは人の書いた記事を読む専門だった。それは彼が人の話を聞くのが好きであったからだ。彼自身から話をする

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短編SFホラー <鏡の悪魔>

短編SFホラー <鏡の悪魔>

 私には忘れられない思い出がある。それは11歳の時に祖父母の家に泊まった時の出来事だ。父は里帰りということもあって、すっかり羽根を伸ばしていた。それとは正反対に、母は姑にあたる祖母に常に気を遣っていた。母は普段の姿からは想像もつかないくらいに縮こまっていたのが印象的だった。

 当時の私は年頃の女の子だったので、鏡を見るのが大好きだった。三面鏡の前に座って、伸ばしていた髪を母にとかしてもらうのが楽

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【小説】カネの準備は出来ている

【小説】カネの準備は出来ている

 夏のおびただしい日差しを避け、賑わう学食で特盛カレーを食べていると、嫌な話を小耳に挟んだ。
「シングルマザーの再婚率は、子供の性別によって五倍の差があるらしい」
 ちらりと振り返ったところ、男が女に語っていた。五倍は、流石に盛っていると思った。
「どっちが再婚しやすいの?」
「そりゃあ、女の子でしょう」
「ああ・・・なんか、気持ち悪いね」
 生じた偏見は、致し方ないのかもしれない。性的虐待に関す

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