お『NEW』な私(花吹雪×シロクマ文芸部)
花吹雪のなかに気づかぬうちに迷い込んだ。朝の底には八重桜の花弁が一面に広がっていた。朝の誰もいない駅近くということも相まって、その光景が人里離れた湖の湖面のように見えた。
ハンドバックからリップクリームが零れる。
私という人生の蓋を、ぱかっと開けてみると、迷い色の濃いワインみたいな虚無感で満ちているな、と思う。
だから、毎朝の通勤に利用するイェールタウン・ステーションに施された春の訪れを祝うささやかな装飾にも気づけなかった。
先週、デイオフの日に行きつけのカフェに向かう