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#275 「ジョブ型が変える人材育成」(日経記事)を読んで

4月14日付の日経新聞朝刊7面の「ジョブ型が変える人材育成」を読んで思ったことをメモ。


1、どんな記事?

日経新聞の上級論説委員、水野裕司さんが書いた、「ジョブ型が変える人材育成」という記事です。


まず、従来の日本企業の研修について以下のように述べています。

日本企業では組織のメンバーの発言の微妙なニュアンスを共有することが重視されてきたため、教育訓練は日常業務を通じての職場内訓練(OJT)が中心となった。OJT以外で唯一、盛んになったのは階層別研修という。これは同じ年次で処遇に差がつくのをなるべく防ぐため、職務遂行能力に開きが出るのを抑えるためだった。

そして、ジョブ型の人事制度の主眼は、実力主義の徹底で社員間の競争を活発にすることだとし、2021年度から管理職にジョブ型制度を導入したKDDIの例を挙げています。

(KDDIは)部長の下に位置するグループリーダー職も社内公募の対象にした。人事本部長の白岩徹執行役員は「社内の異動は徐々に公募になっていく」と言う。
そこから巻き起こるのはポストの獲得競争だ。社員は就きたいポストに就こうと、自らの能力を磨く意欲が高まる。公募制は個人の能力を底上げする仕掛けだ。

そういった状況に、人材育成に関して企業に求められることも変わるとしています。

個人のキャリア形成意識が高まり、会社も教育機会をいかに提供するかの競争をしている。厚生労働省の調査では、通常業務を離れての教育訓練(職場外訓練)に企業が投じた1人あたりの金額は19年度に1万9,000円と低調だ。このままでは意欲のある人材が集まらなくなるリスクがある。


つまり、以下のように整理できます。

ジョブ型人事制度導入

個々のポストに求められる能力が明確になる+公募制

ポストに就きたいと意欲がある人の間で競争が起こる

求められている能力をつけようと能力を磨く意欲が高まる

企業にはその意欲に応える、個別化された研修メニューを提供が求められる
(いまはOJTと階層別研修が中心)

提供できない企業は意欲のある人材が集まらないリスクがある


2、まとめ(所感)

いかがでしたでしょうか?

ジョブ型って話題ですし、導入を進める企業も増えている様ですが、その効果や狙いはさまざまです。例えば以下の様なものが挙げられます。

☑️ テレワークによって職務が明確でないことで評価ができない問題が明らかに
 → だから求められる職務が明確にできるジョブ型を導入する
☑️ 年功序列では若い人に機会が与えられない
 → だから公募制と合わせてジョブ型を導入する
☑️ 新卒一括採用では、どんな仕事をするかわからない不安から採用が難しいことや、ミスマッチで早期に退職する問題がある
 → だから新卒も職務が明確なジョブ型を導入する

今回の記事では、ジョブ型について「人材育成」という切り口で述べています。

いつも思うのですが、これらはジョブ型で解決できる問題なのでしょうか?
もっと言えば、ジョブ型を導入すれば解決するのでしょうか?

確かに、評価を含む人事制度は従業員の行動に大きな影響を与えます。
それによって思考や行動を変えることもできるでしょう。

でも、それはジョブ型でなくとも、公募制や、人事評価者(管理職)の適切性チェック導入、などでも解決できるのではないでしょうか?

現在導入するような企業は、流行る前から準備、検討していた企業だと思いますので、問題ないと思います。

問題は、「なんかジョブ型、やらないと。業界団体も、国も言ってるし。」という企業でしょう。

こうした企業の特徴として、何かあると、組織や制度をいじります。それだけ。
でも、どんなに優れた組織や制度でも、それに沿った運用ができなければ意味はありません。


最後に、この記事で私が最も重要だと思った部分をご紹介します。

日本では不要なポストが出た場合でも雇用契約の解除はできない。このためジョブ型の人事制度といっても、社外への退出を求めることも珍しくない欧米と比べ、微温的にならざるを得ない面がある。

つまり、日本でのジョブ型の人事制度自体は、「微温的」なので、やってもやらなくても、「微」々たる違いしか生まない、ということ、です。


最後までお読みいただきありがとうございました。

ジョブ型についてはずいぶん昔になりますが、同じ日経新聞で一橋大学の神林教授がその定義から解説をされている記事を、なぜか同じ日に紹介されていたネットフィリックスの人事制度と合わせてご紹介した投稿(以下)があります。よろしければご一読ください。



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