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「パワハラで人生をしくじった元名監督に学ぶ 変わる勇気」書評


著者紹介

松井英幸(まつい ひでゆき)氏は、1961年埼玉県生まれの元ラグビー指導者です。日本体育大学出身で、大学時代には大学選手権で準優勝の経験を持ちます。流通経済大学付属柏高校のラグビー部創設時から監督を務め、30年間の教員生活の中で、全国大会である花園に21年連続23回出場という驚異的な実績を築き上げました。

その後、高校ラグビー日本代表監督にも抜擢され、多くの優秀な選手を育成。指導した選手の中には、ラグビーワールドカップや7人制ラグビーリオオリンピックに出場した日本代表選手も含まれ、トップリーグで活躍する選手を多数輩出しています。

現在は流通経済大学に勤務し、学生への選択理論・目標達成の技術の勉強会や指導者講習会の講師を務めるほか、産官学連携事業にも携わっています。長年の指導経験と実績を基に、スポーツ界における指導の在り方や人材育成について深い洞察を持つ著者です。

本書の概要

「パワハラで人生をしくじった元名監督に学ぶ 変わる勇気」は、松井氏の豊富な指導経験と、スポーツ界、特にラグビー界で長年問題とされてきたパワーハラスメントの実態を踏まえ、その克服の道筋を描いた一冊です。本書では、かつての「勝利至上主義」的な指導方法から、現代的で健全なコーチング手法への移行について、著者自身の経験と洞察を交えながら深く掘り下げています。

松井氏は、自身の指導者としての歩みと、数多くの選手たちとの関わりを通じて、なぜパワハラが起こるのか、どのような影響をもたらすのか、そしてどうすれば指導者自身が変われるのかを、具体的な事例と心理学的考察を交えながら解説しています。


本書の特徴

  1. 実体験に基づく洞察: 著者の30年以上にわたる指導経験からの貴重な洞察が詰まっています。

  2. ラグビー界の特殊性: ラグビーという激しい身体接触を伴うスポーツならではの指導の難しさと解決策が提示されています。

  3. 選手育成の成功事例: 日本代表選手を多数輩出した著者の育成メソッドが詳細に解説されています。

  4. 指導者の自己変革: 旧来の指導方法から現代的なコーチングへの移行プロセスが具体的に描かれています。

  5. 組織改革の視点: 個人の変化だけでなく、スポーツ組織全体の文化改革の必要性にも言及しています。

こんな人におすすめ

  1. スポーツ指導者: 特にラグビーを含む競技スポーツの指導者に最適です。

  2. 教育関係者: 部活動顧問や体育教師にとって有益な内容が多く含まれています。

  3. スポーツ選手や学生: 健全な指導関係について考えるきっかけになります。

  4. 企業の管理職: スポーツ指導の知見をビジネスリーダーシップに応用できます。

  5. 保護者: 子どもの運動部活動に関わる親にとって、指導の在り方を考える良い機会となります。


本書から学べること

  1. 効果的な指導法: 勝利と選手の成長を両立させる現代的なコーチング手法。

  2. パワハラの根源: なぜ指導者がパワハラに陥りやすいのか、その心理的背景。

  3. チームビルディング: 強いチームを作り上げるための信頼関係構築の方法。

  4. 選手の潜在能力開発: 個々の選手の強みを引き出し、伸ばす技術。

  5. 指導者の自己成長: 常に学び、進化し続ける指導者としての心構えと具体的方法。

印象的な内容

本書には、著者の長年の経験から得られた深い洞察が数多く含まれています。特に印象的なものをいくつか紹介します:

  • 「真の強さは、選手の自主性を尊重することから生まれる」

  • 「指導者の成長なくして、選手の成長はない」

  • 「パワハラは指導の敗北であり、創造性の欠如である」

  • 「勝利は目的ではなく、人間形成の過程で得られる結果である」

  • 「信頼関係があってこそ、厳しい指導が活きる」

これらの言葉は、著者が幾多の試練と成功を経て到達した、重みのある洞察です。


実践的なアドバイス

本書は理論だけでなく、すぐに実践できる具体的なアドバイスも提供しています:

  • 選手の個性を活かすポジショニングの考え方

  • 効果的なフィードバックの与え方と時期

  • チーム内のコミュニケーションを活性化させる方法

  • 試合前後の心理的サポートの技術

  • 保護者との良好な関係を構築するためのアプローチ

これらの実践的なアドバイスは、指導現場ですぐに活用できる具体性を持っています。


結論

「パワハラで人生をしくじった元名監督に学ぶ 変わる勇気」は、スポーツ指導の世界に新しい風を吹き込む貴重な一冊です。松井氏の豊富な経験と深い洞察に基づく本書は、単にパワハラ問題を批判するだけでなく、指導者自身が変化し、成長していくための具体的な道筋を示しています。

本書の価値は、ラグビーという特定のスポーツに限定されず、あらゆるスポーツ指導、さらには教育全般やビジネスリーダーシップにも応用できる普遍的な wisdom を提供している点にあります。「変わる勇気」という言葉に込められた著者のメッセージは、読者一人ひとりの心に響き、自己変革への第一歩を踏み出す勇気を与えてくれるでしょう。

指導者としてのキャリアを築きたい方、現在指導に携わっている方、そして健全なスポーツ文化や教育環境の構築に関心のあるすべての方にとって、本書は新たな視点と希望を与えてくれる一冊です。Amazon での購入をお考えの方は、ぜひ手に取ってみてください。この本との出会いが、あなたの指導観や人生観を豊かに変える契機となることでしょう。



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