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高校生のための人権入門(全27回)

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人権についてわたしが考えたことを、高校生だった自分にもわかるように書いてみました。興味のあるテーマについて書いてある回から読んでいただいても、大丈夫です。
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#生きづらさ

高校生のための人権入門(9) ジェンダーについて

高校生のための人権入門(9) ジェンダーについて

前回、「同和問題(部落差別)」の後は「女性の人権」について書く予定だと記しましたが、その前に今回は、「ジェンダー」について書いて、次回以降に「性的少数者の人権」や「女性の人権」について書くことにしました。

はじめにもう何十年も前に、岸田秀という心理学者が、「人間は本能の壊れた動物である。」と言いました(『ものぐさ精神分析』(青土社、1977年)など)。確かに、人間は本能が壊れていて、本能に支配さ

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高校生のための人権入門(10) 性的少数者の人権について

高校生のための人権入門(10) 性的少数者の人権について

はじめにみなさんはLGBTという言葉をどこかで聞いたことがあると思います。LGBTは、現在、性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)を表す言葉として使われています。LGBTのLはレズビアン(女性同性愛者)、Gはゲイ(男性同性愛者)、Bはバイセクシュアル(両性愛者)、Tはトランスジェンダー(戸籍上の自分の性別に違和感を感じる人)を表す頭文字です。LGBTとひとまとめにすることが多いのですが、その内容

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高校生のための人権入門(11) 女性の人権について

高校生のための人権入門(11) 女性の人権について

なぜ「女性の人権」かこのところ、「女性の人権」という言い方をすると、すぐに「男性の人権はどうなっているのだ。」と言われます。そんなこともあってか、最近は「女性の人権」という言い方よりも、「ジェンダー・バイアス」というような言い方をする人が多くなってきました。しかし、わたしはここではあえて、「女性の人権」という言い方を使いたいと思います。その理由はふたつあります。ひとつは、今なお、女性は社会的にきわ

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高校生のための人権入門(12) 児童虐待について(子どもの人権(1))

高校生のための人権入門(12) 児童虐待について(子どもの人権(1))

はじめに日本では毎年、何人もの子どもが保護者からの児童虐待によって亡くなっていきます。その子どもを死に至らしめた虐待の内容は、知れば知るほど、なぜこんなひどいことができるのかという驚きや怒りを感じないではいられません。そのような怒りや批判は、虐待をした親や、虐待を知っていながら何もしなかった(できなかった)児童相談所の職員などに向かいます。しかし、児童虐待を考える上で重要なことは、このような児童虐

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高校生のための人権入門(14) 障害者の人権について

高校生のための人権入門(14) 障害者の人権について

障害者とは2016年(平成28年)4月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行されました。この法律は、その第二条で「障害者」を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。」と定義しています。

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高校生のための人権入門(15) 人権問題を解きほぐすカギ

高校生のための人権入門(15) 人権問題を解きほぐすカギ

はじめに日本におけるさまざまな人権問題を解きほぐすカギが、少なくともふたつあると思います。ひとつは、「人に迷惑をかけるな」という考えを弱めること、もうひとつは、「評価主義、能力主義、努力第一主義」を弱めることです。(本当は、「弱める」ではなく、「なくす」と言いたいのですが、現実にはそれは無理なので、「弱める」という言い方にしておきます。)

「人に迷惑をかけるな」という考え方を弱めよう
前回の「障

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高校生のための人権入門(18) なぜ、人権は尊重されなければならないか

高校生のための人権入門(18) なぜ、人権は尊重されなければならないか

はじめに前回、人権の中身とは「安心、自信、自由」だというお話をしました。「安心」とは、「わたしはここにいていい」という思いであり、「自信」とは、「今のわたしはこれでいい」という思いであり、「自由」とは、「わたしのことはわたしが決めている。つまり、わたしがわたしの人生の主人公だ。」という思いだとお話ししました。これを踏まえて、前回の最初に取り上げた疑問、「相手がどんな『ひどい人』で、自分や周りの人に

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高校生のための人権入門(19) 「多様性の尊重」の落とし穴

高校生のための人権入門(19) 「多様性の尊重」の落とし穴

はじめに最近、日本で人権について語られる時、とてもよく使われるようになった言葉に、「多様性の尊重」という言葉があります。確かにこの言葉は、「人権侵害とは、自分とは『違う』あり方、考え方、生き方をしている人への非難、攻撃である」というポイント(第18回参照)をよく押さえています。しかし、「人権を尊重する」ということと「多様性を尊重する」ことを、同じことだと考えてしまうと、そこには大きな「落とし穴」が

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高校生のための人権入門(20) パワーハラスメントを生む「集団」とは

高校生のための人権入門(20) パワーハラスメントを生む「集団」とは

はじめに前回、「現実の『人と人との関係』は、基本的に力と力の関係であり、どちらかがどちらかを支配している(相手を従わせている、自分に合わせさせている)関係なのです。」と書きました。このことについて、次回、くわしくお話したいと思っていますが、今回は、それを考える前に、まず、パワーハラスメントを生む集団は、どんな性質を持っている集団かを考えてみたいと思います。

人と人がつくる二種類の集団人と人がつく

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高校生のための人権入門(22) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その1)

高校生のための人権入門(22) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その1)

はじめにさまざまな人権問題があることをこれまで見てきました。もちろん、今まで取り上げてきた人権問題以外にも、たくさんの人権問題が今の日本にはあります。(それらについては、別の機会でふれることができたらと思います。)今回から3回ほどにわたって、どうしたら今まで取り上げたような人権問題が、少しでも解決に向かうことができるのかを考えてみたいと思います。

何が起きているのか、なぜ起きているのか差別や人権

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高校生のための人権入門(23) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その2)

高校生のための人権入門(23) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その2)

はじめに前回、パワーハラスメントがどのようなことが「きっかけ」となって、どのように進んでいくかということを見ました。今回は、パワーハラスメントが起きている時に、加害者と被害者の「心の溝(気持ちや思いのズレや断絶)」が、どのような働きをしているかを見てみたいと思います。

なぜ、「心の溝」は深まるか第3回「パワーハラスメント」でも述べたように、パワーハラスメントは、(A)「強い立場」と「弱い立場」が

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高校生のための人権入門(24) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その3)

高校生のための人権入門(24) 「正しさ」のぶつかり合いから抜け出すこと(その3)

はじめに前回は、パワーハラスメントが起きている時に、加害者と被害者の「心の溝(気持ちや思いのズレや断絶)」が、どのようにして深まっていくか、それが生む「誤解」がどのような働きをしているのかを見ました。今回は、今までの2回の話を踏まえて、「心の溝」を生まないためにはどうしたらよいか、「心の溝」と「誤解」の悪循環を進行させないためには、どうしたらよいのかを考えてみたいと思います。

「心の溝」を生んで

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高校生のための人権入門(25) 人権と生きることの意味

高校生のための人権入門(25) 人権と生きることの意味

はじめに第17回「人権の中身『安心、自信、自由』」の中で、自分の中の「安心、自信、自由」を失わないことが、生き生きと生きていくためにはどうしても必要であり、「安心、自信、自由」がなければ、人は生きていてうれしくないのだということをお話ししました。逆に言えば、「安心、自信、自由」が持てていれば、人は生き生きと生きられる、生きていてうれしいのだということです。生きていてうれしいとは、「生きている意味」

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高校生のための人権入門(26) 人権と法律(補足1)

高校生のための人権入門(26) 人権と法律(補足1)

はじめに前回で、「高校生のための人権入門」の本編は終わりましたが、25回ほど人権について書いてくる中で、心に引っかかったことが二つほどあります。それについて2回ほど「補足」という形で書いて全体を終わりにしたいと思います。ひとつめは、「人権と法律」です。

パワーハラスメントは法律で防げるか実際の生活の中で、今、起きていることが人権侵害かどうかが問題になってくると、当然のことながら、法律との関係が議

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