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東原そら
2021年1月26日 18:39
切り裂きジャックに憧れている。 現在でも様々な陰謀説が囁かれ、ミステリーファンとして胸が高鳴る。 冬の塾帰り。 私は背後から口を塞がれ、茂みに連れ込まれた。 男がかざすナイフは、月の光を浴びて夜空に二つ目の月を輝かせていた。 幸い目撃者がいて事なきを得た。 Fuck You!Jack!
2020年12月23日 08:34
どうしてこうなってるの。 私は憂悶とする。 夕映えが眩しいバス停。 狭いベンチの隣には一方通行の恋の相手。 こんなの予定にないよ。 頬を刺すつめたい風にブルッと肩を竦める。 かすかに触れる肩と肩。 ビクッと距離を取る様は完全に挙動不審者。 チラリ横目で窺うと、あれ?彼も赤い。
2020年12月9日 09:49
服が厚みを増すたび、夜の闇が深まる。 闇の深度に反比例するように、街は彩度を高めていく。 赤や青、白や緑、色彩溢れる街は賑やかになるけど、どこか寂しさも感じる。 田舎の夜は静かだけど、とても雅やかだ。 ふいに郷愁を覚える。 お父さん元気かな。 帰ったら久しぶりに電話しよう。
2020年12月7日 18:10
暁の空気をすうっと肺に納め、はあっと手に呼気をふく。 じわりと熱を帯びるも、瞬く間に冷める。 カチリとガスのつまみを捻る。 薬缶から湯気がのぼり、珈琲へ注ぐ。 私は一つに、彼は三つ。 甘党の彼は私にも甘え上手。 今日もきっと、甘えて起きないんだろうな。 腕をまくり戦闘準備だ。
2020年12月6日 20:23
温もりが欲しい。 今年もこたつを愛でる季節が到来した。 足元から頭の先まで、じんわりと熱が伝わる。 この至福のひとときには、ホットミルクも目ではない。 ふいに眼前5cmの距離に、地を踏む逞しい筋肉の塊。 次はお尻に衝撃。「んにゃ~、おまえら俺が中にいるにゃ~」 猫は激怒にゃ。
2020年12月4日 19:07
視界を行き交う車灯の群れ。 最近はすっかりと灯る時間が早まった。 イヤホンが奏でる音に合わせ、指でリズムを取る。 団地へ流れるバスはまだ姿を現さない。 ふいに吐息のような、かすかな風がふっとうなじを通り抜ける。 そろそろポニーテールも終わりかな。 明日から、下ろして登校しよ。
2020年11月28日 22:02
もくもくと湯気が踊り、乳色の霞みが視界を白にする。 白色の世界の彩り溢れる場所で私は大事な子を育む。 突如、子は拐われた。 彼は美味の肉を頬張る。「もお!大事に育ててたのに」 私は頬に大きな風船を二つ作る。「この世は弱肉強食なんだよ」 ニヤリと口角を上げる彼は本当に悪役だ。あとがき鍋が美味しい季節になりました。鍋をイメージして書きましたが、少しわかりづらか
2020年11月30日 18:37
スゥとつめたい風が肌を刺す。 コートのポケットからほどよい熱さのカイロを取り出し、頬の暖を取る。 ふと、ふわりと綿が舞う。 違う。 雪だ。 鈍色の空から今年最初のプレゼント。 高いヒールの踵を返し、近くのコンビニへ足を向ける。 今日は熱燗かな。 ベランダで銀に染まる街を肴にしよっと。