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140文字小説

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Twitterで日々投稿している140文字小説をまとめたものです。
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#恋人

さよならの約束 (140文字小説)

さよならの約束 (140文字小説)

 このキスが終わると、おしまい。

 別れる時は、キスをして別れよう。

 それがつきあう時の約束だった。

 どうして、そんな約束をしたのだろう。

 貴方の唇は、もう私のものじゃないのに。

 私の唇も、もう貴方のものじゃないのに。

 彼に罪悪感を覚える。

 これで本当に終わり。

 さよなら、兄さん。

真実の想い (140文字小説)

真実の想い (140文字小説)

 告白は気持ちの押しつけ。

 そう思っていた。

 同じ美化委員で、おっちょこちょいだけどいつも優しい彼に私は惹かれた。

 でも押しつけは嫌。

 いつしか彼は恋人ができた。

 卒業式の最後の会話で「本当はずっと好きだった」と彼は苦笑いした。

 もう遅い言葉に、私は漸く臆病だった自分を知った。

相互に受容する (Twitter140文字小説)

相互に受容する (Twitter140文字小説)

 恋人と価値観が違うと思う時がある。

 例えば小説と映画だ。

 僕は映画を観て、原作小説を読む。

 彼女は逆だ。

 どちらもあらすじを知り次に進む。

 けど感じ方は全然違う。

 登場人物と心情の齟齬を埋める僕と、1シーンへの思いを深める彼女。

 どちらが良いかじゃない。

 ただ僕は彼女が好きだ。

聖夜のトラブル (Twitter140文字小説)

聖夜のトラブル (Twitter140文字小説)

「わかった。お仕事頑張って」

 終局が見えない業務量に諦念を抱き、恋人に謝罪の連絡をする。

 急なトラブルの贈り物に聖夜を皮肉に思う。

 午前二時。

 社の前に彼女がいた。

「終わった?」

「どうして?」

「お疲れ様、って言いたかったから」

 微笑む彼女の笑顔は、最高の聖夜の贈り物だ。

緑の子 (Twitter140文字小説)

緑の子 (Twitter140文字小説)

 緑だ。

 一面の真緑の絨毯のうえで、磊落な彼女は草汚れもお構い無しに大の字になっている。

 陽光は目映く、蝶も『はな』違いで彼女の上で羽を休めている。

 よく寝息をたてている。

 ふと好奇心が湧き、艶のある頬に指を沈める。

「そこよりこっちがいいな」

 人差し指で輝く唇をそっと示唆する。

恋人繋ぎ (Twitter140文字小説)

恋人繋ぎ (Twitter140文字小説)

 ふいに手を絡ませてみた。

 ビクッとした反応がとても愛おしい。

 触れる肌は熱く湿り、強張っている。

 とても緊張しているのだろう。

 こんなシチュエーションに不馴れなことがよくわかる。

 もう少しいじわるをしてみようか。

「この繋ぎ方なんて言うか知ってる?」

 頬を赤らめ彼はその答えを言う。

あとがき

積極女子と消極男子シリーズです。

積極的な女性は書いていて、とても楽しい

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弱肉強食 (Twitter140文字小説)

弱肉強食 (Twitter140文字小説)

 もくもくと湯気が踊り、乳色の霞みが視界を白にする。

 白色の世界の彩り溢れる場所で私は大事な子を育む。

 突如、子は拐われた。

 彼は美味の肉を頬張る。

「もお!大事に育ててたのに」

 私は頬に大きな風船を二つ作る。

「この世は弱肉強食なんだよ」

 ニヤリと口角を上げる彼は本当に悪役だ。

あとがき

鍋が美味しい季節になりました。

鍋をイメージして書きましたが、少しわかりづらか

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罰ゲームを覚悟してね!~茜と陸~ (Twitter140文字小説)

罰ゲームを覚悟してね!~茜と陸~ (Twitter140文字小説)

「あーん」

「いやだ」

「あーん」

「いやだ……」

「はい!あーん!」

「はい……」

 ゴホッ、とむせる陸くんに私はここぞとばかりにニヤリとする。

「もう一個だよーっ」

「二時間遅刻は悪かったよ!もうハバネロたこ焼きは勘弁」

 いつもと逆転の立場。

 あと少しお仕置きは許されるよね。

あとがき

 彼女達で1本短編を書こうと思えるほど、元気な二人です。(笑)

 彼女達は適当

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きっとどこかで (Twitter140文字小説)

きっとどこかで (Twitter140文字小説)

 きっとどこかで、また……

 最後のデート、映画館の帰路で君は言った。

 夕陽が反射した君の雫を、俺は今も夢でみる。

 君と観た映画のリバイバル。

 想いにさよならしようと1900円を払う。

 重い扉を開く手がかち合う。

 目と目が触れると、君は言った。

「きっとどこかで、また会ったね」

あとがき

再会をテーマにした作品です。

結構、自信作だったんですが、あまりTwitterで

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記念日~茜と陸~ (Twitter140文字小説)

記念日~茜と陸~ (Twitter140文字小説)

「来週なにがあるか知ってる?」

 茜は水を向ける。

「梅沢富美男の誕生日だろ」と陸は空を仰ぎながらとぼける。

「なにそれ?そんなの知らないよ」

 茜はもういいと頬を風船にしてさっさと歩き出す。

「恥ずいから言わねぇよ」

 呟く陸の鞄には初デート記念のキーホルダーがきらりと煌めく。

あとがき

困った時の茜と陸シリーズです。

この二人は勝手に動いてくれるので、作者としては非常に楽です

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明け透けな彼女 (Twitter140文字小説)

明け透けな彼女 (Twitter140文字小説)

「ごめん。オナラが出た」

「付き合ってるのに謝らないでよ。そういうの我慢しないで」

 俺の初めての彼女はそう言った。

 付き合うって明け透けでいいと俺は学んだ。
 
 けれど彼女は俺以上に明け透けだった。

「わたし元カレと住んでるんだ」

 それ二股だよね。

 サヨナラに時間はいらなかった。

あとがき

過去の実体験の恥部を晒します……

アイデアが浮かばない日で、不名誉ながら晒すこと

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わからない香り~茜と陸~ (Twitter140文字小説)

わからない香り~茜と陸~ (Twitter140文字小説)

「いい匂いがする」と商店街で鼻をくんくんさせて陸くんが言う。

 食いしん坊の陸くんはまた美味しい匂いを嗅ぎつけたのだろうか。

 陸くんと感覚を共有したい私は一生懸命匂いを探す。

「陸くんどこ?」

「茜はわからないよ。俺だけの匂いだから」

 陸くんが何を言ってるか私にはわかんない。

あとがき

少々まとまりが悪くなった反省の作品ですが、敢えて修正せず恥を残します。(笑)

認識の差異 (Twitter140文字小説)

認識の差異 (Twitter140文字小説)

「想像するより辛いと思いますよ」

 でも私の想像と貴方の想像は違う。

 想像という言葉は同じ、けれどあるのは貴方との認識の差異。

 貴方の辛さは私の何倍?それとも何分の一?

 父に命を奪われかけたわたしを貴方は多分永久に理解できない。

 でもそれは私もそう、貴方を永久に理解はしない。

あとがき

仕事の紹介をしてくれた方の発言をヒントに書いた作品です。

定冠詞の「the」と不定冠詞の

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