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社会の中で話すのは向いてないんだろな
覚えた言葉だけでは自分のことを表現できない。
語彙力の乏しさに嫌になることがある。
友達と話す時は口が止まらないくらいに饒舌になるのに、
それ以外の場では、人が変わったように言葉が出ずに、気持ちの悪い間がその空間を支配する。
緊張とかそういうものではない。
単純に”大人としての”語彙力が足りないのだ。
向暑はるは今日も何度か言葉が詰まった。
言いたいことは頭の中では整理できているのに
パン屋とカフェは朝が早い
向暑はるは朝が弱い。
平日は社会の圧力に無理やり起こされてしまうけど、
何もなければ正直いつだって寝ていられる。
大学生の頃は、”朝に起こされる”ことなんてなかったから、目覚ましもかけなかったし、1限も取らなかった。
だからと言って寝るのが遅いわけでもなくて、日が回る前に寝たとしても結局朝は起きれないのである。
そんな人間も社会の圧力に慣れてしまったのか、休日の朝早くに目を覚ましてしまっ
何かが足りないと思える時間が一番幸せ
倦怠期に入ったカップルは口を揃えてこう言う。
片想いの時期が一番幸せだったと。
足りないものが満たされた時から、情熱や自尊心というのはどこかに置いてきてしまう。
付き合うことに情熱を注いでたあの頃の彼らはもういない。
ゴールをもっと先で考えてれば、今でも彼らは仲良く過ごしているのかもしれない。
ドーム規模の会場でライブができたあのミュージシャンは、
その頃から彼の書く新譜が暇潰しのよう
背中を押されても頑張れない
応援することを、背中を押すと言う。
でも向暑はるは背中を押されることは好きじゃない。
だって貧弱なこの身体が、みんなに背中なんて押されてしまったらコケてしまう。
それに、目の前の道が平坦とは言えない疎らな道だとしたら、背中を押されてもその勢いで逃げ出してしまう。
だったら、一緒に横に立って手を引っ張ってくれるような応援があったっていい。
手を引っ張ってくれるもの。
向暑はるにとってそれ
オールドレンズにまた恋をした
向暑はるは急いでいる。
2年も待たせたくせに急いでいる。
早く取りに来てと言われなければ、死ぬまで気づかずに過ごしていたかもしれない。
全く覚えていなかったのに、それが自分の物だと自覚した瞬間、急に愛が芽生えて会いたくなる。
待たせた相手が”人”じゃなくて良かったと思う。
2年前に修理に出していたカメラのレンズがそのまま放置されているらしい。
高校の時の後輩が働いているカメラ屋に、修理
住み慣れた部屋はもう誰かのものになっていた
とりあえず大学を車で一周した。
見た目も雰囲気も何も変わっていなかった。
でももうこの”中”に入ることはないだろうし、ここの住人ではないことの現実を突きつけられた気がした。
たった4年間。だけど4年間。
時間の隙間を埋めてくれる場所だったと改めて知る。
正門を通ったけど、そこは何も感じなかった。
向暑はるの家は正反対にあったから、正門を潜って大学に行くことは一度もなかった。
今考える
ただのドライブ、されどドライブ
コンビニの駐車場に「わ」と書かれたナンバープレートが見えたので、すぐにこれが彼の車だと分かった。
やっぱり今日はこの言葉に縁があるらしい。
同時にコンビニの目の前で一服している彼が見えたので、大きく手を振った。
よく考えれば、彼と二人きりで会うというのは初めてな気がした。
友達になったきっかけが特殊な故に。
大学3年生の時、バイトの友達と焼肉に行く約束をしていた。
だけど、その友達は別