性格悪く、頭良く
女子高生四人が電車に乗ってきた。
電車が発車するや否や、三人が教科書を広げて勉強を始める。
一人はスマホを構いながら音楽を聴いていた。
教科書担当の一人がこう言う。
頭がいい人はいいよね。勉強しなくてもいいもん。
ずる賢い人を性格が悪いと表現するなら、たぶん向暑はるは性格が悪い。
学校では授業中以外、勉強する姿を見せてこなかった。
だって勉強熱心って思われちゃうでしょ。
でも授業中に寝たことはないし、ノートも綺麗にとっていた。
そんなことはクラスメイトは寝ているから分からない。
テスト期間は、学校に”残れる”という時間を利用して、教室の黒板を使って落書きをしていた。
何度か怒られ、帰れと言われた。
そして家に帰ってひたすら勉強をした。
この誰にも見られていない時間で、どれだけ勉強をしているか知っているのは向暑はるだけである。
次の日、友人はこう言う。
昨日どんくらい勉強した?
うーん、ちょっとかな。
でも結果として、テストではそれなりにいい点数を取って、それなりにいい順位となる。
こうして、”頭がいい”というレッテルが貼られていく。
実際は頭がいいのでなくて、頭がいいように見せかけるためのずる賢さを持っていただけである。
これはヤンキーが人助けをしたときに、無駄に褒められるのと似ている。
できなそうなやつができると、無駄に評価も上がる。
悪い気持ちはしなかったので、向暑はるは学生の間はずっとそれを続けていた。
スマホ担当の子もたぶん同類だ。
スマホを持つ右手の端が真っ黒になっていた。
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