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【しらなみのかげ】「自然化」と「歴史化」の中で「人間」から/を問うこと―19世紀ドイツ思想哲学史概観 #36
18世紀後半のアメリカ独立革命、そしてイギリスの産業革命とフランス大革命に端を発した「近代」という時代は、一言で言えば、常に「人間」が問題となる時代であった。この時代においては、あらゆる問いが「人間とは何か」という問いと共に問われていた。「「人間」は波打ち際の砂の表情のように消滅するだろう」と『言葉と物』(1966)の末尾にミシェル・フーコー(1926-1984)は書いたが、絶えずその内容を問い続
もっとみる【しらなみのかげ】「絶対的なるもの」の帰趨とデカルトの神の存在証明 #34
0.近代における「宗教」の諸相
前回の記事では、「宗教」への問いは「近代」への問いである、という私の根本的な学問的関心の核心を書いてみた。その概略を改めて記せば以下のようになる。
−自明の範疇であるかのように思われる「宗教」という概念は、それと対置される「世俗」という概念と共に、ルネサンス、宗教改革、そして近代国家と政教分離の成立と共に近代において歴史的に構成された範疇であり、近代の人々
【しらなみのかげ】没落しようと何度でも #32
この雑記帳「しらなみのかげ」を書くのも、随分と久しぶりのことになる。
過去のアルバムを見返すように、自分のnoteアカウントを開いてみる。最後の更新は一昨年の夏だ。『シン・ウルトラマン』を「新しき神話」として読み解く文章である。2022年7月22日というその日付を見て、この後間も無く、当時世界を覆っていた新型コロナウイルスに罹患したことを思い出す。目立った症状としては、二、三日の間、高熱と激しい
【しらなみのかげ】国家の助成を得た理性の公的使用は国家社会の為にも資さねばならない #29
六月の長い間、何故だか全然文章が書けなかった。
その理由は、上旬から中旬に件の裁判関係のことにかかずらわされており、その余りの疲労で暫くは何も出来なかったことである。ありがたいことに多くの人の助けもあって結果的には良い方向に向かったが、一時は進退窮まったかとも思われた。資料集めから何から非常な疲れを要し、一旦全てが落ち着いてから丸一日寝込む日もあった。東京への旅程において友人に勧めてもらっ