雁琳の『晦暝手帖』

私、雁琳が徒然なる儘に日々の思いと思索を綴りました大小の論稿やエッセイ等を載せて参りま…

雁琳の『晦暝手帖』

私、雁琳が徒然なる儘に日々の思いと思索を綴りました大小の論稿やエッセイ等を載せて参ります。

マガジン

  • 『しらなみのかげ』

    こは、日々つらつらと念ひしことのとみに濫れてはすぎゆくに、浦によする沖つ白波の八重をりて、ささなみの下にあまたうたかたの浮かぶがごとく、そのかたちの成りては千々に消ゆるさまを、よろづことのはのうちにひたぶるに拾ひおきて、唯かき記さむとするものなり。つぎつぎ惟ひの流るる心の、ふとたまゆらに清く澄みわたりたる折こそ、生ふることのはの露、おのづからあしたには日影をあつめ、夜には月影をあつめ、かそけきものをもあまねくうつして、やがて花もさきにほひて、いとあはれなれば、うつせみの世の人のみならず、たふとき神すらものに感じておとづるる時なれ。

  • 『晦暝手帖』

    私、雁琳が徒然なるままに日々の思いと思索を綴りました小文雑文を載せて参ります。長めの書評や論考とは異なり、こちらでは気楽に読んで頂けるような、体裁を気にしない短いエッセイを載せて参ります。「晦暝」という語は暗くなること、或いは暗闇を意味します。この暗い世の中で一寸先も見えない闇の中に一条の光明を見つめられますよう、精一杯頑張りますので皆様方におかれましては何卒御購読の程宜しく御願い申し上げます。佐藤一斎曰く、一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うるなかれ。只一燈を頼め…(こちらは単体記事購入用です)

  • 『四顧溟濛評言録』

    私、雁琳が書を読み世事を鑑みる中で私かに惟うことを綴りました、中編から長編の文章を載せて参ります。「溟濛」とは薄暗く先の見えないことを指します。どこを見渡してみてもこの暗い世の中の中に一寸の光明を見付けられますよう、精一杯頑張りますので皆様方におかれましては何卒御購読の程宜しく御願い申し上げます。佐藤一斎曰く、一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うるなかれ。只一燈を頼め…

最近の記事

【しらなみのかげ】「自然化」と「歴史化」の中で「人間」から/を問うこと―19世紀ドイツ思想哲学史概観 #36

18世紀後半のアメリカ独立革命、そしてイギリスの産業革命とフランス大革命に端を発した「近代」という時代は、一言で言えば、常に「人間」が問題となる時代であった。この時代においては、あらゆる問いが「人間とは何か」という問いと共に問われていた。「「人間」は波打ち際の砂の表情のように消滅するだろう」と『言葉と物』(1966)の末尾にミシェル・フーコー(1926-1984)は書いたが、絶えずその内容を問い続けなければならなかった、抽象的で一般的な概念としての「人間」こそ、この「近代」と

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    • 【しらなみのかげ】エイプリルフールの翌日に #35

      昨日は一年で一回嘘を吐いても良いエイプリルフールであったが、結局、一日の殆どを勉強に費やしていたら、一つたりとも嘘を吐かずに一日を過ごしてしまった。何よりもまず、勉強は必ず自分の血肉になるので、決して自分に嘘を吐かないのである。 「「近代」の本質は「宗教」への問いである」という記事には、note上の「スキ」やX上でのポストにおいて沢山の反響を頂いており、誠に有難いことに投げ銭をなさって下さる方もいらっしゃる。真に冥利に尽きる。私の方が連続的に記事を生産出来る様に

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      • 【しらなみのかげ】「絶対的なるもの」の帰趨とデカルトの神の存在証明 #34

        0.近代における「宗教」の諸相 前回の記事では、「宗教」への問いは「近代」への問いである、という私の根本的な学問的関心の核心を書いてみた。その概略を改めて記せば以下のようになる。 −自明の範疇であるかのように思われる「宗教」という概念は、それと対置される「世俗」という概念と共に、ルネサンス、宗教改革、そして近代国家と政教分離の成立と共に近代において歴史的に構成された範疇であり、近代の人々はこの「宗教」という概念の本質を問い求めることによって「近代(modernity

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        • 【しらなみのかげ】近代の本質とは「宗教」への問いである #33

          初めに述べておきますが、この記事は考えている問題の核心に一通り触れながら書いている内に大部となりました。 この「しらなみのかげ」を桃の節句に久々に更新してから、又暫く時間が経った。 前回書いた如く、一昨年より我が抱負を一事業とせんとして走り続けてきた私の人生は、一月の末から二月の頭に掛けての間に共同事業者の一人、しかも立場上の責任者の背信行為に遭い、唐突なカタストロフを迎えた。奇しくもそれは、全てのリソースを使い果たした後のことであった。前回の記事

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        【しらなみのかげ】「自然化」と「歴史化」の中で「人間」…

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        • 『しらなみのかげ』
          37本
        • 『晦暝手帖』
          27本
        • 『四顧溟濛評言録』
          20本

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          【しらなみのかげ】没落しようと何度でも #32

          この雑記帳「しらなみのかげ」を書くのも、随分と久しぶりのことになる。 過去のアルバムを見返すように、自分のnoteアカウントを開いてみる。最後の更新は一昨年の夏だ。『シン・ウルトラマン』を「新しき神話」として読み解く文章である。2022年7月22日というその日付を見て、この後間も無く、当時世界を覆っていた新型コロナウイルスに罹患したことを思い出す。目立った症状としては、二、三日の間、高熱と激しい頭痛に苛まされ、その後一週間程激しい倦怠感に襲われた位で済んだのだが、最も辛かっ

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          【しらなみのかげ】没落しようと何度でも #32

          【しらなみのかげ】ウルトラマンという新しき「神話」 #31

          これは、書きさして放置していた稿を徐ろに思い出し、書き上げたものである。 文月になって三日のことである。母方の御墓参りに行って親族と食事をした後、遅ればせながら庵野秀明が手掛け、樋口真嗣が監督となった『シン・ウルトラマン』を観に行った。 『シン・ウルトラマン』。毀誉褒貶相半ばするこの作品であるが、結論から言えば私は或る面においてとても良いと感じた。その余りに軽妙な、時に軽薄にすら思えるタッチの裏腹、人間の原本的な「秩序」の在り方を巡る抗争という「神話」を社会問

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          【しらなみのかげ】ウルトラマンという新しき「神話」 #31

          【しらなみのかげ】「東南アジア」は雲と虎 #30

          今日はシンガポールの著名な映像作家であるホー・ツーニェン氏の講演をウェビナーで聴いた。京都芸術大学大学院と一般社団法人HAPSの主催である「GLOBAL ART TALK 033 ホー・ツーニェン氏「空白の時を位置づける (キュレーションの諸問題)」という講演会である。現地に行きたかったものの、京都芸術大学の関係者しか立ち入れないということで断念せざるを得なかった。 イベント概要には次のように記されていた。 「来る7月2日(土)14:00より、一般社団法人HA

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          【しらなみのかげ】国家の助成を得た理性の公的使用は国家社会の為にも資さねばならない #29

          六月の長い間、何故だか全然文章が書けなかった。 その理由は、上旬から中旬に件の裁判関係のことにかかずらわされており、その余りの疲労で暫くは何も出来なかったことである。ありがたいことに多くの人の助けもあって結果的には良い方向に向かったが、一時は進退窮まったかとも思われた。資料集めから何から非常な疲れを要し、一旦全てが落ち着いてから丸一日寝込む日もあった。東京への旅程において友人に勧めてもらった美味いカレーを食べに行き、帰りの京都駅でさえも回転寿司でのどぐろなりガス海老な

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          【しらなみのかげ】思想としての保守主義とは何か #28

          よく言われる話がある。 それは、保守主義には固有の理想や理念がない、ということである。 例えば、その対極である共産主義には、私有財産を廃止し、生産手段を社会化することで「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」社会を実現するという、これ以上無い程の明確な理想がある。それよりは広義に用いられる概念である社会主義も又、私有財産の廃止乃至は制限により多かれ少なかれ生産手段の社会的共有を実現するという理念に立脚している。それらと少し異なる思想であるアナキズムにも、国家や宗教の

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          【しらなみのかげ】誕生日あたりのことども #27

          毎日更新を始めると言いつつ、三日も更新をサボってしまった。 というのも、三日はかなりイレギュラーな日程を送っていたのである。 六月四日、僕は三十二歳の誕生日を迎え、ビストロとバーに行って親しい友人達に祝って頂いたのだが、その日は何と昼下がりから夕方に二、三時間しか寝ていなかった。というのも、その前日の夜からずっとTwitterのスペースにて、十五、六時間位、次々とやってくる人達と徹夜で喋り続けていたのである。我ながら殆ど気が狂っているとしか言い様が無い。喋り続けている

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          【しらなみのかげ】誕生日あたりのことども #27

          【しらなみのかげ】日本近代の正統としてのキリスト教 #26

          河上徹太郎の『日本のアウトサイダー』(中公文庫、1978)を読んだ。何でこの書をもっと前に読まなかったのか、と後悔させられた。蓋し、魂を震わせてくれた本物の名著である。この書の周囲を巡って、再び様々なことを考える機会があるだろう。そう思わせられた。 併し今や、河上徹太郎という名前を識っている人も少なくなってしまったのではないか。今では読まれたり参照されたりすることも少なくなってしまったが、河上徹太郎と言えば、旧制中学時代から友人であった小林秀雄と並んで日本に於ける近代

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          【しらなみのかげ】日本近代の正統としてのキリスト教 #26

          【しらなみのかげ】皆もすなる日記といふものも、私もしてみむとてするなり #25

          今日は六月の一日である。更新するのは日付が変わって二日になるが、その様な厳密な時刻に関係無く、私は眠りに就いて起きた時に初めて日付が変わるという認識で生きている。大凡は、朝になり太陽が完全に上ってしまう時刻位まではその日の内であると見ている。抑も零時よりも前に寝ることなど千に一つ程で、後は勉強に勤しんだり一人酒を飲んだり酒場で歓談していたりするのだから、こうした認識の方が生活に合っている。だから、今はまだ六月一日である。 「毎日書く」と宣言していたこの「しらなみのかげ

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          【しらなみのかげ】鋼鉄の嵐の起こる前で−世界の「19世紀化」について #24

          全ては蛮行により塗り替えられた−この日より、世界秩序の全てが変わった。 2月24日、ロシアは突如、ウクライナに侵攻した。 ロシアが、ウクライナ東部にある親露派分離独立派のドネツク人民共和国ならびにルガンスク人民共和国の独立を21日に「承認」してから間も無い出来事であった。 両共和国共に、2014年にロシアがクリミアを一方的に併合した折に、ドンバス地方の武装勢力が一方的に独立を宣言したものである。東部の紛争は2015年のミンスク合意により、武力による正面衝突は

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          【しらなみのかげ】 頭でっかちな「世間知らず」達の暴走 #23

          いつの日からか、私はジャパニーズ・ヒップホップが大好きになった。特に、ギャングスター・ラップが大好きになった。 元々音楽好きで、あらゆるジャンルを摘み食いしながら聴いてきたつもりだが、このジャンルが取り分け好きになっていった時期があった。 昼は大学で授業を受けたり研究に勤しんだりし、週の内二、三日は夜の街で働いて日銭を稼ぐ生活を長く続けていた最後の頃だったと思う。大学の籍が無くなって奨学金を借りられなくなった三、四年前から、前者が見る見る内に出来なくなり、後者

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          【しらなみのかげ】 北京2022年五輪開会式を観て #22

          (これは二日前の2月4日に書き掛けたものに加筆・推敲を加えたものです。) 今日は立春であり、冬季北京オリンピックの開会式の日である。 実の所、開会式より二日前から幾つかの競技は予選が始まっている。男子フィギュアスケートの宇野昌磨選手が団体予選で自己ベストを更新したという速報を目にしたのは、つい昼頃のことであり、その時既に五輪が始まっていることに気付かされた。 昨年の東京オリンピック・パラリンピックは、インターネットでNHKが無料で多くの競技を配信してくれたこ

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          【しらなみのかげ】 北京2022年五輪開会式を観て #22

          【しらなみのかげ】 節分−円環的な時を分節すること #21

          (この記事は2月3日に執筆したものですが、仕事の都合で一昨日出せず、昨日から今日に掛けて推敲・加筆したものです) 今日は節分である。 私の住む京都では、吉田神社、壬生寺、そして八坂神社などで節分祭が行われる。今年は新型コロナウイルスのオミクロン株が大流行を見せている為に、今年は多くの寺社では節分祭を相当に制限して行っているようである。追儺の祭が、まさに疫病によって阻まれるというのは不幸な話である。 例年は大体、節分の当日夜、吉田神社の節分祭に行き、火炉祭を見

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          【しらなみのかげ】 節分−円環的な時を分節すること #21