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「歴史家達の闘い」についての雑感
最近、主に歴史学周辺で「知識がない人の自由な発想」の問題が大きな論議を引き起こしているようである。一躍ベストセラーとなった『応仁の乱』(中公新書、2016年)をはじめ、多くの専門的な啓蒙書を上梓している気鋭の日本中世史研究者の呉座勇一氏(国際日本文化研究センター助教)は、百田尚樹氏や井沢元彦氏、或いは久野潤氏や八幡和郎氏といった、歴史学者ではないが歴史についての通俗書を執筆している著述家達と日夜
もっとみる差別の根本原理としての「種」についての省察−病の齎す災厄の下で
昨今の新型コロナ騒動において、人々の罹患や病死、或いは疫病とそれに対する各種の対策によって引き起こされる経済への大打撃といったその直接的な被害とは別に、人心を惑乱させる出来事が幾つか起こっている。例えば、国境や都市のロックダウンなどの強権的な方策、そして新型コロナウイルスに対する恐怖心からそれを求める民情によって、人々の自由を制限する国家権力がそのまま際限無く肥大化する可能性があることが、主にリ
もっとみる「グローバリズムの隠喩」としての新型コロナウィルスの世界史的意味−「市民的公共」の黙示録
今、新型コロナウイルス(COVID-19)が全世界を恐怖のどん底に陥れている。
昨年十二月に中国の武漢において発生したこのウイルスは、数ヶ月の内に瞬く間に全世界へと拡散していき、各国では大混乱が巻き起こっている。何れの国においても、マスクは言うまでもなくトイレットペーパーなどの生活必需品や食料品などが買い占められ、遊園地など人の集まる大規模な施設が閉鎖され、更にコンサートから学会まで諸々のイ
「女の、女による、女のための意見表明」が「選ばれなかった男達」を圧殺する−作家アルテイシア女史の婚活コラムを読んで
令和2年2月6日、『現代ビジネス』にて、「「結婚できない女」と「結婚できない男」、その決定的な違いについて そこから見えるジェンダーギャップ」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70208)という文章が公開された。著者は「アルテイシア」と名乗る文筆家であり、『現代ビジネス』のプロフィールには「1976年、神戸生まれ。大学卒業後、広告会社に勤務。夫であるオタ
もっとみる「ジェンダー」は何故「セックス」へと舞い戻るのか−猥語と身体
中央アジア、トルクメニスタンはアハル州にあるダルヴァザという村には、「地獄の門」というクレーターがある。1971年に地質学者がボーリング調査をした際、偶然にも天然ガスに満ちた空洞にぶち当たってしまい、採掘現場諸共奈落の底に落ちる落盤事故が起き、直径50mから100mに至る巨大な穴が空いてしまった。有毒ガスの流出を防ぐために火を灯すことになったが、地下から滔々と溢れ出る可燃性ガスのために以来
催眠術と〈メタコミュニケーション〉の時代
いつの事だっただろうか、飲み屋か何かで催眠術師にたまたまお会いしたことがある。催眠術を修得しているという人物に会うのは初めてだったので、色々と興味深く話を聞いたものである。彼は、とある別の人の私的なセミナーのような会合に出て、催眠術の技法を授けてもらったのだと言う。催眠術というのはそうやって秘かに伝承されているものなのかなどと感慨を抱いたものである。
そうして話が盛り上がる内に、実演してみよう
〈翻訳〉ニック・ランド「暗黒啓蒙」第二部
〈本記事は、ニック・ランド(Nick Land, 1962~)の評論「暗黒啓蒙(dark enlightenment)」(出典:http://www.thedarkenlightenment.com/the-dark-enlightenment-by-nick-land/)(2012年)第二部の翻訳である(第一部はこちら)。ニック・ランドは、昨今千葉雅也氏、仲山ひふみ氏、そして木澤佐登志氏によって
もっとみる〈翻訳〉ニック・ランド「暗黒啓蒙」第一部
〈本記事は、ニック・ランド(Nick Land, 1962~)の評論「暗黒啓蒙(dark enlightenment)」(出典:http://www.thedarkenlightenment.com/the-dark-enlightenment-by-nick-land/)(2012年)第一部の翻訳である。ニック・ランドは、昨今千葉雅也氏、仲山ひふみ氏、そして木澤佐登志氏によって紹介されている加速
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