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#小説

部屋の奥から、ピアノの音が聞こえてくる。 [ショートショート]

部屋の奥から、ピアノの音が聞こえてくる。 [ショートショート]

部屋の奥から、ピアノの音が聞こえてくる。音色は確かに美しいが、響くたびに頭の中で警報が鳴る。あのピアノに触れているのは、私の義母だ。彼女の演奏には、私への苛立ちがこもっているように感じるが、それを口にすることはない。ただ黙ってその響きを聞くしかないのだ。

この家に嫁いできて、もう五年になる。その間、夫の母である義母は、私をほとんど無視し続けている。朝も昼も夜も、話しかけてくることはなく、ただ部屋

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流れ星の向こう 12話

流れ星の向こう 12話

 レポルトは下を向いていたが、やがて、決心をしたように、リナの顔を見た。
「行こう。マザーの娘を探しに。そして、広い世界を見に」
 その言葉を聞いたリナは嬉しそうに微笑んだ。

 二人はロープをつたい、部屋を出た。
 身を潜めながら、ある場所に向かった。子供の頃に見つけた秘密の抜け道に。外の世界を怖がっていた頃の彼女たちはもういない。いるのは、未知の世界に心を躍らせる少年と少女だけだった。
 二人

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夜漁る

夜漁る

配線が途絶えた夏の夜を漁る。
この人生に相応しい真新しいご褒美がほしい。
脇目をふらして石ころを蹴った。
あぁ、炭酸飲みたいな。
はじけたい時期はもう過ぎたはずなのに。

この道のずっと向こうを行く。
ミクロな僕。バッドなグラウンド。
なんで前に出たがる。
もう22だぜ。

/* どうも、元気です。今でも。
嫌なことには蓋をして。 
おやすみしてまたおはようの記事を読んでどうしようもないです。 

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【ショートショート】締め出し

【ショートショート】締め出し

 玄関の鍵を開けようとして気がついた。
 ショルダーバッグに取り付けたキーホルダーにキーがない。
 落としたか、貸してと言われて妻か息子に貸したか、どちらかだ。
 妻は母の体調が悪く、実家に泊まると言っていた。
 息子にメッセージを送ってみた。
「帰りは遅くなる」
 こいつもダメか。
「複製の木、試してみたら?」
 お、その手があったか。私は後ろを振り向いた。金木犀の横にキーホルダーの木が生えてい

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星は風にそよぐ(第10回)

星は風にそよぐ(第10回)

6月6日

 クレアは近頃、お昼休みにも音楽室で練習していると聞いたので、私は邪魔しないようにそっと聴きに行ってみました。静かにドアを閉めて、一番後ろの席についた途端、クレアが気づいて
「わ!セシル先生。うれしい。聴きに来てくれたんだ。オーディエンスがいると、俄然やる気が湧いてくるの」
と満面の笑顔で言いました。
 音楽家というと、私は静かで落ち着いた人のイメージを勝手に持っていましたが、クレアは

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【嘘ドキュメンタリー】社長・五木武利

【嘘ドキュメンタリー】社長・五木武利

プロローグ
私は五木武利(いつきたけとし)、50歳。
ついに自分の会社を立ち上げることに成功し社長となった。社員は今のところ私と城有君の二人しかいないが、これから拡大していく予定だ。
私は今まで実に数々の苦難を経験し、乗り越えてきた。何度も泣き、のし上がってきた。雨に打たれ、風に吹かれ、雷に打たれ、ゴミ箱にぶち込まれてきた。スピード違反で警察に捕まったこともあった(それはお前が悪いだろ)。実に波乱

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妄想百人一首(22)

妄想百人一首(22)

「迷子」

 狭く入り組んだ路地。四角く閉じられた空。右を見ても左を見ても家、家、家。スマホが示す現在地は、井の頭池のど真ん中。
 ボート漕いでんじゃねぇええ。
 落ち着け、落ち着くんだ、万が一のために余裕を持って出発している。実際、約束の時間まではあと三十分ある。地図を見ながら来ているんだし、そう遠く無いはずだ。表札を一つずつ見て回ればきっと辿り着く。大丈夫大丈夫。

 広くておしゃれな建物が軒

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問答歌 考察12 日々の生活

問答歌 考察12 日々の生活

今日も今日とて試行錯誤、

またまた頭脳が働いて、思案 思考 試行する、

日々の生活を繰り返し、小さい小さい生活で、離れることもできもせず、

人間関係も希薄になり、心の交流ができなくて、

生活空間 日常生活、いたわり ねぎらい 思いやり、そんな言葉も消えている、

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大人の仕事

大人の仕事

学校の先生って、夢を応援してくれるもの。全力でサポートしてくれるもの。

だけど、私は先生に気に入られるタイプじゃない。

数いる生徒のうちの一人として面倒を見てもらえている。

今までそう思っていた。

そんな悲しいことを考えてた。

だけど、大学受験で出会った一人の先生で、人生が変わった。

先生は、誰にも賛同してもらえなかった私の夢に共感してくれて、尽力してくれた。尽力という言葉では足りない

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第17話「薬指の想い」

第17話「薬指の想い」

「草餅さんはハマらなかったのね。プレーした後が無いしね。八ツ橋ちゃんの思い通りに行かなかったかな?」と部屋の様子を見て橋爪汐梨が言った。

「汐梨さん、草餅さんに全て話しました。私がジュリエットと会って、自分を見失い欲に生きたことを・・・・・・」と罰の悪そうな顔をして八ツ橋甘味が告げた。

「そうなの。それはクレイジーな展開ね。それって面白くなったんじゃない。ねえ、そうでしょう。だったら話は早いわ

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花嫁さん

花嫁さん

 緑色の池に、カモが連れ立って浮いている。意外と素早くて、時折、ちゃぷんと潜っては1メートルくらい先から顔を出したりする。よく見るといろんな色をしていて、茶色というだけじゃない、例えば黒っぽい体に金色の顔だったりと、個性がある。

 わたしはそれをぼんやりと眺めている。硬いベンチで足を組んで、ついでに腕も組んでいる。ふと思い立って、ベルギーワッフルの包まれていた紙を丁寧にたたむ。小さく小さくしてか

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